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suzukake_neiro8
月見バーバー【毎週ショートショートnote】
満月の光が白く庭を照らしている。
草や花や、空気さえも、ぼんやりと白く、何かをまとっているようであった。
虫の音が、リーンリーンと、ずっと響いている。
ときおり、遠くでキジバトが鳴いている。
穏やかな風が夜の香りを運んできた。
そんな風があたる縁側の一番良い場所に二人は座っていた。
「いい風ね」
「そうだね」
「あなた、白い髪が増えたわね」風でなびいた男の髪を見て、女が言った。
「もう60歳だからね。50歳まで、白髪は全然なかったんだけどね」
「それはあなただけよ。他の人はみんな白くなっているし、私も真っ白よ」
「そうだね。白いのはいいんだけど髪が伸びてきたよ」
「切ってあげるわよ、今。満月の下で散髪なんてロマンチックじゃない」
「そうだね。切ってもらおう。『月見バーバー』だね」
「ばあばの月見バーバーね」
「うまいね。我々も孫がいるからね」
「そうね。幸せよ」
「そうだね」
その瞬間、辺りが暗くなったので、月を見上げると少し雲がかかっていた。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※純文エモショートショートにしました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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