私的映画録…「夜を賭けて」2002年 [映画感想文]
あちこちでいろいろな文章を書いたり、本を出したり、セミナーで話したり、Web関連を中心としたPRのディレクションをしたり、音楽作品を出したり、アーティスト紹介サイトの運営をしたり、うさぎの動画を作ったり…なんてことをしているけれど、そのどこでも書けていない、これまでに観た映画等の感想でも書いておこうかと書き始めた第420弾。
今回は、とんでもない勢いの群像劇。山本太郎さんの勢いがほとばしっている作品「夜を賭けて」のお話。
先に書いておくと、原則としてネタバレとかまったく気にせず書いているので、まだ観てない方やネタバレが気になる方はお読みにならない方がいいかもと思います。
ちなみに先に言い訳しておくと、この感想もだいぶ前に書いているものをちょっとなおして載せているので、まさに今の情報とは違っていることもあるかもしれませんので、そういった点もお許しください(毎回冒頭から言い訳が多い)。
公開日:2002年11月30日
監督:金守珍
脚本:丸山昇一
原作:梁石日
製作:敦充良、チャ・スンジェ、元持昌之、村松明彦、盧鐘侖、金應沫
出演者:山本太郎、ユーヒョンギョン、樹木希林、李麗仙、清川虹子、山田純大、六平直政、大久保鷹、不破万作、山村美智、申相祐、唐十郎、奥田瑛二、風吹ジュン、新宿梁山泊役者陣、等
製作:「夜を賭けて」製作委員会
配給:シネカノン
自分にとってとても近しい方が(最近ちょっとご無沙汰しちゃってるけど…)この作品の美術を担当していて、撮影場所の一つだった韓国で超巨大なオープンセットを建てて、毎日映画コンクールで美術賞を受賞されたりしているので(ちなみにとても素晴らしい建築士でもある大塚聡さん)、やや公平さを欠いた評価になってしまうかもしれないけれど、しかしこの映画はマジですごいからぜひ多くの方に観てもらいたいと今でも強く思える作品の一つ。
内容としては、昭和30年代、戦争の爪痕が色濃く残る大阪に暮らす在日韓国人の一群が、その貧しさと差別の中から兵器工場の屑鉄を盗み出して一攫千金を目論む。
その集団の名は「アパッチ」。
しかしそこに警察との攻防、そして仲間内での諍いやヤクザもからみ、決して簡単にことは運ばない。
そしてその暮らしの中にヒロイン・初子(演・リュ・ヒョンギョンさん)が移住してきて…と、なんか書いていて全然この映画のキモを書けていない気がするんだけど…いや、こんな薄い感じじゃないんだよなぁ…(こういう時、自分の文才のなさにがっかりするわ…ホントに)。
背景にあるのは間違いなく差別なんだけれど、それとともに戦後という時代もあって、脱出することが極めて難しい貧困や、今で言う反社的なつながりからくる面倒臭さや痛み、弱者への攻撃など、表層で起こる事象すべてが悲しい話だらけという中で、出てくる登場人物たちはそれをぶち壊すくらいのパワーで前にガンガン進んでいるという、とんでもない勢いがほとばしっている。
なにせ主人公・金義夫を演じた山本太郎さんがもうとんでもなく強靭で突き抜けていて、まさにこれこそハマり役と思わされる。
今、政治家としてものすごいパワーを発揮している彼と本当に重なって観えるくらい、この作品の中の彼は彼自身と重なって観える(もっとも病気から議員辞職して、さらに党の総会が荒れたり、その音声が流出してさらに叩かれたり、今だいぶ厳しい局面にいるとは思うけど…こういう時だからこそ本当の真実を明らかにした方がいいと思うんだよなぁ…あ…つまりなにかきっとちょっとしたことを隠してるんじゃないかなと感じてるってことね…おっと話がそれた)。
で、こんな作品を実現した作り手のパワーというか熱量もものすごく感じる。
てかパワーや熱量がないとこんな映画作れんわなぁと思う。
この映画の監督した金守珍さんは主に、新宿梁山泊という、東京新宿にある花園神社の境内等をはじめとする野外の広場にテントを張って、その中に舞台や美術を造って(この美術を担当しているのも前出の大塚聡さん)演劇を観せるというスタイルの、しかもかなりアングラなジャンルに入る劇団の主宰者。
こうした劇団の系譜とかあまりくわしくはないんだけれど、大塚さんやその奥さん(…は、ちなみに以前一緒に音楽活動させていただいてました)から教えていただいた話では(ちゃんと理解できてるか不安だけど;;;)、唐十郎さんの劇団「状況劇場」が、1967年にやはり花園神社で「紅テント」を立ち上げて公演したのが始まりで、当時はこれがそもそも権力への抵抗を意味することだったんだとか。
そしてこの作品の監督・金守珍さんはその唐さんの意思を受け継ぐ直系の継承者の一人なんだとか(唐さんはこの映画にも出演されてますね)。
唐さんと同時代、同様の活動をした方としては寺山修司さんの「天井桟敷」が有名とのことです。
で、この劇団の公演も何度か観させていただいたことがあるけれど、かなり混沌とした進行の中に、やはり無茶苦茶高い熱量やパワーがあって、これは他の劇団では感じることのできない世界観だなぁと強く印象に残ったものです(その当時縁があってけっこういろいろな演劇を観させてもらってたんですよねぇ…)。
つまりそういうパワーがそのままこの映画にも乗っていて、観ているこちらもその熱に浮かされたような気持ちになっちゃう作品っていう感じかなぁ…。
少なくとも、観たらきっと忘れることができない一本になると思います。
「夜を賭けて」はDVDも出回っていない様子。
なので梁石日さんの原作本をどうぞ。
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