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月見バーバー【毎週ショートショートnote】

満月の光が白く庭を照らしている。

草や花や、空気さえも、ぼんやりと白く、何かをまとっているようであった。

虫の音が、リーンリーンと、ずっと響いている。

ときおり、遠くでキジバトが鳴いている。

穏やかな風が夜の香りを運んできた。

そんな風があたる縁側の一番良い場所に二人は座っていた。

「いい風ね」

「そうだね」

「あなた、白い髪が増えたわね」風でなびいた男の髪を見て、女が言った。

「もう60歳だからね。50歳まで、白髪は全然なかったんだけどね」

「それはあなただけよ。他の人はみんな白くなっているし、私も真っ白よ」

「そうだね。白いのはいいんだけど髪が伸びてきたよ」

「切ってあげるわよ、今。満月の下で散髪なんてロマンチックじゃない」

「そうだね。切ってもらおう。『月見バーバー』だね」

「ばあばの月見バーバーね」

「うまいね。我々も孫がいるからね」

「そうね。幸せよ」

「そうだね」

その瞬間、辺りが暗くなったので、月を見上げると少し雲がかかっていた。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※純文エモショートショートにしました。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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