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悩む前に「考え方」を変える──『悩まない人の考え方』に学ぶ1分コーチング

株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。

今日は、書籍
『「悩まない人」の考え方―1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』
に出てくる、ある学生企業でのエピソードを題材にしながら、


「悩み」をどうやって「行動」に変えていくか?

を、コーチングやGROWモデルの視点で整理してみたいと思います。


学生企業リョーマでの「1分間コーチング」

本書の著者である木下勝寿さん(株式会社北の達人コーポレーション(東証プライム上場)代表取締役社長)は、学生時代に「リョーマ」という学生企業に所属していたそうです。
関西の大学生たちが立ち上げ、年商数億円規模まで成長していた、当時としてはかなり本格的な組織です。

そこで社長を務めていたのが、のちにGMOインターネットグループ副社長COOとなる西山裕之さん。
本書では、西山さんが悩んでいるメンバーにかけた、こんな“超シンプルな会話”が紹介されています(内容は要約です)。


ある日、メンバーの一人が仕事のことで落ち込んでいました。
それを見て、西山さんが声をかけます。

  • 「おまえ、悩んでるんか?」

  • 「何を悩んでるんや?」

メンバーは、
「○○が××でうまくいっていない」と、問題の説明を始めます。

そこで西山さんは、すかさずこう尋ねます。

  • 「で、結局どうなったらええねん?

メンバーは少し考えたあと、

  • 「○○が☆☆になった状態が理想です」

と、望ましい状態を言語化します。

すると今度は、

  • そのためには何をせなあかん?

と問いかける。

メンバーは自分なりに、

  • 「Xを☆☆に変える必要がありますね」

という“打ち手”を言葉にします。

西山さんの最後のひと言は、たったこれだけです。

  • ほな、やれや

これで会話はおしまい。
わずか1分ほどのやり取りで、さっきまで悩んでいたメンバーは表情がガラッと変わり、すぐに行動モードに切り替わった──というシーンが描かれています。


この会話で起きていることを分解してみる

本書では、ここから

「あ、いま自分は“悩もうとしている”だけなんだ」

という気づきを得ることが、悩みから抜け出す第一歩だと説明されています。

更に、このエピソードを、コーチングの理論で分解してみると、非常に示唆に富んでいます。

① GROWモデルで見る「高速コーチング」

GROWモデルは、コーチングの代表的なフレームです。

  • G:Goal(ゴール)
    「結局、どうなったらいい?」
    → 悩みの話から、まず“望む状態”を言語化させている。

  • R:Reality(現状)
    「何を悩んでいるの?」
    → 今起きている事実や問題の構造を整理させている。

  • O:Options(選択肢)
    「そのために何をしないといけない?」
    → “できない理由”ではなく、“できる行動”に焦点を当てている。

  • W:Will(意思・行動)
    「ほな、やれや」
    → 最後は、やる・やらないを本人に決めさせるひと言。

この1分間で、西山さんは
R → G → O → W の流れを一気に回しています。

アドバイスをたくさん与えているわけではありません。
「問いの順番」だけで、メンバーの思考を“悩みモード”から“行動モード”へ切り替えているのがポイントです。


② 「問題のストーリー」から「ゴール+一歩目」へ

悩んでいるとき、私たちはつい

  • なぜこうなったのか

  • 誰が悪いのか

  • 失敗したらどうしようか

といった「問題の物語」を頭の中で繰り返しがちです。
これを続けるほど、不安や自己否定は強くなっていきます。

西山さんの質問は、このループを中断し、

  1. ゴールは何か?

  2. そのために何をすればいいか?

という、自分がコントロールできる思考に変換しています。

本書のエピソードは、

「悩み」を「ゴール」と「一歩目」に翻訳する

という、とてもシンプルで強力な技術を見せてくれています。


メタ認知としての「いま、悩もうとしている」

著者はこの出来事から、

「あ、いま自分は“悩もうとしている”だけだ」

と気づくための“心のスイッチ”を手に入れた、と書いています。

この一文は、心理学でいうメタ認知の話です。

  • 悩みに飲み込まれている自分
    だけでなく、

  • 「悩もうとしている状態の自分」を、少し離れた場所から眺める自分

をつくるイメージです。

この“もう一人の自分”が現れると、

  • 「悩む時間」がだらだらと続く前に

  • 「で、結局どうなったらいい?」

  • 「そのために、自分は何ができる?」

と、自分にコーチングできる状態をつくれます。


今日から使える「1分セルフコーチング」

このエピソードは、読み手である私たちにとっても、そのまま実践できます。

もし今、心に引っかかっていることがあるなら、紙でもスマホでも良いので、次の3つを書いてみてください。

  1. 何に悩んでいる?
     → まずは事実と状況を、1〜2行でメモする。

  2. 結局、どうなったら理想?
     → “誰のせいか”ではなく、“望む状態”を1行で書く。

  3. そのために、自分ができる一歩目は?
     → 5〜10分でできるくらいの、小さな行動まで具体化する。

大切なのは、

「悩み(問題の物語)」にとどまらず、
「ゴール」と「一歩目」までセットで考える

という習慣です。


リーダーとして、この問いをどう使うか

この話は、セルフコーチングとしても有効ですが、
リーダー・マネージャーの立場でメンバーに関わるときにも使えます。

  • 「なんでできていないの?」と詰めるのではなく、

  • 「結局、どうなったら一番いい?」

  • 「そのために、今できることって何?」

と問いかけていく。

部下の悩みを“代わりに解決してあげる”のではなく、
「考える順番」と「問いの型」を渡すイメージです。

『悩まない人の考え方』に出てくる、この1分間の会話は、
単なる成功エピソードではなく、

悩みを「行動に変える」ための、再現性のある思考法

を教えてくれる、良質なケーススタディだと感じます。


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