病院のベッドの上で、IBD患者同士をつなぐ場所を作った話
クローン病歴20年以上の僕が、まだ入院中のベッドの上から、IBD患者さん同士をつなぐ「IBDオフ会掲示板」というプラットフォームを作りました。
なぜ、わざわざ入院中にやろうとしたのか
なぜ、「患者会」や「オフ会」にこだわるのか
なぜ、今このタイミングで公開しようとしているのか
その理由を、僕自身の入院体験とともにまとめます。
🏥 セクション1:入院が「楽しかった」時代のこと
まずは、少しだけ昔話をさせてください。
僕は17歳でクローン病を発症し、それから入退院を繰り返してきました。
その中でも特に強く記憶に残っているのが、2010年の4ヶ月入院です。
2010年、入社式で倒れてそのまま入院
2010年4月16日の朝、トイレで「赤黒い便」が出ました。
経験上、「これは入院コースだな」と、すぐにわかる色でした。でも当時はリーマンショック直後。
2009年には「内定取り消し」になった先輩を何人も見ていました。「何としても入社式に出て、雇用契約書にだけはサインしなければ」
そう思って、気力を振り絞って入社式に向かいました。「あと1時間、いや30分耐えれば終わるだろう」と思っていた時、
司会の人がこう言いました。「では、売場を見て回って、解散にしましょう」
ここで記憶が途切れます。
次に気づいたら医務室のベッドの上でした。当時の人事部長がタクシーで家まで送ってくれて、
そのタクシー代が1万円だったことを、今でもはっきり覚えています。
そのまま4ヶ月の入院生活に入りました。

「伝説の患者さん」と出会った病棟
早く職場に戻りたいと焦る僕の前に、「伝説の患者さん」が現れます。
名前は仮に、イソップさんとフナッシーさんとしておきます。
年齢は当時30歳前後。とにかく明るくて前向きで、
でもしょっちゅう看護師さんに怒られていました。笑
例えば、こんな感じです。
点滴ごと服の中に隠して、2人で車に乗って買い物に行ってしまう
外出許可を取って映画を観に行き、夜まで病院に帰ってこない
フナッシーさんは、術後に自販機のコーンスープを飲んでイレウスになる
…とにかく、やることなすことぶっ飛んでいる2人でした。
イソップさんは既婚者で、お子さんもいました。
「あ、クローン病でも、こんなふうに生きてる人がいるんだ」
当時の僕にとって、それは価値観がひっくり返る体験でした。
病棟は「修学旅行」だった
当時は、モンスターハンター(モンハン)が大流行していた時代。
入院しているのは20〜30代のIBD患者さんが中心。
4人部屋のカーテンは基本的に全開で、みんなでモンハン。
夜通ししゃべって、笑って、「ここ本当に病棟だよね?」という空気。
僕にとって、入院は楽しいものでした。

これが、今も僕が患者会を続けている原体験です。
今でも「入院って、患者さんと友達になって楽しむものだ」と本気で思っています。
今回の4ヶ月入院でも、新しく6人の友達ができました。
でも、それは「僕だから」できた部分も大きいと感じています。
🧩 セクション2:入院の風景は、すっかり変わってしまった
ここから少し、構造の話をします。
若いIBD患者が見えづらくなった
ここ10年くらいで、入院の風景は大きく変わりました。
病棟の患者さんの年齢層がぐっと上がった
20〜30代のIBD患者さんは、目に見えて減った
クローン病・潰瘍性大腸炎の有病者数はむしろ増えているのに、
入院してくる人は少なくなっている
2023年の全国調査では、潰瘍性大腸炎約31万6,900人、クローン病約9万5,700人と推計されています。
(参考リンク:
東邦大学ほかによる全国疫学調査プレスリリース
QLifeニュースによる解説記事)
クローン病は、厚生労働省が定める指定難病96
(参考リンク:難病情報センター「クローン病(指定難病96)」)
潰瘍性大腸炎は、厚生労働省が定める指定難病97
(参考リンク:難病情報センター「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」)
つまり、
患者数は増える
治療法の進歩で入院は短くなる
その結果、「入院先で出会うチャンス」はどんどん減っている
という状況です。
入院期間は「友達になるには短すぎる」
今では、IBDで入院しても2週間〜1ヶ月程度が一般的になりました。
僕自身も、
2025年9月24日〜10月11日の入院(2週間と3日)
2025年11月23日〜12月1日の入院(1週間と1日)を経験しましたが、
他の患者さんに話しかけるタイミングがないまま退院していきました。治療の進歩で入院が減るのは、本当に素晴らしい。
でもその一方で、「孤独なIBD患者さん」が増えているのではないか。
病棟でそう強く感じました。

患者会も、高齢化とコロナで止まった
入院だけではありません。患者会の現場も変わっています。
僕が代表をしている「みえIBD」も、2019年を最後に活動が止まったままです。
三重県は縦に長く、どこを開催地にしても誰かが遠くなります。
僕は車も免許も持っていないので、会場に行くこと自体がハードルです。
今、患者会の運営に関わっているのは、実質僕1人。
患者会を1回開くだけでも、こんな準備が必要です。
会場の手配
日程調整
告知・集客
当日の運営・気配り
事後フォロー
しかも患者会全体が高齢化していて、
みえIBDに来てくれていた方も、60歳以上の方が多い
若い患者さんが勇気を出して参加してくれても、
同年代と出会えないことが多い
全国の患者会のネットワークである
NPO法人IBDネットワークでも、
地方患者会の活動停止がコロナ以降相次いでいる現実があります。
💻 セクション3:病院のベッドの上で、
「IBDオフ会掲示板」を作り始めた
ここから、今回のサービスの話に入ります。
「ニーズはある。でも、場がない」
では、本当に患者会のニーズはなくなったのでしょうか?
僕はそうは思っていません。
LINEオープンチャットでは、888人以上のIBD患者さんが集まる部屋もあります。
その中では、「同年代の仲間と話したい」「気軽に集まれる場所が欲しい」という声が何度も出ていました。
「ニーズがない」のではなく、
「今の生活に合う形の場がない」だけなんじゃないか。
そう考えるようになりました。
「患者さんが気軽に集まれる場所を作りたい」が、ずっと頭から離れなかった
昔からずっと、「患者さんが気軽に集まれる場所を作りたい」と思っていました。
Twitter時代には、何度かオフ会も主催しました。
でも、準備〜当日運営までの負担が大きく、頻繁にはできませんでした。
そんな中、ふとこう思ったんです。
「今はAIがある。
コンピュータ専門学校を出て、今はシステム部門にもいる。
コードは書けなくても、設計はわかる。
これ、AIに手伝ってもらったら、いけるんじゃね?」

3月17日、入院中に「IBDオフ会掲示板」を作り始めた
僕の入院期間は、2025年12月16日〜2026年4月4日(予定)です。
その真ん中あたりの2026年3月17日、病院のベッドの上で
「IBDオフ会掲示板」を作り始めました。この記事を書いているのは3月27日。
つまり10日間で、MVP(最低限動く形)まで到達したことになります。
この10日間、頭の中にあったのはこんなキーワードです。
できるだけシンプルに
特別なスキルが必要ない、誰でも使えるように
僕1人でも運用できる仕組みに
「オフ会をやりたい人」を全力で支援する
セキュリティとプライバシーを守る
IBD患者さんが安心して使える
使ってる物ははとてもシンプルです。
Notion
Googleフォーム
Googleスプレッドシート
Google Apps Script(GAS)
この4つをつないで、
主催者申請
イベントページ自動生成
予約フォームの自動複製
申し込み管理
主催者・参加者へのメール通知
をほぼ全自動で回せるようにしました。
(技術的な詳細は、別の記事でまとめています)
🧰 セクション4:IBDオフ会掲示板で、何ができるのか
ここからは、少し真面目に「サービスの中身」を紹介します。
主催者にとっての体験:フォーム1つからオフ会が立ち上がる
IBDオフ会掲示板は、主催者の負担をできるだけ減らすことを第一に設計しています。
主催者申請フォームに必要事項を入力して送信
IBDオフ会掲示板のページに戻ると
IBDオフ会掲示板にイベントページが自動生成
予約用のGoogleフォームが自動で複製され、イベント専用URLが発行
あとは、予約が入るとメールで参加者の情報が届く
主催者が手作業でやるのは、
イベントのタイトルと説明文を書く
日時と形式(オンラインorオフライン)を決める
定員を設定する
この3つがほぼ全てです。
参加者にとっての体験:安心材料を事前に確認できる
参加者側は、IBDオフ会掲示板のイベント一覧ページから
興味のあるオフ会を選びます。
「オンライン(Zoom)」か「オフライン(現地)」かがひと目でわかる
オフラインの場合は、
会場のトイレ状況(ウォシュレットの有無など)
会場となるお店のURL・最寄駅
小さい子供連れでも参加可能かどうか
参加者の年代(10代/20代/30代/40代以上 など)の目安
主催者からのメッセージ(「こんな人に来てほしい」など)
を事前に確認したうえで、予約フォームから申し込めるようにしています。
「駅から近いか」
「トイレはオストメイト対応なのか」
「同年代がいそうか」
IBD患者さんが気にするポイントを、最初から見てわかる設計にしました。
IBD特化の設計ポイント
このプラットフォームは、「IBD特化」であることに意味があります。
トイレにウォシュレットがあるか、オストメイト対応かわかる
参加者が事前に伝えておきたい配慮事項(トイレの近くに座りたい、長時間は座れない など)を書ける
年代の目安を共有することで、「行ってみたら全員親世代だった……」を減らす
オンラインイベント(Zoom)も登録できるので、地方在住でも参加しやすい
そして何より、
パソコンやスマホに詳しくない患者会リーダーでも、
主催フォームさえ書けばオフ会が立ち上がる
ように設計しています。

安心して使ってもらうためのルールも整備
医療系・患者会系のサービスなので、安心・安全のためのドキュメントも整えました。
免責事項(利用規約)
利用ガイドライン(主催者・参加者・全利用者向け)
18歳未満の利用に関するルール
個人情報の取り扱い方針
などを、一つひとつ文章としてまとめています。
※4/1以降に
利用規約(Notionページ)のリンク
利用ガイドラインのリンク
IBDオフ会掲示板トップページのリンク
を貼る予定です。(3/27 記事公開時点では準備中)
🌸 セクション5:退院3日前に公開する理由と、最初の5人へのお願い
長かった入院も、2026年4月4日に退院予定です。
ギリギリ、誕生日の1日前。笑
僕はこのサービスを、退院の3日前である4月1日に公開しようと決めました。
なぜ、4月1日なのか?
4月は「出会いと別れの季節」です。
卒業式
入学式
異動
新しい環境
コロナ以降、止まったままの患者会も多い中で、
「ここからまた新しい流れが始まるといいな」という願いを込めています。
入院中に感じたのは、
「治療は良くなった。入院も短くなった。
でも、あの頃みたいに、病棟で自然に友達が増えていくことは減ってしまった。」
という寂しさでした。
伝説のエピソードを、次の世代へ
病歴の長い患者さんには、たくさんの「伝説のエピソード」があります。
入院中にやらかした話
それでも笑って生きてきた話
仕事・家族・恋愛との付き合い方
そういう話が、若い患者さんの不安を少し軽くしてくれると、僕は信じています。
2010年の入社式で倒れて4ヶ月入院したあの時、
僕は先輩患者さんたちの「たくましく生きる姿」に本当に救われました。ただ病気の情報を知るだけでなく、
「こうやって生きてきた人が目の前にいる」という事実が、何よりの安心材料でした。だからこそ、ベテランの患者さんと若い患者さんが
「会って」「話して」「笑い合える」場所を、もう一度増やしたい。
そのための一つのピースとして、この「IBDオフ会掲示板」を置きたいと思っています。

🎯 最初の主催者5名を、大募集します
というわけで、最後に正直なお願いです。
最初の主催者5名を、大募集します。笑
僕は4月4日に退院予定なので、しばらくリアルイベントへの参加は難しいと思います。
それでも、
オンラインイベント(Zoom)の企画相談(Zoomの使い方など)
オフ会のテーマ決めの壁打ち
告知文・イベントページ文面の添削
Zoomの設定やオンラインイベントのトラブル対応のサポート
など、裏側からできることは全力でお手伝いします。
📩 さいごに
この記事を読んで、
「自分の地域でもIBDオフ会を開いてみたい」
「オンラインで雑談会をやってみたい」
「最初の5人の中に入ってもいいかな」
と思ってくれた方がいたら、ぜひ気軽に連絡をください。
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どちらからでも大丈夫です。
病院のベッドの上で作り始めた、小さなプラットフォームです。
でも、ここからまた、患者さん同士の「楽しい修学旅行みたいな時間」が
少しずつ増えていったらいいなと思っています。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
