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切断の設計#4|業務の「看取り」論。過去への敬意が執着を解かす

ロジックが正しくても、人は動かないことがあります。
特に「何かをやめる」時には、理屈を超えた「感情のしこり」が最後の壁として立ちはだかります。

「あの会議は、あの人が部長だった時代に肝入りで始めたものだから……」
「この手作業の集計は、私が苦労して作り上げたものだから……」

業務には、関わってきた人々の歴史やプライド、すなわち「熱」が宿っています。
どんなに非効率な業務であっても、そこには誰かの「正義」や「努力」があったのです。
効率が悪いからといって、それを無碍(むげ)に扱うことは、その人たちの生きてきた時間を否定することと同義です。

だからこそ、業務設計者には「看取り(みとり)」の作法が求められます。


「ありがとう」で幕を引く

必要なのは、解散式や完了報告会といった「区切りの儀式」です。
大げさなものである必要はありません。

例えば、廃止する会議の最後に、5分だけ時間を取る。
「この会議のおかげで、プロジェクトの初期段階を乗り越えることができました。役割を果たしてくれてありがとう」
そう言って、参加者全員で過去の功績を認め合い、拍手で締める。

あるいは、使わなくなる共有フォルダをアーカイブする前に、「2020-2025 プロジェクト完了」と名前を変え、関係者に感謝のメールを送る。

この「供養」のプロセスがあるだけで、人々の執着は驚くほど解けていきます。
「否定されて消える」のではなく、「役割を全うして引退する」という物語に書き換えるのです。

過去を肯定することで、未来へ進める

「看取り」とは、単なる感傷ではありません。
過去の熱量を、冷たく冷やすのではなく、「成仏」させて次の熱源へと変換する、高度な熱伝導の設計です。

人は、自分の過去が尊重されたと感じた時、初めて安心し、新しい未来へと顔を向けることができます。
業務設計者は、新しい仕組みを作る建築家であると同時に、去りゆく仕組みに花を手向ける葬儀屋でもあっていい。
そうやって丁寧に閉じられた業務は、悪い亡霊(ゾンビ)にはならず、組織の良き歴史(アーカイブ)として、静かに眠りにつくのです。

さて、ここまで「やめる」ことについて考えてきました。
最終回は、そもそも「最初から終わることを想定して作る」という、循環の設計論についてお話しします。

(業務設計者としての問い)
その業務が役目を終えるとき、最後に「ありがとう」と言ってくれる人は誰ですか?

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