【映画】また会うときまでの「しばしの別れ」~「ほどなく、お別れです」鑑賞記
予告編を見たときから「これは絶対に泣けるヤツだ!」と、期待していた話題の映画「ほどなく、お別れです」を観てきました。いやー、非常に良かったです!心が浄化される・・・そんな気持ちなりました。
というわけで今回はこちらの作品の鑑賞記をまとめてみたいと思います。例によってネタバレ内容を含みますので、お読みくださる際にはご了承ください。
まずは恒例のあらすじから
就職活動に苦戦する清水美空には、「亡くなった人の声を聴くことができる」という、誰にも打ち明けることができない秘密があった。そんな彼女に運命を変える出会いが訪れる。
彼女の能力に気づいた葬祭プランナーの漆原礼二から、葬祭プランナーの道に誘われたのだった。なにかに導かれるように葬儀会社「坂東会館」のインターンとなった美空は、漆原とタッグを組み、妊婦の妻を亡くした夫、幼い娘を失った夫婦など、さまざまな家族の葬儀を通して、「残された遺族だけでなく、故人も納得できる葬儀とは何か?」という問いに向き合っていく。
登場人物全員「いい人」映画!
ジャンルとしては「花まんま」や「アイミタガイ」のような、「愛する者の喪失」と残された周囲の人々の人間模様を描いた作品でした。特に今回の舞台は葬儀場。そして葬祭プランナーの物語ですので、先に旅立っていった大切な人の思いを丁寧に見送るプロフェッショナルたちの姿が描かれていました。とにかく全員「いい人」なので、安心しながら観られました(←これ、結構大事なんです、私的には)。
スピリチュアルな要素も違和感なく取り込めていました
浜辺美波さん演じる美空さんには「死者と会話が出来る」という不思議な力を持っているのですが、この一見、荒唐無稽なファンタジー要素がこの映画内では全く浮くことなく絶妙にフィットしていました。
でも、なんとなくですが、こういう力を持っている人って世の中にいそうですし、大切な人を亡くした際に、何かしらこうした不思議な体験をした方もいるのではないかと思います。
私は決して熱心な信奉者ではないと思うのですが、かといって全てが科学で証明できるとも思えないので、多少なりとはこういう不思議な力はあるんじゃないかな、と思っています。本作では浜辺美波さんの演技も素晴らしかったですし、ほんのり淡い映像もまた美しかったです。
こんな完璧なプランナーいたらカッコ良すぎでしょ・笑
新人見習いプランナーを好演した浜辺美波さんが尊敬する先輩であり、完璧なプロフェッショナルプランナー漆原役にはヒット作連発の目黒蓮さん。いやー、メチャクチャカッコ良すぎでしょ、所作のすべてが整いすぎ(もちろんいい意味で)目黒さんファンが押し寄せていた理由が分かりました(笑)。
どこまでも徹底して依頼主たちに寄り添う漆原の姿勢に、プロとしての矜恃を感じました。基本、クールキャラなんですが、時に浜辺さんとのやりとりの中でクスッとさせるあたり、さすがでした。
オムニバス形式でさまざまな葬儀が展開
映画は主人公の美空がひょんなことから葬儀会社のインターンとして働くところからスタートします。そのきっかけとなったのが若い妊婦さんとご主人のストーリー。古川琴音さんと北村匠海さんが熱演。
まもなく生まれてくる赤ちゃんを待ち望んでいた矢先に不慮の事故・・・て。これまであまり観たことのない新しい北村さん像を見ることが出来ました。こういう「静」の演技もまた素晴らしかった。
そして先天的な病気のため若い娘を亡くした夫婦(志田未来さん、渡邊圭祐さん)のエピソード。志田さんの「頭では分かっているんです、でも・・・」が本当に辛かったです。娘のためを思った自分の決断が良かったことなのか・・・という後悔、痛いほど伝わってきて胸を打ちました。
次は母親を亡くした子どもたちのストーリー。実は別れた父親がいて・・・というサプライズ付き。このお話もまたよかった。兄は母を思い、妹は兄も母も、そして父のことも思っている。亡くなった母はもう一度父親に会いたいと願い、別れた父もまた片時も三人のことを忘れずに思っていた・・・というエピソード。父と子の邂逅・・・このテーマに弱いんです・涙。
ただ、とても素晴らしい演出だったのですが、費用が・・・汗。ま、野暮で下世話な話ですが、自分が子どもたちだったら、そんなに出せないかもな・・・とか、ちょっと思いましたね。ま、無粋ですが。
そして漆原、美空を取り巻く事実も明らかに・・・
映画の作りとして非常に脚本が見事だったのは、これら様々な家族のエピソードの合間に、漆原の過去(これも涙なしには見られません)についてのエピソードが挟まれていたり、最後の山場には美空の家族に関する「秘密」が描かれるように構成されていた点です(ここは名脚本家、岡田恵和さんの手腕でしょうか?)。
特に美空に関しては、美空が生まれた日に姉を不慮の事故で亡くすという、家族にとっては嬉しいことと、悔やんでも悔やみきれないほどの悲劇が同時にやってきた、ということが明らかになります。
こうして一家は決して人前で姉の話はしない、いや、なかったこと、として振舞うことになった、と映画では描かれていました。
もし、自分が美空の母だったら・・・これほど辛いことはない
ここで光ったのが美空の母親役の永作博美さんと、祖母役の夏木マリさんです。姑である夏木さんに、本当はどうしても言いたいことがあるにもかかわらず、その気持ちをずーっと封印しながら生き続ける。
一方の夏木さんもまた、永作さんに言わなければならないことがあるのに、その一言が言えずにずーっと過ごしている。だから、二人はどこかギクシャクしている、そんな空気感を見事に演じきっていました。
「頭では分かっているの、あれは事故だったって。でも、なんであの時・・・」この気持ち、痛いほど分かるような気がします。でも、相手も決して悪気があって手を放したわけではないように映画では表現されていました、そう、ここでもまた誰も悪くない、でも結果として悲劇に、という運命の皮肉が描かれていました。
別件ですが、永作さん、いくつになっても可愛らしさをキープしたまま、素敵に歳を重ねられていますね。夏木さんは・・・いつも通り、カッコ良かったです。
また会うときまでの「しばしの別れ」
大切な人を亡くしてしまう。そのとき、残された者としては、「あのとき、もっと何か出来たのではないか、あれをしてあげたかった・・・」と後悔が残るものだと思います。それより何より、「もう一度会いたい」と願うはず。
ただ、劇中で登場するのですが、「ほどなく、お別れです」という言葉にはいくつも解釈があり、「また会うときまでの「しばしの別れ」なのではないか」という話が出てきます。なんだかこの言葉を聞いて、少しだけ心が軽くなった気がしました。これは決して最後の別れではない、次に会う日までのお別れなのだ、と。
この作品を観て私はちょっとしばらく行けていない、祖母に会いに菩提寺を訪ねようかな、などと思いました。もしかしたらこの映画が呼んでくれたのかもしれません。何かと慌ただしい毎日の中、心が少し疲れたとき、この映画はちょっとオススメです。私にとって一生懸命生きよう、と思える一作でした。

