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とん汁が麺になる日。 〜すき家の静かな革命に学ぶ〜

こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。

先日、すき家が「とん汁みそらーめん」という新商品を出したというニュースを目にしました。

牛丼チェーンがラーメンを出す。
一見すると、ただの話題作りにも見えます。

でも、よく読んでみると、これがなかなか深い一手なんです。

今日はこのニュースを入り口に、新しいことを始めるときの、賢いやり方について考えてみたいと思います。



🍜 新作ラーメン、なんと360円

すき家の「とん汁みそらーめん」。
価格はなんと単品360円

牛丼チェーンらしい圧倒的な低価格で、浅草エリアなどで限定展開されています。

中身はシンプルで、既存の人気サイドメニュー「とん汁」に、麺を合わせただけ。
新しい食材も、新しい調理オペレーションも、ほとんど追加していません。

これに対して、同業他社はもっと派手な動きをしています。

🏢 吉野家はラーメン店をM&Aして専門業態を獲得
🏢 松屋は人気つけ麺ブランド「六厘舎」の松富士を傘下に

つまり、一気に専門性を外から取り込む戦略です。

一方、すき家は違います。
手元にあるとん汁を、ちょっと組み替えただけ

派手さはない。
でも、これがとても賢いんです。


🚢 北前船の船頭たちも同じだった

実は、この「手元にあるものを組み替える」という発想、江戸時代の商人たちもやっていました。

北前船をご存知でしょうか。

大坂と蝦夷地を結んでいた輸送船です。
当初は蝦夷地の昆布やニシンを大坂に運ぶのが主な仕事でした。

でも、船頭たちはこう考えます。

「帰りの空荷、もったいないな」

そこで彼らは、大坂で酒・木綿・古着・塩などを仕入れ、寄港地で売りさばきながら北上するようになりました。
これが「買積み商法」です。

加賀の銭屋五兵衛や越中の馬場家といった豪商は、みなこの漸進的なやり方で財を成しました。

最初から大商人を目指したわけじゃない。
本業のついでに始めたことが、いつの間にか本業級に育っていったのです。

すき家の「牛丼のついでのラーメン」と、北前船の「輸送のついでの売買」。

200年の時を超えて、同じ発想なんですね。


💡ちょこっと理論紹介💡
🔬 リーンスタートアップ

シリコンバレーの起業家、エリック・リースが提唱した考え方です。

新しい事業を始めるとき、いきなり完成品を作らない。まず必要最小限のものを世に出して、お客さんの反応を見ながら改良していく。

「構築 → 計測 → 学習」のサイクルを高速で回すことで、失敗のコストを最小化しながら、学びを最大化する。これが核心です。

すき家の「浅草エリアだけで限定販売」というのは、まさにこのMVPの発想です。

全国でいきなり勝負せず、小さく試して、反応を見る。

地味ですが、外食業界でこれができる会社は、意外と少ないのかもしれません。


🎨 芸術の世界にも似た話があります

もう一人、ご紹介したい人物がいます。

アメリカの現代美術家、ロバート・ラウシェンバーグです。

1950年代、美術界では抽象表現主義が全盛期でした。
ポロックやロスコの大作が高値で取引され、「絵画とは純粋な表現であるべき」という空気が支配していた時代です。

そんな中、ラウシェンバーグは何をしたか。

絵画のキャンバスに、古新聞、コカ・コーラの瓶、使用済みのキルト、タイヤ、そして、はく製のヤギまで貼り付け始めたんです。

彼はこの手法を「コンバイン」と名付けました。

代表作『モノグラム』は、タイヤをはめた雄ヤギのはく製を板の上に置いた作品。


純粋絵画派からは「不純だ」と猛烈に批判されました。

でも、この「不純さ」が、ポップアートや現代美術への扉を開いたんです。

重要なのは、彼が「絵画を捨てた」わけではないこと。
絵画という既存の形式を保ちながら、そこに日用品を組み込んだ

すき家も同じです。
牛丼を捨てずに、その横にラーメンを置いた


💡ちょこっと理論紹介💡
🛠️ ブリコラージュ

フランスの人類学者レヴィ=ストロースが『野生の思考』で提唱した概念です。

創造性には、大きく二つのあり方があります。 一つはエンジニアの思考。目的に応じて最適な素材を新たに調達し、設計図どおりに作り上げる。

もう一つがブリコラージュ。手元にある「ありあわせの材料」を組み合わせて、目の前の問題を解決する。

レヴィ=ストロースは、人類の知恵の多くが、実はブリコラージュ的に生まれてきたと論じました。

吉野家・松屋のM&A戦略は、エンジニア的発想です。
すき家のとん汁みそらーめんは、ブリコラージュ的発想

どちらが優れているという話ではありません。

ただ、ここから学べるのは、制約の中でこそ、真の工夫は生まれるということです。


🏃 私たちの日常にも、同じ景色がある

私自身を振り返っても、思い当たることがあります。

起業するとき、最初は「ストアカみたいなマッチングビジネス」を構想していました。
大きな絵を描いて、一気に勝負しようとしていたんです。

結果は、見事にうまくいきませんでした
時期尚早だったんですね。

そこから法人研修に絞り込んで、ようやく軌道に乗り始めました。

さらに、コロナで売上ゼロになりかけたとき、苦し紛れにYouTubeで動画を作ってみたことがありました。
当時は収益にもならず、「何をやってるんだろう」と思いながら。

でも、それを見てくれたお客さんから動画オーダーをいただくようになり、今では新しい収益の柱に育っています。

計画通りに何かを作ったわけじゃない。
手元にあるものを、別の形に組み替えただけなんです。

気がついたら、それが新しい事業になっていた。

北前船の船頭も、ラウシェンバーグも、すき家も、そして私のような小さな事業者も。

「既にあるもの」を、誰も組み合わせなかった方法で組み合わせる。

革新って、案外そういうところから生まれるのかもしれません。


🌱 完璧を目指す前に、組み替えてみる

新しいことを始めるとき、私たちはつい「新しい何か」を求めがちです。

新しいスキル。
新しい資格。
新しい人脈。
新しいツール。

でも、本当に大事なのは、今手元にあるものを、どう組み替えるかなのだと思います。

すき家のとん汁みそらーめんが教えてくれるのは、そんなシンプルな話です。

派手さはいらない。
いきなり完成形を目指さなくていい。
小さく試して、育てていけばいい。

そして何より、自分の中に既にあるものを、もう一度見つめ直してみる。
そこに、意外と大きなヒントが眠っているのかもしれません。

ちなみに私、実はこの1年、週1ですき家に通っています
前日食べ過ぎたときの「お食事サラダ」で罪滅ぼしするのが定番コースです。

今度行ったら、とん汁みそらーめんを探してみようと思います。
浅草限定と聞いて、関西在住の身としては少し遠いですが(笑)。


皆さんの仕事や日常の中で、「組み替えたら面白くなりそうなもの」、何かありますか?

もしよければ、コメントで教えてください。
きっと、そこに新しい景色が広がっています。


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