数日がかりの在庫集計を数分に。パスワード付きの複数Excel(25ヶ月分)を1つにまとめた話
過去2年分の在庫データを、まとめて確認することになりました。
フォルダを開いて、手が止まりました。月別の古いExcelが25個。しかも、全部パスワード付き。1つずつ開いて、コピーして、貼り付けて——頭の中で数えただけで、どう見ても数日仕事です。
製造業で経理や製造管理を経験した人なら、この「地獄の入口」の感覚が分かるはずです。単純作業なのに、時間だけがごっそり溶ける。
しかも、ミスは許されません。後ろにデータ解析やシステム移行が控えていれば、たった1か所の貼り間違いが命取りになります。
何が大変だったか(Before)
在庫データが25ヶ月分(2024年2月〜2026年2月)
各ファイルにシートが2枚(中間品・原材料)
すべてパスワード付きの暗号化Excel(古い形式)
手作業で開いて貼り付けると、最低でも数日
ミスが一度混ざると、後続の解析やシステム移行の精度に直結
特にシステム移行を控えていると、過去データの整合性確保は致命的に重要です。「数日かかる」「ミスは許されない」。このプレッシャーを味わったことのある人は、少なくないと思います。
最初は、AIに全部投げて失敗した
最初に考えたのは、いちばん手っ取り早い方法でした。25ヶ月分のExcelを、そのままAIに渡して「集約して」と頼んだのです。ところが、これがうまくいきませんでした。
出てくるデータの精度が担保できない(数字のずれや抜けが起きる)
レスポンスが遅い
すぐにトークンの上限に当たり、25ヶ月分を一度に処理できない
便利そうに見えて、「大量の実データを、正確に、丸ごと処理する」のは、AIに直接やらせる仕事ではなかったのです。

だから、AIと一緒に「道具」を作った
そこで発想を変えました。AIに作業そのものをさせるのをやめて、AIには「Pythonのコードを一緒に作る相棒」になってもらったのです。処理はPythonに任せる。すると、さっきの問題がそのまま裏返りました。
出力の品質が安定する
トークンの上限と無関係に動く
Pythonの実行環境さえあれば、誰でも同じ結果を出せる
一度作れば、来年も再来年も、無料で何度でも回せる
ただし、コード作りも一発ではありませんでした。最初はうまく動かず、何度も試行錯誤しました。エラーが出るたびに原因を調べ、必要なライブラリを都度足しながら、少しずつ形にしていった——というのが正直なところです。「AIがあれば一瞬」ではなく、「AIと一緒なら、専業でなくてもたどり着ける」という感覚に近いです。
数分で終わった(After)
出来上がった道具がやることは、シンプルです。25個のファイルをまとめて開き、復号し、中間品と原材料のシートを年月順に並べ、1つのファイルに集約する。出来上がったのは、中間品25枚と原材料25枚、計50シートが時系列に整った1ファイルでした。
数日仕事だった集計が、コーヒーを1杯飲む間に終わりました。手作業なら数日、ミスに怯えながらの作業が、数分で、しかもミスなく終わる。あのとき肩の力が抜けた感覚は、今でもよく覚えています。

本当に効いたのは「時短」ではない
時間が数日から数分になったのは、分かりやすい成果です。でも、現場で本当に効いたのは、その先でした。
50シートが同じ形に揃ったことで、後続のデータ解析もシステム移行も、そのまま持っていける状態になりました。バラバラの25ファイルは「触るのが怖いデータ」でしたが、整った1ファイルは「次の工程に渡せるデータ」に変わったのです。
集計が速くなったというより、止まっていた仕事が前に進むようになった。これが一番の価値でした。
なお、根拠つきの単価データを整えた話は、システム移行の下準備として地続きです。あわせてどうぞ。
https://note.com/shin_ai_dx/n/n35cf7dad85a0
こんな仕事にも応用できます
このやり方は、在庫データに限りません。
月次の売上を、年間でまとめて集約する
部署ごとのExcelを、全社版に統合する
古い形式(XLS)を、最新形式に一括変換する
パスワード付きの社内ファイルを、定期的に集計する
「ファイルが大量にあって、開いて貼り付けるしかない」と感じる仕事は、ほぼすべて自動化の候補です。そして、いきなりAIに丸投げするより、AIと一緒に小さな道具を作るほうが、結局は速くて確実なことも多いです。
このツールを、自社のExcelに合わせて作り替えたい方へ
シート名も列の並びもバラバラな状態から1つにまとめるまでのコードを、全文公開しています。どこを直せば自分のファイル構成に合うのかまで書きました。使うだけなら、この記事の内容で足ります。
最後に
今回の自動化は、私が製造管理担当として、実際の業務改善で使ったものです。最初の丸投げは失敗しましたが、その遠回りがあったからこそ、「どこをAIに任せ、どこを道具にするか」の勘所が掴めました。一人で抱え込んで数日を溶かす前に、道具に任せられる部分は任せていい。そう思えるようになったことが、自分にとっての一番の変化でした。
製造業の現場で「Excelの集計に何日も取られている」「データ移行前の整理が進まない」というお悩みがあれば、コメントをください。解決に役立つ、もう少し深掘りした記事をお届けします。
