日韓でこんなに違う「段差」と手すり高さ— 5cm・10cmの差が都市を変える理由
縁石・手すり・階段で見えてくる“見えない設計の違い”
外国で生活すると、
街の雰囲気やディテールに違和感を覚えるのは当然のことである。
そして、その違和感は、長く住めば住むほど、徐々に薄れていく。
しかし、その違和感が完全に消えてしまう前に、それを言語化し、
検証することには大きな意味がある。
母国との違いを見つけ、それが改善可能なものであれば指摘することは、
都市や社会の質を高める契機にもなり得るからだ。
つまり「違和感」は、単なる戸惑いではなく、発見の入り口である。

■ 1. 最初に感じた違和感は「段差」だった
私が韓国に来て最初に感じた違和感のひとつは、街の「段差」であった。
歩道と車道の境界、いわゆる縁石の高さが、日本と比べて明らかに高い。
日本では一般的に10〜15cm程度が多いのに対し、韓国では15〜20cm程度の高さが見られることが多い。
このわずか数センチの差は、一見すると小さな違いに思えるかもしれない。
しかし実際には、この差が歩行感覚や安全性、さらには都市のあり方にまで影響を与えている。

■ 2. 5cmの差は「体感」を変える
こうした差は、街のあらゆる場所に現れている。
例えば手すりの高さである。
韓国では外部における落下防止の観点から、1200mm以上とされることが一般的である。一方、日本では1100mm以上が基準となっている。
この10cmの差は、体感として決して小さくない。
特に屋上やバルコニーなどの外部空間では、この高さが視線に近い位置で連続するため、わずかに視界を遮り、場合によっては圧迫感すら生じる。
安全性の面では有利に働く一方で、空間の開放性という観点では影響も大きい。
■ 3. 外部と内部で逆転する「高さ」
興味深いのは、外部の段差とは逆に、住宅内部の階段では異なる傾向が見られる点である。
日本の住宅では、限られた空間の中で階段を納める必要があるため、
蹴上がやや高くなる傾向がある。
一方、韓国のアパートでは比較的ゆとりのある計画が可能であり、蹴上は抑えられ、体感的にも緩やかに感じられることが多い。
外部では段差が大きく、内部では段差が抑えられる。
この対比は、単なる寸法の違いではなく、空間の使い方や優先順位の違いを示している。

■ 4. それは人の違いではない
では、こうした高さの違いは、単純に身体スケールの違いから来ているのだろうか。
韓国人と日本人の平均身長に大きな差があるかといえば、そこまで顕著な違いがあるとは言い難い。
確かに韓国の方がすらりとした体格の印象はあるものの、それだけで10cmの寸法差を説明することはできない。
むしろ、その差は人ではなく、制度によって生まれていると考える方が自然である。
■ 5. 制度と現実のズレ
例えばバリアフリーに関する規制は、韓国でも年々強化されている。
障害者用駐車場の設置割合も、施設規模に応じて厳格に定められており、
大型商業施設では入口付近に配置されるケースが多い。
もちろんその必要性は疑う余地がない。
しかし実際の運用を見ていると、全体が満車に近い状態であっても、
その区画だけが空いている場面にしばしば遭遇する。
ここには、制度としての理想と、実際の利用状況との間に、わずかな乖離が存在しているようにも見える。
■ 6. 都市は制度に追いつかない
さらに重要なのは、こうした制度が比較的短いスパンで更新され続けているのに対し、都市そのものは急激には変わらないという点である。
既存の街区、道路構造、建物ストックは、そのままの状態で残り続ける。
その上に新しい制度が重ねられていくことで、都市の中には新旧のルールが混在し、時に摩擦を生む。
ソウルや首都圏では特にその傾向が顕著であり、古い街並みと新しい新都市が隣接しながら、それぞれ異なる前提条件のもとで形成されている。
都市は常に更新され続けている。
しかしその更新速度は一様ではない。
制度が先に進み、都市がそれに追いつこうとする。
そのズレの中に、私たちが日常的に感じている違和感の正体があるのかもしれない。

ここまでは「高さ」という観点から、日韓の違いを見てきた。
ではなぜ、その5cm・10cmの差が生まれるのか。
そして設計者は、その差をどのように判断し、扱うべきなのか。
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ここからは、この差を「実務で使える判断基準」として整理します。
・なぜ同じ用途でも寸法が変わるのか
・どこまでが法規で、どこからが設計判断なのか
・安全性・使いやすさ・コストはどこでバランスするのか
これらを、制度・設計・現場の視点から分解し、
具体的な寸法判断として落とし込みます。
多くの設計では、この5cm・10cmはなんとなく決められています。
しかし、この構造を理解すれば、
段差や手すりの高さを意図的にコントロールできるようになります。
実際にこの視点を持つことで、
・安全性とデザインの両立がしやすくなる
・説明根拠のある設計ができる
・クレームや手戻りを防げる
といった実務的な変化が生まれます。
これは住宅・外構・公共空間まで、スケールを問わず応用可能です。
もし今、
・寸法判断に自信を持ちたい
・法規と設計の間を整理したい
・なぜその高さなのかを説明できるようになりたい
そう考えているなら、この先は確実に価値があります。
読むかどうかで、設計の精度と説得力は確実に変わります。
■ 7. なぜその寸法になるのか — 設計の分解
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