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なぜポケモンは「売上KPI」を追わないのか? 〜伝説の編集者が語る『アラレちゃん』の失敗に学ぶ〜

こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。

この週末は、静岡県にいました。
高校生の次男が所属するサッカーチームの公式戦があったからです。新チームになって初めての大きな大会。親としても応援に熱が入ります。

静岡といえばサッカー王国。
そして、私の遠征時の定宿といえば「ドーミーイン」です。

朝はサウナでしっかりととのい、朝食を堪能しながら、ふとスマホでニュースを眺めていたときのこと。ある記事に目が止まり、箸が止まりました。

それは、株式会社ポケモンがコラボ商品において「売上のKPI(重要業績評価指標)」を設けていないという内容でした。


「え、営利企業なのに、売上を目標にしない?」
一瞬、経営者としての私の脳がバグりました。

しかし、読み進めるうちに深く納得し、ある「伝説の編集者」の話と一本の線でつながりました。

今日は、ポケモンの戦略と、かつて社会現象になったあのアニメの事例から、「愛され続けるブランドの守り方」について考えてみたいと思います。



🛑 なぜ、ポケモンは「売上」を追わないのか?

記事によると、ポケモンはコラボのオファーが殺到しても、安易には引き受けないそうです。
「なぜこの商品にポケモンなのか?」という必然性や品質がなければ、たとえ儲かる話でも断る。

驚くべきは、ライセンス部門に「売上高のノルマ」がないことです。

もし売上目標があったらどうなるでしょう?

担当者は目標達成のために、
「とにかくピカチュウを印刷しておけば売れるだろう」
という安易な商品を連発するかもしれません。

その結果、市場は飽和し、消費者は「またか」と飽き、ブランドの価値は毀損していく。

彼らが本当に恐れているのは、「消費され尽くしてしまうこと」なのだと思います。

💡 ちょこっと理論紹介💡
❤️‍🔥グッドハートの法則

経済学者チャールズ・グッドハートが提唱した「測定などの指標が目標になると、それは良い指標ではなくなる」という法則です。

売上をKPIにした瞬間、現場は「ブランドを守る」ことよりも「数字を作る」ことに最適化しはじめる。

その結果、ブランドを壊す行動が“合理的”になってしまう——ここにパラドックスがあります。


👓 鳥嶋さんが語る「アラレちゃん」の失敗

この「売れすぎてブランドが死ぬ」という現象について、非常に示唆深いエピソードがあります。

皆さんは、漫画『Dr.スランプ』をご存知でしょうか?
鳥山明先生の代表作であり、1981年にアニメ化された『Dr.スランプ アラレちゃん』は、最高視聴率36.9%を記録するお化け番組となりました。

当時、日本中が「んちゃ!」「バイちゃ!」と挨拶し、アラレちゃんグッズが街に溢れました。まさに社会現象です。

しかし、当時の担当編集者であり、後に白泉社の社長も務めた鳥嶋和彦さん(通称 マシリト)は、後にインタビューでこう語っています。

「アニメ化は失敗だった」

えっ、あんなに大成功したのに? と思いますよね。

鳥嶋さんの真意はこうです。

「あまりに爆発的に売れすぎて、キャラクターが『その時代だけのシンボル』になってしまった。
一気に消費され、飽きられるのも早かった」

強すぎるブームは、コンテンツを「文化」ではなく「一過性の流行」にしてしまう。
結果として、原作の寿命すら縮めてしまいかねない。

この「アラレちゃんショック」の反省が、その後の『ドラゴンボール』や、今のIPビジネスの教訓になっている——そんな話を聞いたことがあります。

今のポケモンがやっていることは、まさに「第2のアラレちゃんショック」を避けるための防衛戦なのだと思います。

あえて露出を制限し、飢餓感を保つ。
一過性のブームで終わらせず、孫の代まで続く「文化」にする。

この“あえて売らない”は、短期の儲けよりも、長期の信頼を選ぶ意思決定です。

💡 ちょこっと理論紹介💡
📈プロダクト・ライフサイクル(PLC)

製品やブランドには、導入期→成長期→成熟期→衰退期という寿命があるという考え方です。

急激すぎる成長(ブーム)は、山が高いぶん谷も深く、一気に「衰退期」へ滑り落ちるリスクを孕みます。

ポケモンは、このサイクルを人為的にコントロールし、「成熟期」をできるだけ長く保つ戦略をとっているように見えます。


👔 「マネージャー失格」と言われた日のこと

この「短期的な数字」と「長期的な価値」の対立。
私自身も、苦い思い出とともに思い出します。

20代の頃、新規事業(個人会員と法人顧客のマッチングビジネス)の立ち上げを任されました。
当時の私は、まさに「数字の亡者」でした。

「アラレちゃん」のようなブームを作ろうと焦り、実態の伴わない数字ばかりを追いかけていました。
個人会員が集まっていないのに、法人顧客の開拓ノルマだけを追求。
「とにかく売ってこい!」と部下を焚きつけ、無理やり受注しては、効果が出ずにクレームになる。

結果、どうなったか。

一回り年上の部下から、「あなたはマネージャー失格だ」と面と向かって言われ、組織は崩壊。
私自身も適応障害でダウンしました。

目先の数字(売上)を追うあまり、
「信頼」や「人の心」という、もっと大切な資産を焼き尽くしてしまったのです。

今のポケモン社が、売上KPIを捨ててでも守ろうとしている「見えない資産」。
それは、私たち個人のキャリアにおいても同じことが言えるはずです。


🧭 自分を「消費」させない働き方

私たちはつい、わかりやすい成果や、頼まれた仕事をすべて引き受ける「量」で自分を評価しがちです。

でも、一度立ち止まって考えてみてください。
その仕事は、あなたのブランドを育てていますか? それとも、消費していますか?

「とりあえず足立に頼めばなんとかなる」
そう言われて、安易な仕事を大量に引き受け、疲弊し、クオリティの低いアウトプットを出し続けること。
それは、自分自身を「一過性のブーム」で終わらせる行為かもしれません。

私が尊敬するスティーブ・ジョブズも、復帰後のアップルで製品ラインナップを劇的に絞り込み、「何をしないか」を決めることでブランドを再生させました。

断る勇気を持つこと。
納得できる仕事に魂を込めること。

静岡からの帰りの新幹線で、私はいま抱えている「マネジメントマニュアル作成」という重たい仕事の構成を練り直しています。
「早く終わらせる」よりも、「10年後も読まれるものにする」ために。

自分というブランドを安売りせず、長く愛されるものに育てていきましょう。


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最後に、ひとつだけ問いを置いて終わります。
あなたが最近「引き受けすぎた」と感じた仕事は、ブランドを育てましたか? それとも、消費しましたか?


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