私的映画録…「木の上の軍隊」2025年 [映画感想文]
あちこちでいろいろな文章を書いたり、本を出したり、セミナーで話したり、Web関連を中心としたPRのディレクションをしたり、音楽作品を出したり、アーティスト紹介サイトの運営をしたり、うさぎの動画を作ったり…なんてことをしているけれど、そのどこでも書けていない、これまでに観た映画等の感想でも書いておこうかと書き始めた第387弾。
今回は、こんな軍隊が本当にいたんだろうかと思いつつ、それ以外のこともいろいろ考えながら観てしまった作品「木の上の軍隊」のお話。
先に書いておくと、原則としてネタバレとかまったく気にせず書いているので、まだ観てない方やネタバレが気になる方はお読みにならない方がいいかもと思います。
ちなみに先に言い訳しておくと、この感想もだいぶ前に書いているものをちょっとなおして載せているので、まさに今の情報とは違っていることもあるかもしれませんので、そういった点もお許しください(毎回冒頭から言い訳が多い)。
公開:2025年7月25日
監督:平一紘
脚本:平一紘
原案:井上ひさし
原作:こまつ座
製作:横澤匡広、小西啓介、井上麻矢、大城賢吾
ナレーター:松下洸平
出演者:堤真一、山田裕貴、津波竜斗、玉代㔟圭司、尚玄、岸本尚泰、城間やよい、川田広樹、山西惇、等
制作:キリシマ一九四五、PROJECT9、エコーズ
製作:映画「木の上の軍隊」製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
こんな視点で描かれた戦争映画はおそらく初めてだろう。
瞬間的に、グアム島の横井さんや、ルバング島の小野田さんのことを思い出した。
そしてあの悲惨な沖縄戦の中にも、こういう場面が確かにあったのかもしれない。
しかしこんな生活が、日本の敗戦後2年以上も継続していたのかと想像すると、ちょっと不思議だ。
確かにこんな生活をしていると日本が負けたことを知ることもできなかっただろうことは理解できる。
とはいえこの二人のメンタル変化をちゃんと考えるとより一層興味深い。
当初は完璧に厳格な上官(演・堤真一さん)。
しかしサバイバルするためには地元の下級兵士(演・山田裕貴さん)が必要で、上官もそれによって命を保つことができたことで二人の関係性が変わっていく。
しかしその中でもお互いと疎ましく思って殺してしまおうと思ったり、しかし米軍という外敵の存在によって協力しようとしたり、沖縄戦の終結から敗戦によって状況が緩んで、本人たちにとってもむしろ状況が好転したり、しかしその過程で上官との関係性がこじれて協力関係が崩れたり、食料等の供給が途絶えたり…そこにあるのは、「国のため」とか「国土の保全」とか言いつつ、結局なにもしない…いや、できない小さな個人としての軍人の姿だ。
しかしこの状況、下級兵士の側に罪はない。
彼は沖縄現地で洗脳教育を受けて無理やり徴用され、自分で判断することも許されず、とにかく命令に服従することを強いられた人だ。
ろくな教育も訓練もなく前線に立つことを強いられているとも思える。
それに対し上官側の罪は重い。
状況を判断し、現状を打開するための策を考え実行する責任がある。
それを「今はその時期じゃない」とか言いつつ延期したり、情報収集もろくにせず、
「これ以上は待てない。
次の日曜、攻め込もう。」
なんていう無謀なことを言い出す。
リーダーとして本当クソったれにダメな奴だとしか思えない。
食糧貯蔵庫における手紙のやりとりで現状を知る流れは韓国映画「高知戦」を思い出す。
しかし…戦争が2年も前に終わっていたなんてこと…受け入れられないだろうなぁ…。
この辺り、サイパンの玉砕を描いた「太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-」の大場栄大尉とは対極だなぁ。
理由は、大場大尉は散々抵抗した上でちゃんと考えて秩序だって投降している。
しかしこの作品の上官はなにもせず無為に過ごしてこの時を迎えたのだ。
そんなのきっと納得できない。
自分にも恥いるところもあっただろう。
だから受け入れられないのだと思った。
これは今の企業にも言えることかもしれないなぁと思ったり。
そしてやはり思うのは、特に下級兵士側のいわゆる民衆から見た時の権力者による戦争の無意味さだ。
なんで自分の故郷を戦場にする?…いや、もちろんそこには敵味方ともに理由はあるのだけれど、そこに住む民衆にとっては厄介な話でしかないだろう。
だから戦争には本当に本気で反対だ…いや、率直に大嫌いだ。
いや、戦争が嫌いというか、他人が他人になにかを強制する世界が嫌いだ。
権力者が民衆に。
上官が兵士に。
上司が部下に。
先輩が後輩に。
教師が生徒に。
世論が個人に。
本当に大嫌いだ。
だから、有無を言わせず命令を強制するとか、本当に許せない。
しかしだからと言って日本政府に軍拡反対や改憲反対を言うのは、現状の世界情勢を考えれば完璧に間違っていると思える。
理由は簡単だ。
今、隣国である中華人民共和国は、日本のバブル崩壊後の失策によって流出した人材と技術によって急成長し、もはや日本を歯牙にも掛けないほどの大国となり、結果、アジアの周辺小国を脅かしている。
彼らが徳のある王道を目指す国家なら彼らを中心にアジア連合を結成し欧米と対抗する選択肢もあるだろう(実際自分は30年ほど前にはそういう主張もしたことがある)。
しかし残念ながら南シナ海や香港で見せている彼らの行動は明らかに間違っている。
王道ではなく覇道だと感じる。
さらにはロシアの存在もある。
北朝鮮の存在もある。
つまり、日本が非武装になれば平和になるのではない。
また、日本の防衛をアメリカに頼っているだけではいつまでもアメリカの属国的立場から脱することはできない。
今のトランプのような権力者が現れれば、あっという間に東アジアの安全は不安定になるのだ。
だから本当に平和を享受したいのであれば、今は遺憾ながら日本は軍備増強するべきなのだ。
自衛隊を自国を防衛する軍として認める改憲もスパイ防止法も必要と考える。
だからそうした動きに反対する勢力は、日本政府に対して反対するのではなく、中華人民共和国共産党政府に対して東アジアの安全保障を担保させるためのアクションをすべきなのだ。
突っかかる相手を完全に間違っていると思える。
だから彼らを支持することは絶対できないと思っている。
むしろアホにしか見えない。
いや、彼らはひょっとしたら中国から利益を得て国を売る方向で行動しているかもしれないとさえ思ってしまう。
そう考えると、右側も自分の懐のためだし、左側も結局根っこは同じかもしれないと思える。
要は日本を売ろうとしている相手が違うだけかもしれない…ああくだらない。
この作品において堤真一さんはそんなダメな上官を見事に表現している。
当初は当時の日本軍人の典型とも言える全き強さ。
しかし本心は強くない。
実はただ一人の人。
その自覚の中で揺れる自分。
この表現は素晴らしい。
下級兵士を演じた山田裕貴さんもすごい…というか、彼のキャラとしてこれは大得意な分野と思える。
本当にうまいと思う。
微妙な表情や目の状態によってこの人の根理的状態を感じさせる表現が本当に素晴らしい。
そして、この二人のその後がどうなったのかがものすごく気になった。
だってベースは事実に基づいていると冒頭でテロップが出たから。
そうそう、この作品は沖縄の風俗をちゃんと映し出している。
本島、宮古島、石垣島と、何度か行った沖縄で触れたあの感じが、本当にしっかり反映されているという点でもいい作品だと思えた。
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