📘 その努力合っていますか?── 『イシューからはじめよ』
(安宅和人/英治出版)
■ カタカナ苦手な私が、この本を開いた理由
正直に言うと、この本はずっと避けていました。
“ロジカルシンキング”
“コンセプチュアルスキル”
“イシュー”
どれも仕事に必要なのは分かっている。
でも、カタカナが並んだだけで、脳が「もうよく分からない」と拒否反応(笑)
そんな私がこの本を手に取ったのは、部下の起案書を読んでいたときでした。
文章は丁寧なのに、読み終えると頭の中には
「…で? この後どうするの?」
という疑問だけが残る。
その回数が重なるほど、「もしかして私も同じところで止まっているのでは?」という不安が出てきた。
この起案書を通すということは、私も理解していなければならない。
そう考えた瞬間、この本を開く決心がついた。
それが、この本との出会いでした。
■ 努力が報われる仕事・報われない仕事の分かれ目
読み進めて最初に伝わってきたのは、とてもシンプルなこと。
“まず、取り組むテーマそのものを間違えないこと。”
ここがズレていると、どれだけ頑張っても成果につながらない。
たとえるなら──
テストに出ないページだけを一生懸命覚えている状態。
ノートを何冊まとめても、徹夜しても、点数は上がらない。
仕事でも同じで、
イシュー(本質のテーマ)を外した努力は、どれだけ頑張っても“何も変わらない疲れ方”になる。
著者はこれを「イシュー度」と呼ぶ。
そのテーマを解いたとき、どれだけ状況が動くのか。
ここが、価値のある仕事かどうかの基準になる。
■ 実例:人事の仕事は「イシュー外し」が一番危ない
私の仕事である「人事」に置き換えると、イシューを外すリスクは日常的に潜んでいる。
景色が変わらない“なんとなくの議題”
• 「研修をもっと充実させましょう」
• 「離職を減らしたいです」
• 「コミュニケーションを良くしましょう」
• 「新人教育の見直しをしましょう」
どれも耳ざわりは良いけれど、
方向性が曖昧で、答えを出しても現場はほとんど変わらない。
まさに、テストに出ないページの勉強。
景色が変わる“本質的なイシュー”
• 離職の最初のつまずきはどこ か?
• 新人の定着は“誰にどう教わるか”で変わっていないか?
• 店長の負荷の正体は何か? 何が積み上がっているのか?
• 採用ミスマッチは“面接で何を見抜けていないか”ではないか?
これらは、答えが出た瞬間に
採用・研修・定着・評価まで連動して変わるテーマ。
同じ1時間でも、
“何について考えるか”によって成果がまったく変わる理由はここにある。
■ 人は“本質より作業”を選んでしまう
心理学では、人は
「取りかかりやすい作業」を無意識に優先すると言われている。
• 手をつけやすいタスク
• 見えている情報
• 今すぐ終わりそうな作業
これらは、扱いやすいぶん選ばれやすい。
だからこそ、最初に“何を考えるか(イシュー)”を決めることが、迷いを減らす近道になる。
順番が整うだけで、
仕事の重たさが静かに変わっていく。
■ 選ぶ力が整うと、仕事は軽くなる
『イシューからはじめよ』は、
タイトルの印象とは違い、とても実務的な本だった。
• 何をやるか
• どこからやるか
• 何をやらないか
この3つが決まるだけで、
質の良い仕事の疲れに変わる。
「たくさん頑張る人」より、
“正しく選べる人”が成果を出す。
その当たり前を、わかりやすい形で思い出させてくれる一冊。
■ 思考の順番が整うと、仕事はラクになる
机の上の資料より、考え方を先に整える。
その順番だけで、毎日の仕事の見え方が少しだけ変わる。
読み終えたころには、経営層が語る“生産性”の意味が、以前より少しだけ立体的に見えてきた。
安宅和人さんの言葉には、
仕事の無駄をそぎ落とし、判断の芯を整えてくれる力があった。
良い本に出会えたことに、感謝しています。
…ただ、カタカナへの抵抗は、しばらく続きそうです(笑)
