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AIに丸投げして、ただトークンを溶かした。手書き請求書300ページをOCRでExcel化した話

経費の現状把握を始めようとして、机の上の山を見て、手が止まりました。

積み上がっているのは、手書きの請求書。数えると300ページ近くあります。これを1枚ずつ人の目で読み、数字をExcelに打ち込んでいく。想像しただけで気が遠くなりました。

製造業で経費や原価に関わったことのある人なら、この感覚が分かると思います。やること自体は単純なのに、時間だけがごっそり溶けていく。しかも、許されないのがミスです。手書きの文字は読み取りづらく、桁を一つ打ち間違えれば、その後の集計も判断もすべて狂います。後ろにコストダウンの分析が控えているほど、たった一か所の転記ミスが重くのしかかります。


何が大変だったか(Before)

当時の状況は、こうでした。

  • 元データが手書きの請求書で、量は300ページ近く

  • 担当者が1枚ずつ開いて、Excelに手入力で転記

  • 作業時間はおよそ2日

  • 手書き特有の判読の難しさ、打ち間違い、集中力切れがついて回る

  • 入力が終わる頃には力尽きて、肝心の分析まで頭が回らない

コストダウンの第一歩は「現状把握」だと、いつも痛感します。経費がどこに、いくら、何のために出ているのか。それを正確に掴めないと、削減のしようも、投資のメリハリのつけようもありません。その入口で2日も消えていく。これは多くの現場で起きていることだと思います。

最初は、AIに丸投げして失敗した

最初に考えたのは、いちばん楽な方法でした。請求書の画像をそのままAIに渡して、「読み取って表にして」と頼んだのです。ところが、これがうまくいきませんでした。

期待したような精度が出ず、読み取り結果は使いものになりません。確認して、やり直して、また確認して——気づけば、成果は手元に残らないまま、AIの利用分(トークン)だけを消費していました。便利そうに見えて、「大量の実データを、いきなり丸ごと、正確に」処理させるのは、AIに丸投げしてよい仕事ではなかったのです。

だから、小さく試して、AIを育てた

そこで、進め方を変えました。一度に全部ではなく、まずは少量だけ渡してみる。出てきた結果を自分の目で確認し、間違えやすいところを見つけては、頼み方(プロンプトや渡し方)を調整する。これを何度も繰り返しました。

AIは、最初から完璧に答えてくれる魔法ではありません。こちらが結果を見て、「ここはこう読んでほしい」と都度教えていくと、少しずつ精度が上がっていきます。丸投げではなく、相棒を育てる感覚に近いです。何度かのやり取りを重ねるうちに、読み取りの品質が安定してきました。


品質が安定してから、アプリにした

読み取りが安定して初めて、私はこれを「道具」にまとめました。ボタンを押せば、請求書の画像から日付・金額・部品・数量・取引先といった項目を読み取り、Excelに自動で転記していく。そういう形のアプリにしたのです。

アプリにしたことで、もう一つ大きな変化がありました。少量で試していた頃に気にしていたAIの利用分を、いちいち心配せずに、まとまった量を処理できるようになったのです。そして何より、出来上がった道具は、私でなくても動かせます。手順を覚えた人なら誰でも、同じ品質で同じ結果を出せる。属人化した「私だけができる作業」ではなくなりました。

半日で終わった(After)

道具が出来てからは、2日かかっていた入力が、半日で終わるようになりました。

手作業なら2日、しかもミスに怯えながらの転記が、半日で、確認の負担もずっと軽くなって片づく。あの、机の上の山を前にしたときの重さを思うと、ずいぶん遠くまで来たものだと思います。


本当に効いたのは「時短」ではない

2日が半日になったのは、分かりやすい成果です。でも、現場で本当に効いたのは、その先でした。

入力に追われていた頃は、データが出来上がった時点で力尽きて、肝心の分析まで進めませんでした。それが、入力が半日で片づくようになって、ようやく「考える時間」が戻ってきたのです。

実際、整ったデータを眺めると、見えてくるものがありました。補助材料費の約7割が、3社の取引先に集中していたこと。品目を見ると、上位10部品でコストの8割を占めていたこと。つまり、どこを絞り込み、どの業者と交渉すればいいのか——コストダウンの「次の一手」が、はっきり見えたのです。手入力で力尽きていた頃には、たどり着けなかった場所でした。

速くなったというより、止まっていた仕事が前に進むようになった。そして、私一人の手作業ではなく、誰でも回せる仕組みになった。これが一番の価値だと思っています。

なお、こうして取り戻した時間や成果を、「金額」に翻訳して経営層に伝える話は、別の記事に書きました。あわせてどうぞ。

その自動化、年いくら得した? AI×DXの効果を経営層に伝える数字の作り方


こんな仕事にも応用できます

手書きが残っている仕事は、製造業に限らずあちこちにあります。

  • 現場日報の集計

  • 手書きの納品書・受領書のデータ化

  • 議事メモのテキスト化

  • 古い紙台帳のデジタル化

スキャンで取り込めるものなら、AIに読ませて整える道は十分にあります。ただし、今回いちばんの学びは、いきなりAIに丸投げしないことでした。小さく試して、結果を見て育てて、安定してから仕組みにする。この順番のほうが、結局は速くて確実だと感じています。

最後に

今回の自動化は、私が製造管理の立場で、実際の業務改善で使ったものです。最初の丸投げは失敗でしたが、その遠回りがあったからこそ、「どこをAIに任せ、どこを人が見て育てるか」の勘所が掴めました。一人で抱え込んで何日も溶かす前に、小さく試してみていい。そう思えるようになったことが、自分にとっての一番の変化でした。

製造業の現場で「手書き帳票の入力作業に追われている」「AIで読ませてみたが精度が出ない」というお悩みがあれば、コメントをください。解決に役立つ、もう少し深掘りした記事をお届けします。

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