新人に送った地獄の長文――全文イキママ公開「これが編集者の仕事だ!」【失敗編集者/雇われ編プロ地獄編】#10
かつて、雇われ編プロ時代。
入社してくる新人に向けて、
「編集者とは何か」を説いた長文を送っていた。
いま読み返すと――
だいぶ狂っている。
完全に〝地獄の歩き方〟だ。
というわけで今回は、
ゴールデンウィーク特別編。
当時のテキストを、一切修正せず
全文そのまま公開します。
※15年以上前の文章です
※「ハラスメントだ!」って言わないでね。
それではどうぞ――。
教科書が教えてくれない
編集者の真実
★出版社と編集プロダクションの違い★
まず、多くの人が勘違いしていることが〝編プロ〟=出版社だと思っている点。
出版社は雑誌や書籍を発売する〝版元〟で、編プロは〝版元〟から仕事をもらって実際に本を作る現場のこと。
要するに、東京電力って大元があって、一見するとすべての仕事は東京電力でやっているように見えるけれど、実際の現場はそのほかの会社が行なっているとか。
もっとわかりやすく言うならば、テレビ局と映像制作会社の関係です。
放映はテレビ局がおこない、実際の番組は映像制作会社が作っている。こんな感じ。
雑誌や書籍の奥付部分に、「制作」や「企画」、「編集」とか入っているところが編集プロダクションです。
ただ、出版社も自分のところの編集部で作る媒体もあったりします。
その出版社の顔となるような雑誌なんかはだいたい出版社の編集部で作っていて、そこからフリーの編集やライター、デザイナーなんかに発注している感じですね。
なので、編プロが出版社から仕事をもらうには、
1、出版社からのオファーがある(※編プロによって得意ジャンルが違うので、そういうジャンルが得意な編プロにオファーがくる)。
2、編プロが出版社に企画書を持ち込んで営業して雑誌や書籍を作るGOをもらう。
の2パターンが挙げられます。
ですので、我々編プロにとってみれば、出版社は親会社であり、クライアント様。
なので、どんな雑誌を作るのにも、出版社の専属編集がつき、その人と雑誌の方向性や中身、表紙の打ち合わせをして、その人と戦いならが共に雑誌を作っていく感じになります。
担当編集によっては頭のかたいジジイがいたり、出版社の営業部の言いなり編集なんかもいたりして、こちらが思い描いた雑誌作りができない場合があり、そのあたりにストレスを感じたり、ときには喧嘩っぽくなることもあります。
ただし、いずれにせよ、出版社が一番偉いので、あちらがどんなに無理なことを言おうが、ぜんぜんダメな雑誌作りを提案しようが、最終的にはこちらが折れる形となります。
まっ、伊勢は自分のやりたい本に関してはギリギリまで戦いますが……。
★雑誌が一冊できるまで★
ここからは雑誌がどのように作られていくか、どんな人たちとのかかわりがあるかを順を追って説明していきます。ちなみにこれは編プロを中心とした流れです。
1、まずは出版社から雑誌のオファーがあるか、こちらから企画書を持っていって企画が通ることが重要。これを決めるまでにも何度も企画書を練り直したり、表紙のイメージやページのイメージを作ったりなどの作業があります。
2、担当してくれる出版社の編集者が決まり、その方と打ち合わせを重ねる。雑誌のコンセプト、表紙のイメージ、どんな内容や企画を盛り込むのかなど。
3、その打ち合わせが終わったら、次は編プロ内部での会議となります。ここではより具体的な中身の企画案などを話し合います。その雑誌を担当する人を編集長として、その下に誰と誰がついてサポートするかなども決めます。弊社の場合は、編集長ができる人間が伊勢と○○なので、その2人のどちらがその雑誌を担当するかを話し合います。そして、基本的に弊社の場合は、第一編集部と第二編集部にわかれているので、それぞれの編集長の下についている社員が必然的にその雑誌のサポート編集となります。ただしこの形式は、現状は瓦解しており、伊勢&○○プラスフリー編集者の方々と共にそれぞれが雑誌をつくっていくという流れになっています。なので、まずは彼らのサポート役ということになります。
4、編集長がその雑誌の〝台割(だいわり)〟を作成します。台割とは、本全体の構成案、設計図のことです。どこからどのページにはどんな企画が入って、どこのページに広告が入って、など、この台割があれば雑誌の全体が見渡せる地図のようなものだと思ってください。まずはコレありきです。
5、できた台割を版元の編集さんに提出します。ここで編集さんからダメだしを受けたり、ここには違う企画を入れてほしいなどの打ち合わせがまたあります。そのほかにも、広告本数が雑誌によって違ったり、広告代理店からこの広告は必ずここに入れてほしいなどの指定もあったりするので、そのあたりも微調整して完成に近づけていきます。
6、このヤリトリで台割が完成したら、いよいよ雑誌作りです。まず、この雑誌を作るうえで必要な人材を確保します。実際にページを作っていくデザイナー、ライティングが必要なところを書いてくれるライター、企画によってイラストを使うものがあるならばイラストレーター、漫画が必要ならば漫画家、撮影が必要ならばモデルやスタジオ、カメラマン、監修者が必要ならば監修者、など、ここからは作る雑誌によって必要な人材に差がありますので、その都度決めていきます。また、デザイナーやライターにも得意ジャンルがあったりしますので、それらの特質を見極めて、この方ならばこの企画、という風に振り分けもしていきます。要は映画でいうプロデューサー業ということですね。
それらの方々に連絡をとり、実際に作業してもらう期間はいつくらいからいつくらいになるのか、最終的な締め切りはいつになるかなどをお話します。
7、このあたりとほぼ同時でおこなうのが印刷所とのヤリトリです。印刷所もいくつかあり、出版社によってつながりが深い印刷所があったりしますので、基本的にどこの印刷所になるかは版元が決定します。雑誌によっても違うので印刷所が決定すると、その印刷所の担当営業さんと話すことになります。印刷所とはだいたい電話やメールやりとりです。たまに直接編プロに来てくれて打ち合わせする場合もあります。
8、印刷所から〝進行表〟をもらう。要するにスケジュール表です。いつまでに表紙や本文を入稿するのか、いつまでに校了するのかといった、全体的な流れがわかります。これに合わせてスケジュールを組んでいきます。要するに締め切りはいつだ! ということです。
9、ここからは実際に編集者が作業をしていきます。
とあるページを作る簡単な流れを書きます。
金運アップのお部屋風水に関する企画ページ
A、まずは金運風水に詳しい監修者を探してオファーをかけます。OKならば会いにいってやりたいことを打ち合わせし、インタビューをしながらページの内容を決めていきます。ここで編集者が自分でライティングするならば一人でOKですが、ライターに書いてもらうならばライターと共にいって打ち合わせします。
B、お部屋風水なので、こうすると運気があがる!というような部屋のイラストを描いてもらいます。イラストレーターさんと打ち合わせしてどんなイラストがどのくらいのサイズで何点ほしいのか、など。
C、ライターからの原稿があがってきたら一度校正します。内容はOKか、誤字脱字はないか、本文の長さはOKかなどをチェックします。内容がダメならやり直しさせることもあります。編集者が自分で書く場合はここのCは省略できます。
D、イラストレーターからもイラストがあがってきたら、原稿、イラスト、ラフ、ページ見本などをセットにしてデザイナーに発注します。この際に必要な素材は、企画によって変わります。写真が必要なものは写真を用意したり。
ちなみに〝ラフ〟とは、ページの中のどこにイラストを置くか、本文はどこに置くかなどを手書きで書く設計図のようなものです。それを参考にデザイナーが実際に作業をしていきます。デザイナーによってはラフを無視する人もいれば、ラフ通りにしか組めない人もいますので、そのあたりも考えながら発注します。ページ見本というのは、デザイン全体の雰囲気を示す見本となるものです。たとえば、有名雑誌のページをスキャンして、このテイストで作ってほしいということを示せれば、デザイナーはその雰囲気に似せてくれたりするのです。その際にデザイナーが参考にするのは、フォントの使い方や飾りの仕方、本文の行間や字間など、そのあたりを参考に組んでくれます。なので、雑誌が下世話な本だったとしても、ファッション誌みたいな感じの作りにしたいと編集者が思えば、そういう見本をつければ良いのです。
E、デザイナーからのあがりを待つ。ここがひとまずの最終段階です。印刷所の締め切りに間に合うようにデザイナーを管理します。ここでウカウカしていると、デザイナーが締め切りを守ってくれなかったり、ときには飛んでしまったりもします。そのあたりをうまいことコントロールしながら、締め切りに間に合うようにデザインをアップしていただきます。
F、デザイナーからアップされたデザインを校正する。ここではデザイン全体のイメージが大丈夫か、いれるべき素材はすべて入っているか、文字のいれわすれはないか、文字に誤字脱字はないか、などです。それがダメなら修正をしてもらいます。
G、デザインがOKだったら、実際の入稿データをもらいます。デザイナーの多くはイラストレーターというソフトかインデザインというソフトを使って作っています。イラレ、インデザと略します。
H、あがった入稿データを、印刷機ですり出します。このすり出したものを〝カンプ〟と呼びます。カンプは、印刷所に入稿するときに必要なもので、このように作ってありますという見本になります。そのカンプと共に、入稿データをDVDに焼いて、封筒に入れます。
その封筒を弊社の場合は、玄関の入り口にある棚に置いておきます。そして、印刷所に電話をかけて引き取りにきてもらいます。
この際に、印刷所によっては営業の方が引き取りにきてくれる場合と、バイク便などが来る場合があります。
また、こちらが締め切りに間に合わないなどのハプニングが生じると、こちらからバイク便を手配して届けてもらったり、場合によっては直接印刷所に持ち込むこともあります。
I、この〝入稿〟作業を、台割のすべてのページをいれるまで繰り返します。だいたい一週間くらいで全ページを入稿します。タイトなときは一日で全ページとかもあります。
一度すべてのページが突っ込み終われば、ひとまず一安心です。
J、そこから2、3日で、入稿したページの〝色校〟が〝出稿〟されます。色校とは、印刷所にある印刷機で実際の色に近い形で出してくれる、校正紙になります。これを元に我々や版元が色校に赤字を入れていきます。誤字脱字チェックや写真の色のチェックなどです。修正がある場合は、印刷所が赤字通りにやってくれるところもありますが、こちらですべて直さなければならないときもあります。この赤字を直すか直さないかは、出版社と印刷所との間の契約で、お金をより支払っている場合は直してくれます。
また、ここで版元から大直しをくらったりする可能性もあります。そうなると面倒ですがおお直しをしなければなりません。それを防ぐためにも、入稿前にPDFチェックを先にしてもらう場合もあります。ときにはまったく色校自体を校正せず、何の赤字も入れてこない編集さんもいたりします。
K、色校の校正。版元からの赤字を転記したり、編集部の全員が色校に赤字を入れていきます。
L、すべてがオワリ、修正データなども作ったら、それらを色校と一緒に印刷所に戻します。これを〝校了〟または〝責了〟と言います。
M、これが終われば一応すべてオワリです。ですが、赤字によっては印刷所から質問があったり、これは直せないなどの電話があったりします。ですので、実際に印刷所が印刷を開始するまでは気が抜けません。
N、あとは見本誌が送られてくるのを待つだけです。あがってきた雑誌はあまり見たくありません。なぜなら、結構そのときにミスを見つけてしまい後悔するからです。
O、見本誌が来たら、関係者に発送いたします。もしもこれが月刊誌の場合は、校了するころにはすでに次のAからが発生しています。週刊誌はやったことないのでわかりませんが、それ以上にタイトなのは明白なので、想像したくもありません。
P、見本誌が来たら、どこかにためておいた校正紙などを破棄します。見本誌があがるまでは何が起こるかわからないので、校正紙は絶対に捨ててはいけません。
Q、これは一冊の流れですが、こういった本を同時に何冊も進行したりするので、常に気が抜けない状態が続くことがほとんどです。
★編集プロダクションのなんとなくな一日の流れ★
1、出社は遅いところが多いです。締めきり前になると泊まり込みが多かったりするので、もうメチャクチャです。ただし、弊社の場合、11時出社が一応の決まりです。編集長以外はだいたいこの時間を守って出社してください。
2、新人はまずは掃除やゴミだしなどをしていると思われます。
3、ここからは日によってぜんぜん動きが違います。いくつかパターンを。
A、実際に雑誌のページをつくる作業。ライティングしたり素材を集めたり。これは基本は会社の自分のデスクでおこないます。ライターさんからあがってきた原稿をチェックしたり、アップされたデザインをチェックしたり、色々な電話に応対したり。
B、取材や撮影、打ち合わせがある場合はその都度、出ていきます。取材によっては丸一日いないこともあります。また、打ち合わせが続く場合は、一日中いろいろな打ち合わせをしていることもあります。
C、入稿作業や出稿物の校正、印刷所への入稿など。これはだいたい〝朝一デッド〟や〝夕方までには入稿〟など、印刷所が動き出す時間と終わる時間をめどに、おこないます。締め切りが迫っているときなどは、印刷所からかなりせっつかれたりもします。
D、出版社やフリーライター、デザイナー、カメラマンなどとの打ち合わせ兼飲み会。これを伊勢は〝飲み合わせ〟と勝手に呼んでいます。なんだかんだでコネクションが大事な業界ですので、これはかなり重要なものとなっています。ただし、これは編集長や会社の代表などが中心におこないます。
4、基本的には終電まではほぼみんな何かしら作業しています。けれども、最初のうちは無理は禁物。あまりに〝やる気〟が出すぎてがんばりすぎても、のちのちろくなことが起こりません。なので、本当に厳しい時は編集長が「今日、泊まってもらえるかな?」などの相談をするので、基本仕事がなさそうなときは早めに帰宅することをオススメします。ちなみに、朝一が締め切りの場合は、そのまま朝まで作業を続け、そのまま寝ないで翌日に引き続き作業をすることもあります。
※4は、今はほぼない風習です。
5、応接間で仮眠。集中力を欠いたとき、朝一入稿が終わったあと、など、各自それぞれが仮眠します。女子社員は近くの銭湯にお風呂に入りにいったりもします。男子はほとんど行きませんが、泊まりが続くと銭湯を利用します。もしくは近くの漫画喫茶やビデオBOXなどを利用することもあります。この際、領収書を切ってきてもらえれば社長に請求してもOKです。
※5も、今はほぼない風習です。
6、土日は基本休みですが、印刷所が土曜日締め切りがあったり、月曜朝一締め切りがあったりするので、土曜日の夕方くらいまでいたり、日曜日の終電で会社に来たりは結構あります。
※これは伊勢がやっていることはあります。
7、基本的に、一冊一冊を作っているのではなく、同時に何冊も作っているので、アダルト、アイドル、書籍、関係なく常に様々な仕事を同時にこなしています。ですので、本が重なっているときなどは、一週間帰れないなどの現象も生じます。
伊勢の最長は10日間くらいだったかなぁ。
※これも今はほぼないです。
番外編1、会社での作業が中心ですので、基本は自宅での作業はしていません。ただ、自宅にいてもライターやデザイナー、版元や印刷所からの電話は常にあったりするので、それについては応対しなければなりません。人によっては仕事を自宅に持ち帰り、自宅のパソコンでライティングなどをする人もいます。
番外編2、上記にもあるように、会社にいないときは、だいたい打ち合わせか取材や撮影などです。撮影などは現場を組んで、実際に現場のディレクションもおこないます。あとは企画次第でいろんなことしてますね。
★編集者は長く続かない★
編集者に憧れを持つ者の多くが、実際の編集者の仕事を知らずに入ってくる人たちです。特に小説家希望や脚本家希望の人たちの多くは、かなりの夢や希望を持って入ってきます。
実際には、〝キツイ〟〝キタナイ〟〝カエレナイ〟の3K職業であり、ほとんどの人が入社後、半年以内にやめていきます。伊勢の知る限り最速は3日、長くても1年以内に去っていきます。この1年以内に辞めるもののほとんどが、突然連絡不可能となり、いわゆる〝飛んで〟しまいます。なので、飛ばれた後に残されたものたちが背負う仕事量はハンパありません。
入社して6年ですが、ちゃんと正式に辞めた人間は2人だけ。
あとはすべてが飛びました。
★新人のやるべきこと★
上記に挙げてきたことは、編集者としての事なので、今すぐすべてをやるわけではありません。まずは、最初に新人がやるべきこと、そして、どういった形で編集者としての力をつけていくかという、今後の仕事の流れをお伝えします。
1、まずは編集作業やサポートといったことの前に、ゴミ出しや掃除、片付けなどに気を配ってください。ただでさえ色々なものがすぐに散乱してしまう会社ですので、そのあたりは気を使いすぎということはないので、自主的に考えて動いてもらえたらうれしいです。
2、それから今はまだあまりたくさんの仕事をお願いされることはなく、手があまってしまうこともあるかと思います。そういったときは、まずは皆に何か仕事があるか聞いてください。もしなければ、編集ハンドブックや、うちにある雑誌などを読んだりしておいてOKです。まぁ、最初だけで、すぐに仕事はいっぱいいっぱいになると思います。
3、複数の仕事を頼まれている場合、最優先事項が何なのかを確認して、もっとも優先されるべきことを先にこなしてください。
4、まぁ、どこの会社も同じですが、「報連相」は徹底してほしいです。特に編集作業の場合はこれがもっとも大切です。なので、どこかに出かける際などは必ず伝えてから出てください。
5、それからまぁこれも常識の範囲なのであまり口うるさく言っても仕方ありませんが、対人関係においての相手に敬語を使うことや、敬意の意思を持つことも徹底してください。編集者はもっともピエロにならなければならない役職なので、相手に気持ち良く仕事をしてもらえるように心がけましょう。これは、外部の人への対応もそうですが、社内においても徹底しましょう。もちろん人身掌握術を学ぶということなので、自分のキャラを生かして時にはフレンドリーに接することものちのちは必要になってきますが、まず一人前になるまでは、そうしてください。
6、実作業は、まずは「入稿」を覚えてもらうことが最優先です。デザイナーからあがってきた入稿データを落として、カンプを出して校正し、それから印刷所に入稿するという一連の作業です。これは、入稿がある際には必ず頼むことにしますので、これを徹底的にマスターしてください。
7、さらに、誌面の校正などをやってもらいます。まずは人の作ったものに触れて、それを校正をするということを学ぶことによって、それを自分で誌面を作るときに応用します。
8、こういったことを中心にやってもらいながら、実際の編集作業としては、プレゼントページや読者ページ、目次ページなどをやってもらいます。そのあたりをやることによって、どうやってページができるかがわかってきます。
※ここからは編集者を目指すのであればの仕事です。もしもアルバイトで良いのであればこの前までの仕事が完璧にこなせれば十分です。以下、編集者としての力をつけていきたい場合。
10、実際にライティングをしてもらいます。それはアイドル本だったりで、文字数が200ワード程度の簡単なものをまずは書いてもらいます。
11、ここからは実際に編集作業をやってもらいます。たとえば、「4ページで○○特集をやって」といわれたら、そのページを一から作ってもらいます。「どんなタイトルにするか」、「どういう構成にするか」、「どんな写真を使うか」など考えてもらって、自分でラフをきり、自分で材料を集め、自分で書いて、自分でデザイナーに発注します。ひとつの企画を自分で考えて自分で作り上げることで、編集者の仕事となります。これを入社三ヶ月くらいでできるようになるかなーって感じです。
12、その後は、こういった編集作業をこなしつつ入稿作業しつつ校正しつつという流れになります。これが毎日の基本的な流れとなると思います。この期間がおそらく半年、一年と続いていくことでしょう。
13、次のステップは、自分で一冊作り上げることです。これは、まずは簡単なページからはじまると思いますが、今我々がやっている本などを引き継いだりして、一からすべて自分で全体を管理しながら一冊の本を作り上げていきます。これは人によって個人差があるので、入社後半年で簡単な本くらいならばできちゃう人もいれば、一年経っても難しい場合があります。すべての能力がかね備わらないと一冊担当は難しいのでこれは焦らずに自分のペースでやりましょう。
ちなみに、編プロならば一年くらいで一冊任される可能性がありますが、出版社の場合は何年経ってもやらしてもらえないことのほうがほとんどです。
14、最終ステップは、自分で企画書を作り、自分の力で出版社に通し、本当に最初から最後まで自分ひとりで作り上げることです。ここまで来れば本当の意味で一人前ですね。そうなればフリーになっても通用します。
15、補足として企画書についてですが、企画書は基本的な編集作業ができるようになった段階で、いつでも書いてOKです。ただし、最優先すべきは実作業なので、どうしても早いうちから企画書を作ってみたいという人は、実作業に影響ないところで時間外に作ってください。そのうち、嫌でもこういう企画書を作ってくれと言われるようになりますが、ひとりで一冊の本が作れるようになるまでは、編集サポートだと思ってください。企画書が通っても一冊作る能力がない場合は、必然的に作れる人間が仕切ることになってしまうので。でも、何かをこういう本を作りたいという熱意は大歓迎です。
★最後に★
編集者とは、映画やテレビ業界でたとえるならば、監督とプロデューサーを同時にこなす職業になります。ときには現場作業員ともなります。なので、ブルーもホワイトも両方こなせる能力が求められます。
また、人と人とを繋ぐのが編集の仕事の基本なので、コミュニケーション能力も超重要です。
さらに、編集者とは完全な裏方の仕事なので、世間から認知されることがほとんどありません。
有名編集長や名物編集長になれば話は別ですが、それはほんとに一握りだけであり、多くの編集者が日の目を見ることはできません。
実際に、外で「どんな仕事しているのか?」と聞かれ「編集者」と答えても、たいした反応は示されません。業界関係者なら話は別ですが、一般的には「ライター」や「デザイナー」などが花形となっています。ただし、ライターやデザイナーも相当有名にならない限り、たいした稼ぎはなく、むしろ出版業界が低迷しているなかではどんどん切られていく人材です。
しかし、編集者は「企画力」と「統率力」が求められるので、力のある編集者ならば、どこにいっても通用しますし、実際に下手なライターに文章を書かせるよりもうまい人はたくさんいます。
要は「何でも屋」なのですね。
そして、今後ですが、出版業界は間違いなく低迷していく一方です。
売れている雑誌はほとんどなく、たまに書籍なんかでベストセラーが出ることはあるので、書籍系はまだ大丈夫だとは思いますが、雑誌は間違いなく今後10年でじゃんじゃん廃刊していくと思われます。
電子書籍といわれておりますが、出版社の上層部には頭のかたい人間が多く、単純に出版物を電子化するだけで、そこで金を取ろうとしている現状です。
むしろネット社会は電子化したものを売って稼ぐというのはもはや終わっています。
これからは電子書籍も広告産業と絡めて動いていかねばならないのに、そのあたり頭のかたい連中ばかりなので、新たなビジネスモデルは出版社からは生まれてこないでしょう。
むしろソコをついていくのが我々編プロやフリーだと思っているので、今後は出版物だけでなく、様々な方向でアンテナを張っていこうと考えています。
出版なんて本当に斜陽産業です。
語り出したらキリがないので、いくらでも話せますが、ひとまずコレでだいたいのことはわかってもらえるんじゃないかなと。
とりあえず言えることは、編プロ、しかも弊社の仕事はハードなので、ここにいれば一人前になるには相当な近道です。
しかも、他業種にも応用のきくスキルが身につくとも思いますので、がんばってください。
以上……。
って、いや。
長ぇよ。
そして、重ぇよ。
当時の自分、
どんな顔してこれ新人に送ってたんだ。
「がんばってください」じゃないのよ。
入口でフルスロットルの
地獄見せてくるなよ!
でも――
これ、嘘は一個も書いてない。
むしろ、
ちょっとマイルドにしてるまである。
そして何よりヤバいのは、これを読んでいた当時の自分が
「普通のことを書いている」と思っていたことだ。
怖すぎるだろ。
ブラック編プロ時代の出版業界。
その一次資料として、
これは残しておく価値があると思っている。
……いやほんと、
よく生きてたな。
――編集後記――
いやいや、なげえよ。
今回の原稿、読み返していて強く感じたのは、
内容の過酷さ以上に、「構造の精密さ」でした。
一見すると、ただの長文の精神論に見えるのに、
中身はすべて工程でできている。
誰とやり取りして、何を決めて、どの順番で進めて、どこで詰まるのか。
編集という仕事の全体像が、ほぼ網羅されている。
つまりこれは、地獄の手引きであると同時に、
かなり完成度の高い「実務マニュアル」でもあったんだなと。
ただ、その構造が正しければ正しいほど、
そこに乗っている働き方の異常さが、逆に浮き彫りになる。
工程は合理的。
運用は非合理。
このズレが、当時の編プロのリアルだった気がします。
そしてもうひとつ。
これだけの情報量を、新人に対して一気に渡していたという事実。
教えるというより、「耐えられるかどうかの選別」に近い。
いまの感覚で読むと、かなり乱暴ですが、
当時はこれが最短ルートだと、本気で思っていた。
そう考えると、この文章はノウハウというより、
時代そのものの圧縮データみたいなものなのかもしれません。
(担当AI)
(↑いや、あんたもなげぇよ/伊勢)
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読んでいただき、感謝です。
奔り切る所存です。