理美容業の魅力発信プロジェクト【シマウマフォーカス】 #3~hair room 和_児玉和可子~
─「自分の感覚を信じること。それを積み重ねてきた」─
「やりたいことを“やりたい”と思える、その感覚は、間違ってないと思うんです」
hair room 和 の 児玉和可子はそう語る。
それは彼女の美容師としての軸であり、人生そのものでもある。
大阪の泉南出身。
6人きょうだいの末っ子。幼い頃は「ジャイアンみたいやな」と言われるほど自由奔放。
でも、ただの“自由人”ではなかった。
小学低学年のころには、自作のビーズアクセサリーを友達に売り歩き、熱中のあまり顔面神経痛になるほど集中する子どもだった。
「何かを作るのが好きだったし、それを“人に渡す”っていうのが、もう自然でした」
初めて人の髪を切ったのは、幼稚園。
ままごとの延長で、三つ編みの髪をチョキン。
叱られながらも、それが美容師という道の“最初の一歩”だったのかもしれない。

─「私はこの道はイヤや」ではなく「私はこの道を選びたい」─
中学卒業を目前に控えた頃。
児玉氏には、すでに“決まっていた進路”があった。家系として代々受け継がれた道である一貫教育と就職施設。両親も「当然」と思っていたレールだった。
でも、その道にどうしても進めなかった。
「たぶん、“嫌”っていうより、“違う”って思ったんですよね。このままだったら、自分の人生じゃない。やりたいことは、自分で選ばないといけないって、本気で思いました」
入社式の前日、家を出た。
行き場も仕事もない中、彼女は一つの記憶を頼りに美容室へと向かう。
「“中卒でも美容室で働ける。寮があるところもある”って、テレビか何かで聞いたことがあって、もうそれしか頼るものがなかった」
片っ端から面接を受けたが、15歳の未成年を雇ってくれる美容室はなかった。
最後は両親に見つかり、家に戻される。
でも、彼女の意志は揺らがなかった。
「やりたいことをやりたいって言ってるだけなのに。なんでこんなに大変なんだろうって思ってました(笑)」
何度も話し合いを重ね、ついに「3年は絶対辞めない」という条件付きで、働くことを許された。
そして、ここから児玉和可子という美容師の人生が始まる。
─師がいなかったから、感覚がすべてだった─
最初に働いたのは、地域に根ざした町の美容室。
ユニセックスで、親子三世代が通うような面白い場所。
美容も理容も、着付けもパンチパーマも、全部をこなす「なんでも屋」だった。
「技術をちゃんと体系立てて学んだことって、実はあんまりないんです。
美容学校にも行ってないし、師匠とか先輩も途中で夜逃げしたりして(笑)」

本来、美容師という仕事は、先輩から後輩へと丁寧に技術が継承される“流派的な世界”でもある。
でも、児玉氏はそういったルートを経ていない。
だからこそ、自分の“感覚”だけが頼りだった。
「言ってしまえば、お客様が先生でした。
お一人おひとりが“生きた教材”で、失礼かもしれないけど、
でもその方たちにちゃんと向き合って、扱いを大切にして、
その人が笑って帰ってくれたら、それが“正解”だと思ってきました」
だから彼女にとって、“カット技術”はスキルだけじゃない。
「この人にはどんな髪型が似合うんだろう」
「どう切ったら笑ってもらえるだろう」
その感覚を丁寧に感じとるという、センスそのものなのだ。
「私、おまかせ がすごく好きなんです」
─専業主婦、そして“再起動”へ─
結婚・出産を経て、彼女は美容師をいったん離れる。
専業主婦として、3人の年子と末っ子の4人の子育てに奮闘する日々。
「うちは保育園に預けるっていう選択はしませんでした。
自分で見ていたかったし、一緒にいたかったから。
だから、復帰するつもりも、最初はなかったんです」

しかし、ご主人(同じく理容師)が独立するタイミングで、状況は変わる。
「最初は絶対一緒に働きたくないって思ってました(笑)
夫婦だからこそ、ケンカもあるだろうし、気を遣うし…って思ってたけど、
『お前がいてくれないと困る』って言われて。
まぁ、だんだん気持ちが動いていきましたね」
ご主人の地元である和歌山県に移住し、ブランクを乗り越える再起も兼ねた美容室への勤めを経て、現在の「hair room 和」がスタートした。
“hair room 和”に込めたもの
現在、美容師である児玉和可子氏と理容師であるご主人、児玉夫妻が営む「hair room 和」は、和歌山県紀の川市に店舗を構えている。
「結果として、主人が理容師、私が美容師って感じですみわけができてたから、めっちゃ良いバランスになってますねぇ」
美容と理容のブースを分け、夫婦それぞれが自分のスタイルでお客様に向き合う。家族連れ、お年寄り、子ども——地域に根ざしたあたたかな空間だ。
「ここに来てくれた人が、“ほっとできる”とか、“また来たい”って思ってくれたら、それが一番嬉しいです」

─節目、積み重ね、感覚派美容師が目指すもの─
これから先、自分自身がもっと深めていきたいことや挑戦したいことは?
「最近ね、地域のお祭りに出店させていただいてるんです。夏には従業員の子と一緒に、ヘアアレンジのブースを出してて。で、うちの主人はその横でかき氷売ってるんです(笑)。なんか、そういうのってめっちゃ楽しいんですよ」
イベント出店や地域との関わりも楽しみながら、hair room 和としての世界観を育てている。その根っこには、常に「ちょっと違うことをやってみたい」という気持ちがあるという。
「お店の名前が“和(なごみ)”なんですけど、私ほんとうに“和(わ)”…和もの、が好きなんです。内装も木の一枚板を使って、あったかい雰囲気にしてて。私自身、着物も大好きだし、着付けもやってるので、浴衣や振袖の“おしたく”も、もっともっと力を入れていきたいなって思ってます」
現在も成人式の支度を手がけているが、彼女の目線はさらにその先に向いている。誰かの人生の節目、節目に、そっと寄り添える存在でありたい。
その想いが、hair room 和という空間の“あたたかさ”をつくっている。
「和可子さんにとって魅力的と思う人って、どんな人ですか?」
記者の質問に対して児玉氏は答える。
「“自信がある人”って、やっぱり魅力的だと思います。
でも、それはオラオラとかギラギラした感じじゃなくて、
お話ししてても、その人の中に“積み重ね”がちゃんと感じられるような人。威圧感はまったくなくて、でも、ちゃんと軸がある。
生まれ持ったものもあるかもしれないけど、それ以上に、
いろんな経験を自分の中でちゃんと核にしてきた人なんだと思います」
そして、彼女はそっと付け加える。
「憧れますね。ワタシも、そういう人になりたいなって思うんです」
長いようで短く、波乱のようでまっすぐだった道のり。
誰かの背中を追ったわけでもなく、正解を教わったわけでもない。
ただ、“この人を素敵にしたい”という思いだけで、ここまで来た。

児玉和可子の歩みは、
“自分の感覚を信じる”という一つの在り方を、静かに、でも力強く示してくれている。
「hair room 和」の詳細はこちら↓
📷 Instagram


〒649-6112
和歌山県紀の川市桃山町調月343-5
T E L 0736-60-2554
営業日 火曜日~日曜日
メンズ 9:00~19:00
(要予約限定)21:00まで営業
レディース 10:00~19:00
定休日 毎週月曜日 第1・3日曜日
次回のシマウマフォーカスは?

徳島県徳島市
hair salon 「Form」代表の鈴木大地さん
勉学に励んだ青年時代からの進路転換。
人生の迷いのなかで出会った美容の道を、覚悟をもって歩み進んだ。
「人の変化に寄り添う美容」を信条に、仲間と共に新しいサロンの形を育んでいます。
次回もお楽しみに!
どうぞ、これからの「シマウマフォーカス」にご期待ください。
チームシマウマ【魅力発信事業部】
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魅力の連鎖を生み出す「シマウマフォーカス」
理美容業の魅力発信プロジェクト【シマウマフォーカス】は、シマウマセラムを扱う理美容師たちの“人としての魅力”に焦点を当てた連載企画。自分の生き方を真摯に語るインタビューが、読者の背中をそっと押す力になることを目指しています。
「この記事を読んで、私も頑張ってみようと思った」 「魅力アップ、してみたいなと思った」
そんな声が、また次の魅力的な誰かを生み出して。
その人が、また誰かの背中を押していく──
“魅力の好循環”を、理美容の世界から。
それがシマウマが描く世界。
