私的映画録…「万引き家族」2018年 [映画感想文]
あちこちでいろいろな文章を書いたり、本を出したり、セミナーで話したり、Web関連を中心としたPRのディレクションをしたり、音楽作品を出したり、アーティスト紹介サイトの運営をしたり、うさぎの動画を作ったり…なんてことをしているけれど、そのどこでも書けていない、これまでに観た映画等の感想でも書いておこうかと書き始めた第393弾。
今回は、本当に幸せな状態ってどういう状態なんだろうと考えてしまった作品「万引き家族」のお話。
先に書いておくと、原則としてネタバレとかまったく気にせず書いているので、まだ観てない方やネタバレが気になる方はお読みにならない方がいいかもと思います。
ちなみに先に言い訳しておくと、この感想もだいぶ前に書いているものをちょっとなおして載せているので、まさに今の情報とは違っていることもあるかもしれませんので、そういった点もお許しください(毎回冒頭から言い訳が多い)。
公開:2018年6月8日
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
原案:是枝裕和
製作:石原隆、依田巽、中江康人
出演者:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林、等
制作:AOI Pro.
製作:フジテレビジョン、AOI Pro.、ギャガ
配給:ギャガ、マグノリア・ピクチャーズ、ル・パクト
確かにこの家族には問題がある。
真っ当とは到底言えない。
だって窃盗や詐欺で生計を立ててるわけだし。
しかし、特に子供たちにとって、この家族といる状態と、本当の家族といる状態の、どちらの状況が本当に幸せな状況なんだろうかということを考えるとなかなか複雑だなと考えさせられる。
血縁ある家族の元にいる時に感じていたであろう緊張感と、血縁はない上にまともな暮らし方もできていない人たちとの暮らしに感じたであろう幸福感。
ちょっと極端な比較とは思うけれど、このいずれが本当の幸せだったのだろうかということを考える機会を与えられたというように感じる…てか、まともな社会生活ができている養父母に引き取れられるのがベストなんだろうけどね。
つまり、両者ともにメリットとデメリットがあるということだ。
とすれば考えるべきは、そのそれぞれが持っているメリットデメリットを比較し、自分が考える優先順位に従ってそのいずれにより高い価値を感じて選択するかということになるだろう。
もちろんそれは人によって異なる。
だから一概に、この映画の主人公家族を選び取ることこそが幸せなのだとは言いきれないだろうけれど、しかしこの映画を通して、もし自分だったらどのような選択をするだろうかと考えてみることに意味があるように思う。
そういった考察を通して、おそらく自分がどのようなものに価値を感じる人間なのかということが浮き彫りになるということかもしれない。
その思考の過程で、自分がどのような人間なのかということと向き合うことになると感じるのだ。
そしてもし可能であれば、自分とは違う選択をするかもしれない人が実際にいることにも思いをはせることで、この世の中に多様性があることや、そういった多様性を受容することについて、または、それに関連するさまざまな問題のいくつかに気づくことができるかもしれない。
この映画にはそんな力があると思えた。
淡々としている中に展開される何気ない言葉や行動が、ぼぉっと見ていると見過ごしてしまうかも知れないけど、しかしそれぞれに考えるためのヒントがある。
そういった意味でも偉大な映画だと感じる。
それにしても、池脇千鶴さんをこんな風に(最後にちょっとだけ出てくる警察官)使うなんて、なんて贅沢なんだろう。
彼女はもっともっととんでもない役でどんどん出てきて欲しいと感じる女優さんの一人だからなぁ。
そうそう、結局数回しか観られなかったNHK連ドラ「ばけばけ」で出てきた彼女はものすごいインパクトで良かったなぁ。
そういえばこの作品は出演している役者さんがみんなすごい。
筆頭はもちろんおばあちゃんを演じた樹木希林さんだろうけれど、娘役の松岡茉優さんも、父親役のリリー・フランキーさんも、母親役の安藤サクラさんも、そして息子役の城桧吏さんも、少女役の佐々木みゆさんも、みんな本当に素晴らしい。
それぞれがご自身のキャラクターを自然に出しつつも、展開されるストーリーに対し深い感情を持って対応し、それに対し本当にリアルに反応していると観える。
そしてその感情の動きが、大仰でもないく不自然でもなく、自分に染み込むように伝わってくるような感覚にとらわれる。
だから本当にリアルにこういう家族がそこにいると思えるし、一見こんな突飛と思える設定なのに決して絵空事ではないと思えるのだ。
都会の暗部として本当にあることのように思えるのだ。
そういった意味では娘が働く風俗店に来るお客さんを演じた池松壮亮さんもよかったなぁ。
そして彼に対し優しさを見せる娘に、彼女の人となりを感じたりすることができる。
そうそう、柄本明さんが演じる駄菓子屋の親父もよかったなぁ。
とにかく、本当に素晴らしい設定の上で展開するさりげないのに緻密な物語を、とんでもなく手練れな俳優さんたちがとてつもない作品にしたという、傑作中の傑作だと、本当に思う。
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