この世界は曇り空【雨乞い難民(毎週ショートショートnote)】
地面を滑るようにツバメが僕の目の前まで飛んでくると、ひゅっと向きを変えて、また地面を滑って遠ざかっていった。ツバメはそれを繰り返していた。時刻表通りに来ないバスにイライラしながら、バス停のベンチに座ってツバメの行ったり来たりを眺めていると、老齢の男性がやってきて声をかけてきた。「雨、降りそうですね」その男性は雲で覆われた空を見ながら、こちらの顔も見ないでその男性は隣に座ってきた。「そうですね、もう商売あがったりですよ」と僕が言った。「何の商売なんですか?」「ええ、雨乞い専門の祈祷師です」「おたくもですか。私もそうなんですよ」とその男性が言った。「同業者でしたか」と僕が言ったとき、あたりが暗くなった。
地面を滑るようにツバメが僕の目の前まで飛んでくると、ひゅっと向きを変えて、また地面を滑って遠ざかっていった。ツバメはそれを繰り返していた。僕はなんだか既視感を覚えた。この光景見たことあるぞと。ちょっと疲れてるのかなと思っていると、老齢の男性がやってきて声をかけてきた。「雨、降りそうですね」その男性は雲で覆われた空を見ながら、こちらの顔も見ないでその男性は隣に座ってきた。完全に既視感だ。いよいよやばいなと思ったが、僕は答えた。「そうですね、もう商売あがったりですよ」「何の商売なんですか?」「ええ、雨乞い専門の祈祷師です」「おたくもですか。私もそうなんですよ」とその男性が言った。「同業者でしたか」と僕が言ったとき、また、あたりが暗くなった。
地面を滑るようにツバメが僕の目の前まで飛んでくると、ひゅっと向きを変えて、また地面を滑って遠ざかっていった。ツバメはそれを繰り返していた。それを見て、僕は確信した。これはループしているなと。次に老齢の男性が来て話しかけてくるだろうと思い、その方向を見ると、やはり男性が歩いてくるではないか。「雨、降りそうですね」その男性は雲で覆われた空を見ながら、こちらの顔も見ないでその男性は隣に座ってきた。「『雨乞い難民』なんです」と僕は今までと違うことを言ってみた。「おたくもですか。私もそうなんですよ」とその男性が言った。「ど、ど、同業者?」と僕が言ったとき、また、あたりが暗くなった。
そんな感じのやりとりが100回くらい続き、老齢の男性の顔も行ったり来たりするツバメも完全に見飽きてきた。僕はこのループからそろそろ抜け出さなければと思い始めた。
とは言え何をどうすれば抜け出せるのかがまったく見当もつかない。
ただ、見当がつかないながらも、ここから抜け出すためには何か違うことをやらなければと思った。老齢の男性をくすぐったり、ビンタしてみたり、最後には老齢の男性に抱きついてキスしてみたりもしたが、全然ダメだった。ほかには、ツバメをつかまえようと追いかけたりしたが、ツバメはつかまえられるものじゃないとわかったり、そんなことをしているうちに、ループが10000回を超えた。そして、僕はこの状況に耐えられなくなり、空に向かって叫んだ。
「もう勘弁してくれ!」
すると、空はまるでモーゼの十戒の海のように、ざざざっと雲が割れていった。割れた空の間には大きく『ログアウト』と書かれており、僕が手を伸ばしてみると、なぜかその文字に触ることができた。
僕は目が覚めた。
頭にセットされていたVRデバイスを外すと、状況がわかった。
僕はVR世界に入っていたのだ。
「大丈夫ですか?」
隣のブースからどこかで見たことのある男性が心配そうな顔で声をかけてきた。
「大丈夫じゃないですよ。ループしちゃって大変でしたよ」
「おたくもですか。私もそうなんですよ」とその男性が言った。
「あなたもループしてたんですね」
僕がそう言うと、また、あたりが暗くなっていった。
(1531字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※アンソロ企画のため少し練って書いたら、ショートショートにしては長くなってしまったかもです。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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