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ミゲル・デ・セルバンテス「ドン・キホーテ」

「ドン・キホーテ」は、1600年代初頭にスペインで発表された古典的名作で、前後編合計6冊からなります。
そのように聞くと思わず身構えてしまいますが(実際に私もそうでした)、その必要は全くありません。
なぜなら、本作は、ギャグに次ぐギャグが繰り広げられる、徹頭徹尾エンタメに振り切った作品なのですから。

中性ヨーロッパには、騎士道物語というジャンルがありました。
遍歴の騎士が悪を退治し、貴婦人とのロマンスを芽生えさせる、というのが典型的な物語です。
「ドン・キホーテ」は、この騎士道物語を徹底的にパロディ化し、笑いに昇華させた作品です。

「遍歴の騎士には思い姫がいなければならない」。
騎士道物語のお約束に基づき、ドン・キホーテにもドゥルシネーアという思い姫がいます。
もっとも、この思い姫は、実は本編に一度も登場しません。
そのことが、「思い姫への思慕」の滑稽さを際立たせているのです。
騎士道物語における様式美を、何と巧みに笑いに昇華していることでしょうか。

「遍歴の騎士には従者が付き従わなければならない」。
このお約束に基づき、ドン・キホーテは従者サンチョ・パンサと二人で旅をします。
「ドン・キホーテ」の魅力の一つは、この二人のキャラが立っている点にあります。
騎士道精神に取り憑かれた狂人ドン・キホーテと、現実的なサンチョ・パンサ。
ボケとツッコミのような設定に加えて、のっぽと太っちょというビジュアル面でも好対照をなしています。
ちなみに、のっぽと太っちょのコンビは様々な作品に出てきますが(ブルース・ブラザーズ、ボヤッキーとトンズラー等)、この二人がそのプロトタイプなのでしょうか。

「ドン・キホーテ」後編は、前編がベストセラーとなり、ドン・キホーテも有名人になっている、という設定になっています。
実際に当時のスペインでは、「ドン・キホーテ」前編がベストセラーとなり、続編を名乗る贋作までが出回っていたそうです。
「ドン・キホーテ」は、そうした社会情勢を物語内に取り込んでいる点などから、メタフィクションの元祖と評されることもあります。

もっとも、メタフィクション構造そのものが重要な訳ではありません。
現実の社会情勢をも作品内に取り込み、笑いに昇華したこと。
笑いを表現する手段として効果的に活用したことこそが、重要なのだと思います。

「ドン・キホーテ」は、抱腹絶倒のエンタメ作品です。
古めかしく重厚な作品と誤解し、読むのを躊躇しているのであれば、実に勿体ないことです。
現代におけるギャグ漫画のように、大いに笑いながら読み進めれば良いのだと思います。

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