40代半ばの商業漫画家志望(たぶん理系)が、苦手な感情表現やセリフの紡ぎ方の”見える化”を試みた件

こんにちは。40代半ばで商業連載を目指すオッサンです。
 
以前、複数の編集者から「セリフがダメ」と指摘があり、「感情が描けていない」を含めて徹底研究した時期があります。というか現在進行形です。

理論で考える私が描くネームは、全体的な構成はまとまってるっぽいのですが、人の気持ちを考えないフシがあり、感情表現とその産物であるセリフが苦手です。
 
そんな人間なので、よく言われる「小説を読め、映画を見ろ。そして感じ取れ」みたいな根性論では上手くいくはずもなく、別の形で「感情とセリフを描く」手法を開発できないか試みた、というのが今回の趣旨です。
 
ある程度の答えを見いだせたとは思うものの、研究は継続中であり、スペックの小さい脳みその棚卸として途中経過を記事にまとめた程度です。
なのでこれが正しいとか、間違いとかいう性質の内容ではありません。

右脳と左脳。脳みその作りの解釈と理解

 脳科学を暑かったテレビ番組やラジオの人生相談などから導き出した私なりの考えですが、右脳、左脳のどちらかの働きの強さで
 
「理論優先の人・図形で理解型(だいたい理系)」
「感情優先の人・気持ちや文章で理解型(だいたい文系)」

 
に別れているっぽいです。
 
とはいえ理論派の理系という自認のある私も、にっちもさっちもいかなくなったら感情を爆発させますから、すべて理論で制御できているわけではありません。
私の場合は8:2くらいで理論優先という感じです。

余談ですが、「五分だ五分だと言うけれど、7:3くらいがちょうどいい。センターマン!」を思い出しました。コントですけど名言だと思います。

人格をもったキャラクターを基本一人で描く場合、図化したりストーリー化する理論と、キャラクターの感情という両方の脳みそを持たないといけません。

だから私は感情的、文学的で心のある人格を得たいのですが、この年齢になって脳や心を入れ替えるのも難しいという諦めもあるので、「理論優先の人・図形で理解型」なりに何かできないかと考えたのです。
 
ちなみに、「理論優先の人・図形で理解型(だいたい理系)」「感情優先の人・気持ちや文章で理解型(だいたい文系)」はキャラクター構造や配置にも見る事ができます。

20年以上続く刑事ドラマ「相棒」を例にします。

 「相棒」は文字通り主役2名のバディ物ですが、メインキャラはハイスペック脳みそを持つ「理論優先」の杉下右京警部です。

右京さんは感情面が欠落し変人に見えるので、単体では共感しづらい。
なのでの熱血刑事(感情優先の人)の亀山君を相棒に置くことで、わかりやすさや共感性を確保しています。

とはいえ、右京さんに感情がないわけではなく、ここぞという時に感情を爆発させるから人となりや説得力が発揮されます。終盤の「プルプル」や犯人を諭すシーンですね。

最近アニメ化・ドラマ化された「天久鷹央の推理カルテ」も、相棒と同様な人物配置です(このことを描いたら著者の知念先生にリポストされ歓喜)。

このようなキャラクター構造の分析は良いトレーニングになりますよ。

「キャラクター」と「ストーリー」はどちらが優先か問題。やはりキャラクターが優先か。

 
セリフがダメという以前に「キャラクターが描けていない」という指摘がありました。
これは、多くの漫画家志望がつまづくことのようです。

最初からキャラクターが描けている漫画家志望もいるらしいのですが、この場合は逆にストーリーが意味不明な傾向(構成ができていない)があるようです。
そして稀に両方できる天才がいるらしいです。
 
このような現象も脳の作りに起因する現象と私は考えていますので、自分の脳の癖を知ることで弱点を解決していきますか、先に漫画界隈で議論される「キャラクターが優先するか、ストーリーが優先するか」問題を検討してみたいと思います。
 
これについては書籍によってまちまちで、『「好き」を育てるマンガ術』のようにどちらも大事と解説している本もあれば、「10倍面白くなる漫画演出論」のように、キャラクターが優先するとしている本もあります。

 「読者ハ読ムナ(笑)」では、見出して「キャラとストーリーは行ったり来たりしながら作りな」とあるけれど、よく読むとキャラクター先行とされています。

また、担当編集氏曰く
 
少年漫画:キャラクター>企画>テーマ>ストーリー
青年漫画:テーマ>企画>キャラクター>ストーリー
ストーリー=キャラクターの足跡

 
とのこと。わかりやすい。
 
少年漫画と青年漫画の違いについては先にリンクした敏腕編集者ムラマツさんが動画で同じことをおっしゃっていたので、元ネタはムラマツさんかもしれません。
ムラマツさんのnoteは、本気で漫画を描く人は必見ですね。有料記事も有益でした。

 
どちらの考え方も「なるほど」と思わせるものなので、誰の理論が正しいという判断はできませんでした。

とはいえ複数の書籍や記事でキャラクター優先とされているので、平均値をとって「やはりキャラクターはストーリーに優先する」と私は理解しました(笑)

・創作論の本を読めるだけ読んでみた

とりあえず理系のオッサンは「キャラクター」を知るために、創作関連の書籍を読みまくりました。
 
創作論の本はほぼ2千円以上…それでも得られるものが数%あればいいかなという程度で、得られない事もあるガチャ的な投資です。
 
キャラクター作りに特化した書籍としては、小説やアニメ原作などを手掛けている榊一郎先生がネット通販されている「キャラクター創造論/キャラクターのレシピ!」や、脚本術の本を複数出版されているロバート・マッキー氏の「キャラクター」という本が印象に残っています。

印象が残っているといっても、なんとなく理解できたような、ほぼ理解できていないような…
それぞれ3周くらいしているものの、やっぱギブアップ(大汗)
 
人の内面(感情)を扱う内容なので、理論的に見えてどこか文学的というか哲学的なんですね。文系の脳の人には理解できるけど、理系に偏った脳の人が理解するには、ちょっと(かなり)しんどい。

しんどいけど、何周かして理解を進めたり、メモを取って整理する。
わかったようで、やっぱわかんない(ガンダムジークアクスのマチュっぽく叫んでみる…)。

そんな事しても解決策のないループに…

こんな感じで色々読みあさって、ようやく「これだ」と思える書籍に出会います。

難解本「ダイアローグ」の構成要素をマッピングしたところ

そんな感じで読解力のなさに凹みつづけたある日のこと。
セリフについて解説した「ダイアローグ」という本がある事を知りました。

ダイアローグ=セリフのことなのですが(わかりにくいw)、表紙をみてピンときたのは、あの難解そのものの「キャラクター」の著者、ロバート・マッキー氏の本です。

「あの難解本の人かぁ…」と若干躊躇したものの、藁にもすがりたい気持ちだったので、再び3千円ほど身銭を切りました。分厚いです。
やはり難解でした…が、ここでひらめきます。
 
「本を読み進めながら重要なワードを抜き取って、図表にマッピングしよう。」
最近ちょっとだけAdobe illustrator(イラレ)を覚えたので、これも活用して図表にまとめる事を考えたのです。

図表整理したら、こんな感じになりました。ネタバレになるとよくないので、重要部分のみマッピングを公開しています。

すると、この本はごく初期段階で「テクスト」「サブテクスト」の概念を見落とすと、以降、全く意味がわからなくなる構造であることに気付きました。
また、読解力のなさは、順を追って読むことができない(無意識な読み飛ばしが多い)のかもしれないと思いました。
 
 
ちなみに「テクスト」「サブテクスト」とは
 
テクスト:言うこと(セリフ)
サブテクスト:言わないこと(理解できている)」と「言えないこと(理解していない深層心理)」
 
です。
最初らへんに太字でかかれてます。

また、サブテクストの内側には人間が抱える「欲求」があります。
 
私が欲しかった情報が見える化され、”しっくり”を感じました。
これがわかると、あら不思議。
理解が進むようになりました。
 
①人には何かしらの欲求があり
②自分では理解できていない深層心理があり
③言うことと言わないこと、言葉の紡ぎ方を脳内で判断し
④セリフとして発言する(+しぐさやリアクション)

 
という構造が理解できるんですね。「ダイアローグ」ではもう少し詳しく書いてますが。

また、「キャラクター」は「ダイアローグ」を読んでからのほうが、(ちょっとだけ)理解が進む事もわかりました。

こんなわけで私なりに「ダイアローグ」から得た「セリフとは何ぞや」を端的にまとめると…
 
「欲求や深層心理」▶▶▶「本音」▶▶▶「建前(セリフ)」
 
セリフは建前が口から出たもの、と考えることができます。

深掘りしたい方は「ダイアローグ」、難しけどお勧めです。

「サブテクスト」「深層心理」をもう少し深掘り

ちなみに「ダイアローグ」によると、SFやファンタジー(日本のバトル漫画などを含むと解釈)など非リアリティジャンルでは、サブテクストが少なくなることがあるそうです。
たしかに、悟空やルフィが本音と建前を使い分けてたら嫌ですもんね(笑)
 
とはいえ「サブテクストがない」が全くないわけではなく、ここぞという時にテクストとサブテクストの不一致がある印象です。
人間みを見せる青年漫画とかはその逆で、テクストとサブテクストの不一致がつづいて、いい場面で一致する。これは後ほど紹介します。
 
また、サブテクストがないと役者は演技ができないとされています。
わかりやすいサブテクストの解釈が”役者のアドリブ”ですし、台本どおりとしても表情とかしぐさなど、俳優の解釈で演じれる余白ということなのかもしれません。
 
深層心理についても少し補足を。
ある日のこと「泉ピン子や北島三郎に混じって徹子の部屋に出演」という変な夢を見ました。
なぜ自分はこんな所にいるのだろうと…緊張感はあるけど楽しい夢でした。
 
友人からは「有名になりたい願望の現われ」と言われ、たしかにそう言われれば…漫画が大ヒットすれば有名人になる可能性が高いですからね。
「本人は意識していないが、潜在的に意識している深層心理」は、人格者たるキャラクターにも設定すべき、ということなのかもしれませんね。

「欲求や深層心理」▶▶▶「本音」▶▶▶「建前」を見える化する。

課題である「セリフ」の構造を見える化する方法を検討したところ、とてもシンプルな方法に落ち着きました。
 
見える化の過程は2つあります。

①キャラ表に欲求を書き出す

多くの漫画家さん(志望者含む)が「キャラ表」を作成していると思いますが、キャラ表にキャラクター自体が持つ欲求を書き出し、見える化しておきます。
 
欲求はキャラクターの行動原理を決める要素です。
 
キャラクター自体が理解している欲求もあれば、理解していない欲求もある。何かのふしに思い出す欲求であったり、認めたくない欲求でも構いません。
複数あってもいいですが、優先順位を決めておきます。
 
欲求と欲求に矛盾があっても構いません。
むしろ矛盾(または葛藤)があることで人間みが増すようです。
たとえば悟空は優しい人物であり「地球のみんなを守りてぇ」は多くの人に共感できます。一方で「オラ強い奴と戦いてぇ」はなかなか暴力的ですよね(笑)こうした矛盾が人間味なのだと思うのですね。
 
また、最大の欲求は「命に関わる」ものであるとなおよいとされています。
「命に関わる欲求」については創作論でかなり読まれている「SAVE THE CATの法則」でも、「原始人にもわかる原始的な」として力説されています。

 
欲求と言えば、ネガティブな印象のある「承認欲求」を思い出します。
誰にでも発信できるSNS時代になりよりネガティブな印象を受けますが、本来は、群れを作り協力し合って生活する(コミュニケーションで生きる)人間にとって、生命に関わる重要な欲求だったはずです。
だから承認欲求は思いのほか強い。
 
承認欲求を上手く使ったヒット作に「ぼっち・ざ・ろっく!」があります。
主人公の”ぼっちちゃん”こと後藤ひとりは、極度の対人恐怖症でライブもまともにできませんが、ギターヒーローというアカウント名で動画を配信する凄腕の「承認欲求モンスター」です。
現代人が抱えがちな「対人恐怖症」と、今はネガティブにとらえがちですが、生きるうえで必要な「承認欲求」という矛盾が時代にマッチしヒットしたのではないかと私は解釈しています。

②ネームに”サブテクストタグ”を付けて整理する

サブテクストは「言わない事」「言えない事」であり「本音と深層心理」であり、原稿に直接現れるものではありません。
頭の中で整理できればいいのですが、頭の中で整理できないから困っていたわけです。

なのでネーム等に直接書き込む。
「サブテクストタグ」を作るのです。

描きかけの原稿とサブテクストタグ。赤は矛盾や葛藤

このタグを付けることで、「このキャラはこの状況でこう思っているし、行動原理たる深層心理や欲求はこうだから、こういうセリフを紡ぎ出すのではないか」「こういうリアクションをしそう」が見える化できます。
 
また、サブテクストタグを設定することで、キャラクターの表情や構図も検討しやすくなります。
(表情を描くことが、めちゃくちゃ難しいんですけどね…真ん中の子の表情、再検討したい。)
 
また、セリフ(テクスト)とタグ(サブテクスト)の間でキャッチボールができているかをチェックすることで、会話の不自然さを見抜くこともできるかもしれません(構造がに解明できていません)。
 
ちなみに、サブテクストタグを整理しているとセリフ(テクスト)とサブテクストが一致し、タグ打ちしようがない箇所がたびたび出てきます。
「悟空やルフィに本音と建前があったら嫌」で触れましたが、おそらくこのようなコマは「なんとなく心地いい瞬間」になるっぽい感触です。
 
なので、感情を描かないといけない青年漫画とか少女漫画では、テクストとサブテクストの不一致がしばらく続いてから、大事なシーンで「セリフ(テクスト)」とサブテクストが一致するようにネームを整理すると良いかもしれませんね。

こんなわけで色々紹介しましたが、40代で商業連載を目指すおっさんの頭の整理用で作ったもので、これが正しいとかこうすべきという類の記事ではありません。何かご参考になればと思い公開しています。

いいなと思ったら応援しよう!