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手加減無用鍋【毎週ショートショートnote】裏お題

肉や魚や野菜の香りが湯気とともに漂っていた。親子二人がぐらぐらと煮えたぎっている鍋を見ている。

「あんた、フタ取ってくれる?」

「うん」と言って子供は素手でフタをつかんだ。

「うあっちゃー」子供ははつかんだ土鍋のフタを放り投げ、フタはベランダの窓をぶち破っていった。

「あんた、何をやってるんだい!」

「おお、手加減無用鍋だろ!」

「そういうことじゃないんだよ。見てな。手加減無用鍋っていうのはこうやるんだ」

そう言って、母はぐらぐらと煮えたぎった鍋に手を突っ込み、素手で鶏肉をつかんだ。

つかんだ鶏肉を取り皿に置き、それを子供に渡した。

「手加減無用鍋っていうのはね、こういうことを言うんだよ。お前にはまだ無理だろ」

「やっぱ母ちゃんはすごいや」

「あんたももっと修行しな」

「うん!」

「ほら、熱いうちに食べな。『鍋は熱いうちに食べろ』って言うことわざもあるくらいだからね」

「うん、わかった。母ちゃんはいろんなこと知っててすごいね」

「だろ~」


(410字)

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※今年初ショートショート執筆でした。


*この記事は、以下の企画に参加しております。

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