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訪問看護師になって気付いた大切なこと

手術室で7年、救急外来で2年勤務した後、私は訪問看護師になりました。
実際に働いてみて、一番大きく感じたことがあります。
それは、
「患者さんを治すためではなく、その人が望む生活を送れるよう支援すること」
が訪問看護の大きな役割だということです。
もちろん訪問看護へ転職する前から、そのような話は聞いていました。
そのため違和感はありませんでした。
しかし実際に自分が訪問へ行く立場になると、その難しさを強く感じるようになりました。
病院で求められていたこと
手術室ではスピードや先読みする能力が求められました。
救急外来ではトリアージ能力や異変を察知する能力が必要でした。
どちらも現在の訪問看護に活かせる大切な経験です。
急変対応や異常の早期発見は訪問看護でも重要な役割です。
しかし訪問看護には病院とは大きく違う部分がありました。
それは、
「すべての利用者さんが医療者の考えるケアを望んでいるわけではない」
ということです。

Aさんとの出会い


初めて訪問した時、指導者からこう言われていました。
「少し頑固な人だからね」
「気難しく感じるかもしれない」
ただ、その後にこうも言われました。
「でも根は優しい人だよ」
実際に会ったAさんは、まさに昭和の職人気質という印象でした。
うまく説明できませんが、休日に新聞を片手に競馬場へいそうな雰囲気。
言いたいことははっきり言う。
嫌なことは嫌と言う。
こちらの質問にも必要なことだけ答える。
ただ、病気の影響もあってか、どこか元気がないようにも見えました。
一人で訪問するようになってからは、毎回悩んでいました。
バイタルサインを測る。
体調確認をする。
必要なケアを行う。
そこまでは10分程度で終わります。
問題はその後でした。
残り20分。
何を話そう。
どう関わろう。
会話が続かない。
気まずい時間が流れる。
時には、
「今日はもう終わりでいいよ」
と言われたこともありました。
その時は、
「分かりました」
と帰っていましたが、正直かなり落ち込みました。
自分の関わり方が悪いのだろうか。
何か気に障ることを言ったのだろうか。
そんなことばかり考えていました。

リハビリという壁

Aさんには、
「外出して遊びに行きたい」
という目標がありました。
しかし一方で、
「リハビリはしたくない」
とも話していました。
本人の中では、
「家の中を歩いているから、それがリハビリになっている」
という考えがありました。
リハビリという言葉を出すだけで不機嫌になることもあります。
私は訪問看護師として、何とか外出できるようになってほしい。
少しでも身体機能を維持してほしい。
そう思っていました。
だからこそ、どうにかしたいとも考えていました。
ケアマネジャーとも相談し、デイサービスの利用を提案することになりました。
最近は将棋や麻雀ができるデイサービスもあります。
外出するきっかけになるかもしれない。
楽しみながら身体を動かせるかもしれない。
そんな期待もありました。
しかし結果は変わりませんでした。
パンフレットの中の「リハビリ」という文字を見ただけで拒否。
その時は正直、
「どうしたらいいんだろう」
と思いました。

変わるべきだったのは自分だった


でもある時、自分の考え方が少し変わりました。
もしかすると私は、Aさんのためと言いながら、自分が正しいと思うことを勧めていただけなのかもしれない。
そう思ったのです。
リハビリをするかどうかを決めるのはAさん本人です。
無理に変える必要はない。
必要になった時にいつでも提案できるよう準備しておけばいい。
そう考えるようになりました。
それからは関わり方も変わりました。
外出した話を聞けば、
「歩いて行けたんですね」
と一緒に喜ぶ。
少しでも活動できていたら褒める。
本人ができていないことではなく、できていることに目を向けるようにしました。
すると不思議なことに、私自身も訪問が苦ではなくなっていったのです。

人生を知ることが看護につながる


訪問看護を始めて感じたことがあります。
それは、病気を知る前に、その人の人生を知る必要があるということです。
なぜリハビリを嫌がるのか。
何を大切にして生きてきたのか。
どんな生活を望んでいるのか。
それらを知らずに、医療者としての正しさだけを伝えても届かないことがあります。
私は30歳になりましたが、まだまだ人生経験は多くありません。
それでも訪問看護を通して、多くの利用者さんの人生に触れさせてもらっています。
訪問看護とは、その人が大切にしてきたものを支える仕事なのかもしれません。
最近はそう考えるようになりました。

偏見を持たないこと


もう一つ大切だと感じていることがあります。
それは偏見を持たないことです。
この病気だからこういう人だろう。
生活保護だからこうだろう。
家族関係が悪いからこうだろう。
そう決めつけてしまうと、本当に必要なものが見えなくなります。
これは救急外来でも同じでした。
腹痛だからこれだろう。
胸痛だからこれだろう。
そう思い込むことで診断や治療が遅れてしまうことがあります。
訪問看護でも同じです。
先入観を持つことで、その人自身を見ることができなくなるかもしれません。
だからこそ柔軟な考え方を持ち続けたいと思っています。

最後に


訪問看護へ転職してまだ数か月。
分からないことばかりです。
それでも、利用者さんの人生に少しだけ触れさせてもらうたびに、訪問看護を選んで良かったと思います。
利用者さんが大切にしているものを知り、その人らしい生活を支える。
そんな看護師に少しずつ近づいていきたいと思っています。
まだまだ新人ですが、一歩ずつ成長していきたいと思います。

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