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髭は恋をする。【毎週ショートショートnote】

最近、駅前に立つ髭の男をよく見かける。

その男は少し微笑みながら一輪の花を持っている。

通勤の人たちはみんなそれを見て見ぬふりで通り過ぎている。

彼は誰かに恋をしているのではないか、もしくは誰かを待っているのではないか、通り過ぎる人も一様に皆そう思っているようであった。

あるとき、僕は気分が悪くなり3日間ほど仕事を休んだ。

髭を剃らず、外にも出なかった。

髭はボーボーに伸びているわけではないけれど、今までの自分の中では伸びている方ではあった。

そのとき、心の中で声が響いた。

女性の声で、とても魅力的な声だった。

しかし、髭を剃ると聞こえなくなってしまった。

もう一度、僕は髭を伸ばした。

すると、また声が聞こえてきた。

そして、僕もスーツを着て一輪の花を買い、それを携えて駅に向かった。

駅に着くと、髭を伝ってあの女性の声が響いてきた。

とても心地よい声だ。

駅前はなぜかその声が一番よく聞こえる場所であった。

いつも髭は恋をする。不思議な声に。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※札幌は桜が咲いてきましたが、本日はあいにくの雨です。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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