【HYROXシリーズ】⑦徹底解剖HYROX王者のトレーニング
世界最速の男
HYROXという競技が世界的に広がる中で、ひときわ異彩を放つ選手がいる。
アレクサンダー・ロンチェヴィッチ(Alexander Rončević)。
2026年、彼はHYROX史上初の「51分台」という驚異的な世界記録を叩き出し、競技の常識を塗り替えた。
なぜ彼はここまで速いのか。 どんなトレーニングをしているのか。 そして、一般のHYROX競技者は彼から何を学べるのか。
この記事では、ロンチェヴィッチの実際のトレーニング内容を科学的に分解し、 「HYROXで速くなるための本質」を抽出していく。
1|ロンチェヴィッチの強さは“ハイブリッド能力の完成度”にある
HYROXは「ラン × 筋力 × 心拍管理 × 技術 × 戦略」が複合した競技だ。 多くの選手はどこか一つが弱点になるが、ロンチェヴィッチはすべてが高次元で揃っている。
その背景には、彼が行っている“競技特化型トレーニング”がある。
2|レースより重い負荷で鍛える「Strength Buffer」
ロンチェヴィッチの特徴的なアプローチがこれだ。
レース重量より重い負荷で練習する
Sled Push → レースより重い
Sled Pull → 重負荷で神経系を刺激
Wall Ball → 重めのボールで練習
サンドバッグ系 → レース重量以上
目的はシンプルで強力だ。
「レース当日の負荷を“軽く感じる”状態を作るため。」
これは競技者が見落としがちなポイントで、 「レース重量で練習する=本番と同じ負荷」ではなく、 本番を“楽に感じる”ための余力を作るという発想が重要になる。
3|週1回の“9種目だけの”ストレングスセッション
Men’s Healthや複数のインタビューで一致して紹介されている、 ロンチェヴィッチが絶対に欠かさない9種目がある。
9種目(週1回)
Trap Bar Deadlift
Bulgarian Split Squat
Back Squat
Box Jump
Split Squat
Bench Press
Shoulder Press
Bent-over Row
Chin-up
これらはHYROXのステーションに直結している。
下半身の爆発力 → Sled Push / Burpee Broad Jump
片脚の安定性 → ランの経済性向上
押す力 → SkiErg / Sled Push
引く力 → Sled Pull / Rowing
つまり、彼の筋トレは「筋肥大」ではなく、 競技動作の再現性を高めるための“機能的ストレングス”に完全特化している。
4|疲労下でステーションを練習する「レース再現コンディショニング」
ロンチェヴィッチのコーチであるTiago Lousaは、
「疲労した状態でステーションを練習することが最重要」と語っている。
例:レース再現セッション
1kmラン → Sled Push
1kmラン → Sled Pull
1kmラン → Burpee Broad Jump
1kmラン → Rowing
1kmラン → Farmer Carry
1kmラン → Wall Ball
これはHYROXの本質を突いている。
HYROXは“疲労下で技術を維持できるか”の競技である。
疲れた状態でフォームが崩れる選手は、 どれだけ筋力があってもタイムが伸びない。
ロンチェヴィッチはここを徹底的に鍛えている。
5|ランニングは専門コーチが担当し、閾値を徹底強化
2026年から彼は「ランニング専門コーチ」を導入している。
ランの中心は閾値(Threshold)
20〜30分の閾値走
1km × 4〜6のインターバル
60〜90分のロング走(ゾーン2〜3)
HYROXはランが50〜60%を占めるため、 ランが速い=HYROXが速いという構造は絶対に変わらない。
ロンチェヴィッチは「筋力が強いランナー」ではなく、 “ランが速いハイブリッドアスリート”なのだ。
6|競泳で培った規律とメンタルが土台になっている
彼は競泳出身で、毎日2回の水泳練習をこなしていた。
単調なトレーニングに耐える集中力
長時間の苦痛に耐える精神力
心拍管理能力
HYROXは「心拍の競技」でもあるため、 競泳で鍛えた能力がそのまま競技に活きている。
7|まとめ:ロンチェヴィッチのトレーニングは“HYROX専用の最適化”である
彼のトレーニングを一言でまとめるなら、
HYROXという競技の構造を理解し、 その構造に合わせて身体を最適化している。
具体的には:
レースより重い負荷で鍛える
週1の9種目ストレングスを欠かさない
疲労下でステーションを練習する
閾値走でランの土台を強化する
心拍管理能力を高める
競泳で培った規律がメンタルを支える
これらが組み合わさり、 世界最速のHYROXアスリートが誕生している。
8|この記事を読んだあなたへ:次にやるべきこと
いきなり世界王者と同じトレーニングをすることは不可能だが
ロンチェヴィッチのトレーニングは真似できる部分が多い。
レースより重い負荷で練習する
疲労下でステーションを行う
閾値走を週1〜2回入れる
9種目ストレングスを取り入れる
これらを体系的に組めば、 あなたのHYROXタイムは確実に伸びるだろう。
