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「提案はしているのに動かない」はなぜ起きるのか。CSMが意識したい顧客組織の見方

こんにちは。 株式会社movのカスタマーサクセスで責任者をしている嶋津です。

「CS提案をしても動いてもらえない」という状況について、最近あらためて考えていることを書いてみようと思います。

きっかけは、事業会社出身のメンバーとの会話でした

少し前に、事業会社でマーケティングを経験してからCSに転職してきたメンバーと話す機会がありました。

CSMは相手に動いてもらう仕事。
提案が通りにくい場面は多々あります。そんな中、「なんでこんなに動いてもらいにくいんだろう」という話をしていたのですが、彼が一言こう言ったんです。「事業会社って、担当者が動けない仕組みになっているんですよ」と。

それを聞いて、「そうか、仕組みの話なのか」とすごく腹落ちしました。私にとってこの部分はだいぶブラックボックスだったなと思いました。構造の問題に目を向けると、CS活動の設計で見直せる部分がありました。

担当者の頭の中は、すでに満杯かもしれない

CSMが提案をしたとき、担当者に「刺さっているかどうか」を気にしがちです。でも最近は、「そもそも日々忙しい人の頭に入る余白があるかどうか」のほうが先だと思うようになりました。

事業会社の担当者の日々はこんな感じ。

・自分たちのルーティン業務
・上長からの急な依頼
・現場からのエスカレーション
・期限が決まっているタスク

これらで毎日頭の中がほぼ占有されています。「今週ちょっと忙しくて」という言葉は、構造的な事実の説明なんですよね。

CSMはクライアントに対して「ツールの提供者」として関わっているわけですが、担当者の頭の中での優先度でいうと、SaaSのCS担当者からの連絡は、上長指示や締め切り業務よりも後回しになりやすい。これは相性や関係性の問題ではなく、組織の構造上そうなりやすいということだと思います。

だとすると、CSMがやるべきことは「いい提案をする」よりも「担当者の脳内シェアに入り込む工夫をする」という方向に変わってきます。まだ試行錯誤中ですが、このフレームで考えると取り組みの方向性が変わってくる気がしています。

もう一つの壁:上申コスト

担当者が「やろうと思っている」状態でも、動けないケースがあります。それが「上申コスト」です。

自分の担当領域で予算を使ったり、社内で動きを起こしたりするためには、上長に説明して承認をもらう必要があります。この「説明する手間」「承認が降りなかったときのリスク」「ROIをどう伝えるかの難しさ」——これが積み重なると、担当者は「今動くよりも現状維持のほうがラクだ」という判断をしがちです。

担当者が動きたくない訳ではないんです。動くためのコストが高い状態になっているだけ。

CSMの役割として、このコストを下げる素材を渡せるかどうかが、提案の成否を大きく分けると感じています。「言ったことを相手がやってくれるかどうか」という発想から、「相手が動きやすい状態を一緒に作れるかどうか」という発想へ。この転換が必要なんだと最近は考えています。

決裁者が動くのは、「競合に遅れている」という文脈

担当者の上申コストを下げたとしても、最終的に予算や変更が絡む話は決裁者が動かないと前に進みません。

そして決裁者が動くトリガーは、担当者とは少し違います。「うちの業務が改善できる」よりも、「他社と比べて遅れている」という文脈のほうが反応しやすい。人間として当然の感覚だと思いますが、自社の状態よりも他社との相対比較のほうが危機感にはつながりやすい。

これを踏まえると、CS活動の中に「市場の動きを届ける」という要素を継続的に組み込んでおくことが、長期的に見て重要になってくると感じています。1回の提案で動かそうとするのではなく、競合状況や業界トレンドをタイムリーに届け続けることで、「そろそろ動かないといけないな」という機運を決裁者の中に育てていく。これが地道ではあるけれど、効いてくる動き方だと思っています。

提案が動くケースに共通する3つの条件

こういったことを意識しながら、提案がうまく動くケースを振り返ってみると、3つの共通点があると思います。

危機感があるタイミング

一つ目は、クライアント側に何らかの危機感が生まれるタイミングであること。決裁者・担当者の両方に「このままではまずい」という感覚がある状態は、提案の受け取られ方が明らかに変わります。

実行イメージがあるかどうか

二つ目は、担当者が「自分がやれる」という実行イメージを持てていること。「いい話だとはわかるけど、自分が何をすればいいかわからない」という状態では動きません。提案が具体的な行動に変換されているかどうか、がポイントだと感じています。

すぐ動ける

三つ目は、現場がすぐ動ける状態が整っていること。担当者が動こうとしても、現場にまだ準備ができていない・他の作業が重なっているといった状況だと止まります。

この3つが揃ったとき、提案は動きます。逆にいえば、1つでも欠けていると止まる可能性がある。CSMとして「提案の質を上げる」努力は当然必要ですが、この3条件がどれくらい揃っているかを見極めてタイミングを選ぶことも、同じくらい重要だと思っています。

組織の構造を理解するのもCSの仕事

CS活動は「いい提案をする」だけでは完結しない——というのが、今の自分の正直な気持ちです。

担当者の脳内シェア、上申コスト、決裁者に届く文脈。こういった組織構造の理解を土台に活動を設計することが、NRRの安定と拡大につながっていくと思っています。

まだ自分の中でも整理が続いているテーマで、正直「これが正解」とは言えません。でも、こういった視点を持つCSMが増えると、SaaS業界のCS全体が面白くなっていく気がしていて、引き続き探求していきたいと思っています。

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