なぜ私たちは「明日ならできる」と信じてしまうのか? 〜シドニー・オペラハウスの悲劇に学ぶ、見積もりの甘さを消す技術〜
こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。
僕は毎朝4時に起きて、コーヒーを淹れながら、手帳(あるいは頭の中)で「今日やること」を整理します。
「よし、今日はこれで行けるぞ」と、気持ちよくスタートする。
ところが夕方になると、なぜか終わっていない。
しかも、だいたい同じパターンで。
・メールの返信が思ったより長引く
・部下からの相談が想像より重い
・急に資料の差し替えが飛んでくる
・クライアントからの急なミーティング依頼と対応
そして夜、布団の中でこう思うわけです。
「自分、段取り下手すぎない?」と。
でも、今日の話はあなたを責める話ではありません。
むしろ逆で、予定が崩れるのは、ある意味で“正常”です。
最近読んだ『Think Smart』に、まさにこの現象がど真ん中で出てきて、膝を打ちました。
今日はその学びを借りながら、私たちの脳の「あるクセ」について、一緒に考えてみたいと思います。
📖 参考書籍
🧩 「今日だけは例外」だと思い込む脳
私たちが陥っているこの現象、行動経済学の世界ではこう呼ばれています。
💡ちょこっと理論紹介💡
🧠 計画錯誤(Planning Fallacy)
人は、作業にかかる時間やコストを一貫して短く見積もり、成功確率やメリットを過大に見積もる傾向があります。
過去に何度も外しているのに、「今日だけは予定通りに進む」と本気で思い込んでしまう。これが計画錯誤です。
たとえば朝のあなたは、だいたい“未来の自分”に期待しています。
未来の自分は、集中力が高い。返信が早い。割り込みにも動じない。会議も予定通りに終わらせる。
要するに、めちゃくちゃ仕事ができる人っぽい。
でも現実は違う。
会議は伸びます。割り込みは来ます。人は疲れます。
なのに、予定は「疲れない前提」で組まれている。
このズレが、毎日発生しているんですよね。
🏗️ 「自分だけ」じゃなく、世界規模で起きる
『Think Smart』で紹介されていて印象的だった例が、シドニーのオペラハウスです。
1957年の計画当初、完成予定は1963年、予算は700万ドル。
しかし実際の完成は1973年。総工費は1億200万ドル。
当初の約14倍のコストになった、という話。
これ、壮大すぎて笑ってしまいそうですが、構造は私たちの日常と同じです。
「午前中に企画書を一気に書いて、午後は面談3本。夕方に提案資料を整えて、夜は軽く運動して、ついでに読書して寝よう」
頭の中の計画って、だいたいこの“シドニーのオペラハウス”になります。
立派で、美しい。けれど、完成はずっと遠い。

🧠 予定が崩れる本当の犯人は「割り込み」ではない
もちろん、突発的な仕事などの「割り込み」は原因のひとつです。
でも、もっと根っこにあるのはここだと思っています。
「割り込みが来ない世界」を前提に、予定を組んでしまうこと。
だから割り込みが来るたびに、世界がバグったように感じてイライラしてしまう。
でも実際は、バグっているのは世界ではなく、こちらの前提です。
子育て中のリーダーなら、なおさらですよね。
子どもの体調、学校の連絡、家の用事。
仕事の予定って、家庭という“もう一つのプロジェクト”と、同じカレンダー上で戦っていますから。
私自身も、わりと時間に余裕を持ちたい派なのに、油断すると詰め込みます。
予定を詰め込むと、なぜか「今日の自分、デキる」感が出るんですよね。
あれ、本当に危険です(笑)。
🧯 「失敗する前提」で計画を作ると、なぜかうまくいく
じゃあどうするか。
対策は、気合いでも根性でもなく、最初から失敗を計画に入れておくことです。
『Think Smart』でも紹介されている、心理学者ゲイリー・クラインの手法がとても実用的です。
💡ちょこっと理論紹介💡
🧯 プレモータム(死亡前死因分析)
プロジェクトを始める前に、「今は1年後。残念ながら大失敗に終わりました」と仮定する。
そして 「なぜ失敗したのか?」の原因を先に書き出す 手法です。
「どうすれば成功するか?」と考えると、私たちは希望的観測に寄ります。
でも「なぜ失敗したか?」と過去形で問われると、脳は急にリアリストになる。
この切り替えが、めちゃくちゃ効きます。
私も研修の企画を詰めるとき、頭の中がノリノリになる瞬間があるんですが、そのときほど危ない。
そこで一度、プレモータムを入れる。
「当日、どこで詰まる?」
「誰の承認で止まる?」
「参加者が疲れるとしたら、何分目?」
この問いを先に置くだけで、だいぶ現実的な設計になります。
🧰 明日からできる「現実に勝つ」小ワザ3つ
ここから、難しくしない範囲で、私の実務上の工夫を3つご紹介します。
✅ ① 予定は「全部やる」ではなく「3つ勝つ」にする
その日にやることを10個並べると、脳は“全部できる気”になります。
でも現実は、3つ勝てれば上出来です。
おすすめは、今日の「勝ち筋(これだけはやる)」を3つだけ書くこと。
他は「できたらラッキー枠」に回す。
これだけで、罪悪感がだいぶ減ります。
✅ ② 「移動・連絡・待ち」を作業として計上する
「会議1時間」と書く。
でも実際は、前後の準備、移動、終わった後のチャット対応で、平気で1.5倍になります。
面倒ですが、最初から「前後10分」を付けて予定を組みます。
この10分は、未来の自分への仕送りです。
✅ ③ 夕方に「回復枠」を1つ置く
突発対応は、なぜか夕方に来ます。
そして夕方の自分は、朝より体力が少ない。
だから、夕方に30分だけ「何も入れない枠」を置きます。
そこがバッファになります。
空いたらコーヒーを飲めばいい。
空かなかったら救命ボートになります。
🧭 最後にひとつ、軽い問いを
ここまで読んで、「自分の予定が崩れる理由、だいたい同じだな」と思った方。
たぶん、明日も崩れます。人間ですから(笑)。
でも、明日を少しだけマシにする方法はあります。
今日の夜、手帳を開いて、こう自分に問いかけてみてください。
「明日、私は何を1つ減らす?」
「明日、どこに回復枠を置く?」
無理な計画で自分を追い込むより、余白のある計画で機嫌よく過ごすほうが、結果的にパフォーマンスも上がります。
よければコメントで教えてください。
あなたの予定を壊す“最大の割り込み”は、何ですか?
(私はやっぱり、子ども関係の突発イベントです……!)
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