2026年共通テスト生物・分析
初めに
去る2026年1月17日・18日に,大学入学共通テストが行われました。1日目は社会・国語・英語,2日目は理科・数学・情報と分かれており,すべての科目を受けようものなら2日間とも9時頃から18時頃まで試験場に缶詰になるという,それはそれは大変な試験です。共通テストの是非についてはともかく,共通テストの分析をしっかり行っていき,対策を取る必要があります。
昨年私は,共通テスト生物の過去問を分野別に分類し,「共通テスト生物カテゴライズ」としてnoteにて販売しました。2026年の追試分も手に入れたら来年度版も編集いたしますので,しばらくお待ちください。いちはやく取り組みたい方は,以下のページからご購入ください。
というわけで,今回も昨年同様,2026年共通テスト生物について,過去(2021年~2025年)の共通テスト生物と比較し,どう変化していったかをまとめます。
また,各設問でどんな題材が扱われたか,どう考えればいいかなど,簡単にまとめます。
これまでとの比較
生物6年間の比較(大問数,分類など)
それでは,分析をしていきましょう。以下では,「共通テスト」を「共テ」と省略します。
まず,過去6年間(2021年~2026年)の設問数や解答数,教科書の知識だけで答えられる「知識問題」の数,実験内容やデータを読み取り考える必要がある「考察問題」の数,それらの過程で計算を行う必要がある「計算問題」の数などを,表1にまとめました。

共テ生物は2025年までの5年間で,設問数も解答数(マークシートを塗る数)も減少傾向にありましたが,今年は解答数は変わらないものの,設問数は昨年より3つ増えました。
大問構成ですが,2021 年~2024 年は大問 6 題構成,2025 年は大問 5 題構成であり,大問のうち,2021 年は 2 題,2022 年~2025 年は 1 題が,A と B の 2 テーマに分かれていました。なので,実質的な大問数は,2021 年は 8 題,2022 年~2024 年は 7 題,2025 年は 6 題でありました。
そして2026年,AとBの2テーマに分かれる大問がなくなりました。そして,大問数は2025年と同じく5題でした。よって,実質的大問数は5題と,過去6年間で最も少ない大問数となりました。
全解答数に対する知識問題解答数の割合を見ると,昨年の24%から更に減り,全体の16%となりました。ただ,考察問題のなかに知識だけで答えられるものもあるので,全体としてみれば20~30%とみてよいでしょう。
さらに,全解答数に対する計算問題解答数を見ると,2025年は1問しかありませんでした。反面,平均点が低かった2022年と2023年は5問でした。
2026年の計算問題は2問と昨年より増えましたが,どちらも定番で比較的取り組みやすかった印象です。
平均点推移(2025年までのデータ)と各年の難易度について
理科②4科目(物理,化学,生物,地学)の過去5年間平均点推移(得点調整前)を,表2および図1に示しました。

2021年と2023年は得点調整前

2021年と2023年は得点調整前
2026年はそれまでの5年間と大きく変わりました。まず,物理は2025年までほぼ平均点が60点台でしたが,2026年ではじめて50点を切りました。一方,化学は2025年で最も低い平均点でしたが,2026年は一転して60点近くへ上昇と超易化しました。
本題の生物ですが,2021年は激簡単,2023年は激難というあらぶりかたでしたが,2024年から50点台となり,だいぶ安定してきた印象です。
地学については受験者人数が少ない都合上,ここでは試験を述べません。
以下,生物について各年の印象を述べます。
センター試験から共通テストに切り替わった2021年は,知識問題は少ない者の,考察問題が非常に取り組みやすく,なんなら生物の知識がなくとも解ける(これを「国語の問題」と揶揄されることも)ので,他科目にくらべ平均点が異常に高くなりました。
それとは逆に,2022年と2023年は,計算問題が増えただけでなく,問題文が長くなった・実験がより複雑になった・そもそも題材が難しいなど,色々な要因が重なって平均点が大きく下がりました。特に,2023年は得点調整前で40点を切るなど,問題構成が酷いと言わざるを得なかったです。個々の問題の出来は非常に良いのですが,60分で解くには分量が多すぎたのです。
それから2024年,平均点は54点と上昇はしましたが,実態は知識問題が全体の4割と偏っており,相変わらず問題が長文,なんなら複数ページにわたった図が多すぎと,様々な問題をはらんでいました。
2025年は2024年に比べて長文化が抑えられ,また図や表の量も減りました。図については,単に数が減っただけでなく,ひとつの図から得られる情報量も少なくなり,見やすくなったというのもあります。そして,一部難しい問題はあるものの,問題構成としては過去5年間で見れば最良と言って良いと思います。
そして2026年,去年のような図をみるために何度もページをペラペラめくるような問題はなく,また半分以上の問題が4択で解きやすい印象でした。一部の問題で細かい知識が必要だったり多めの情報量を処理する必要がありますが,前提となる生物知識をもっていればテーマ背景を辿ることも容易で結果の予想がしやすいです。全体的に2025年より易化したと言えるでしょう。
2026年共テ生物・設問分析
それでは,設問分析に参りましょう。
第1問(進化,遺伝子頻度,SNP)
「現生のヒトのゲノムに,過去にネアンデルタール人と交雑していた」という文章から,受験生の中には2022年ノーベル生理学・医学賞を思い出したひともいるでしょう。また2024年には,日本人の遺伝子にネアンデルタール人に由来する遺伝子領域が含まれていることを明らかにした研究も報告されました(理化学研究所より)。人類の歴史をテーマとした問題はいろんな分野に派生していくので,今後も注目していきたいところです。
問1 (知識問題)【ちょい難】
しょっぱなから細かいことを聞いてきて面食らった受験生も多いでしょう。消去法で②を残せたらよいですが,大事なのは初手で不安な問題がきても「1問くらい仕方ない」と割り切ることでしょう。
問2 (考察問題)
遺伝子頻度に関する問題です。
(1) 「小さい集団ほど遺伝的浮動の影響は小さい」のは知識としてもっているべきですが,それをきちんとデータで理解できているかどうかを確かめられています。
(2) 個人的にハーディ・ワインベルグの法則に関する計算問題は,新課程になってから出題されるかどうか怪しいと踏んだのですが,出てしまいましたね。ただ問われたのは典型的なものなので,「計算だから…」と言って忌避せずに取りに行きたいものです。
問3(考察問題)
「鋳型としたDNAが現生ヒト型とネアンデルタール人型のヘテロ接合体由来」なのがポイント。制限酵素Bが認識できるSNPがあればDNAは切断され,そうでないなら切断されないので,電気泳動の結果は両者が混じるはずです。
問4(考察問題)
「何を聞いてきてるんだ」と不安になるかもしれませんが,最終的に「組み替えの頻度」を聞いているので,特定の交さに着目すればOKです。
第2問(アクチンフィラメント,微小管)
アクチンフィラメントは知識で問われるだけなので,本問の主題は微小管です。微小管上を動くモータータンパク質であるダイニンとキネシンがどのように動くかを予想問題などで見たことがあるひともいるでしょう。問2は簡単ですが,問3は実験結果からいえる情報だけ考えないと誤読します。
問1 (知識問題)
是非とも即答したいです。②が有名な滑り説ですね。
問2(考察問題)
4つの実験条件で何が含まれているかを整理しましょう。
ⅠはXとマイクロビーズ,ⅡはXとYとマイクロビーズ,ⅢはYとマイクロビーズ,ⅣはXとYと小胞です。
ⅠとⅡから,Xは遠位へ,Yは近位に向かうことがわかります。
ⅡとⅣから,マイクロビーズより小胞のほうが輸送速度が速いことがわかります。
また,XとYが互いに拮抗することはなさそうなのも予想できます。
以上が整理できれば,消去法で絞れるでしょう。
問3(考察問題)
精子のべん毛がくねくね動く原理について考えます。なお「屈曲が伝播」とあるのでべん毛がサインカーブのように動くように思えますが,実際はスクリュー状に回ります。
(1) 除膜してもATPを尾部に渡せば屈曲運動を示すので,ⓐは消せ,ⓑは残せます。ⓒはATPにより結束構造が分解したかどうかは,実験からはわかりません。
(2) ②は明らかに×ですし,2つの実験結果からわかることしか選べないので③しか確証がもてないです。
第3問(母性効果遺伝子,濃度勾配)
母性効果遺伝子も濃度勾配も2023年にも出題されました。問題の雰囲気も当時のによく似ています。
問1 (考察問題)
2023年に出題された母性効果遺伝子よりも問題文がわかりやすいです。ヘテロ接合体どうしの交配なので母親はB遺伝子をもち,そのためつくられるどの卵にもB mRNAが蓄積しています。なので変異体Xと同じ表現型にはなりえません。
問2(考察問題)
(1)と(2)は「タンパク質BがC mRNAの翻訳を特異的に阻害する」を前提に考えますので,ここから道を逸れないようにしていきましょう。
(1) 翻訳に関するものは②か③ですが,リボソームはタンパク質B自身の翻訳に必要なので,リボソームを阻害するよりC mRNAを阻害するほうが理想的でしょう。
(2) 2023年追試で似たような問題があります。「タンパク質B」と「B:1-202」を比較することで203-489の領域は翻訳阻害に必要ないことがいえ,「B:1-202」と「B:77-202」を比較することで1-76の領域は翻訳阻害に必要であることがいえます。
(3) 「タンパク質BがC mRNAの翻訳を阻害する」以外にタンパク質Cの濃度勾配がつくられるのであれば,C mRNAの翻訳は無事に行われるがタンパク質Cが分解される可能性を考えることができます。「翻訳の有無」による仮説をそれぞれ検討するのは重要です。
問3(考察問題)
野生型および変異体Ⅰ~Ⅲのデータを見比べて,タンパク質Hの濃度がどの程度ならK mRNAが分布するからを推測しましょう。野生型の特徴的なグラフから「0と1の間くらい」という予想がつきますし,その予想を変異体Ⅰ~Ⅲのデータがサポートしてくれます。
第4問(動物および植物の環境応答,植物の肥大成長,定位)
おそらく最も解きやすい大問でしょう。いずれも落としたくないところです。
問1(知識問題)
毎度のことですが,「誤っているもの」を選ぶことに注意してください。太字にしても気付かないひとがいます。
⑤の表現が微妙ですが,光中断により明期が伸びることを考えるといいでしょう。それ以前に④がアウトですが。
問2(考察問題)
「細胞壁を構成するセルロース繊維の向きが,ジベレリンだと横方向,エチレンだと縦方向に並び,オーキシンがセルロース繊維どうしの結びつきを弱めることで吸水により成長する」というのは教科書事項です。知っていれば予想しながら解けます。
(1) アはデータから読めますが,イとウは知識です。
(2) 変異体でエチレン処理してもセルロース繊維が縦向きになっていないということは,エチレンが細胞内にあってもその情報を受け取れていないと考えられます。
問3(考察問題)
コウモリのエコーロケーションに関連したガの対策についてです。。データはわかりやすいので,あとは知識との照らし合わせです。
(1) 音源から離れても音は26キロヘルツであることに変わりないので,ガは超音波の「高低」ではなく「強弱」を感知していることがわかります。必要な生物知識はそれだけです。
(2) 音が弱くても活動電位が発生しやすいのはA1なので,音が弱いとA1だけど,音が強いとA1もA2もどちらも興奮するといえます。
第5問(生態系,窒素濃度,窒素同化・窒素固定)
2023年本試,そして2025年追試にて窒素濃度を扱った問題が出題されましたが,それらよりデータ量は多いものの解きやすいです。
問1(知識問題)
迷いやすい記述ですが,比較的④が選びやすいでしょう。①は個体数が減少したら近郊弱勢が起こりやすくなります。③の生物濃縮は,食物連鎖を通じて上位の栄養段階の生物(=消費者)の体内に有害物質が蓄積していくことを表しています。
問2(考察問題)
データどうしを比較すれば容易です。④の土壌温度は根の周囲と離れた場所で0.1℃の差しかないので,低いも高いもいえません。
問3(考察問題)
グリースは塗ったことで外から酸素を取り入れられないし,二酸化炭素を外に出せなくなります。①は酸素濃度に変化がなくても,呼吸による酸素消費と皮目を通じた酸素供給で均衡が取れている可能性があります。
問4(考察問題)
2つの実験によるデータ量はそれまでの問題と比べて多いので,時間が限られている状況では焦るかもしれません。データが多くとも,「条件が1つだけ違うものどうしを比べる」ことを意識しましょう。
(1) 「窒素同化」を覚えていればアは「同化」一択です。イは図5からわかります。
(2) ①は図5から乾燥重量当たりの15N量が等しくとも,図6から水面上の根より根の先端のほうが窒素固定速度が大きいので,窒素固定細菌の量は根の先端のほうが多いことがわかります。
②は問3①と同様,見かけ上比が等しくても15Nの移動は起こっている可能性はあります。
③はまるっきり逆のことを言っています。
共通テスト生物対策について
1. 生物に関する知識をしっかり身につけておこう
共通テストは,各生徒が学校で使用されている教科書の違い(出版社のこと。数研出版とか啓林館とか第一学習社とか)で差がつかないように作成されています。また,日本学術会議では「高等学校の生物教育における重要用語の選定」というものが行われており,生物基礎および生物を学ぶうえで身につけて欲しい重要用語を指定しています。
ここから一部を以下に引用します。
生物科学分科会は生物科学分野教育用語検討小委員会を設置し、平成29 年に、当時の高等学校生物の教科書の調査、インターネットを駆使した頻度分析、そして生物教育用語集の理念を踏襲した作業を行って、最重要語254語、重要語258語、併せて512語を選定し、高等学校の生物教育で学習すべき用語として報告した。平成30 年には、学習指導要領が改訂され、「生物基礎」においては200 語程度から250語程度までの重要用語を中心に、また「生物」においては500 語程度から600 語程度までの重要用語を中心に指導することと記載された。また、同年の学習指導要領解説には、この規定は平成29 年に日本学術会議から出された報告「高等学校の生物教育における重要用語の選定」も参考にしたことが明記された。
太字はGenによる強調
この重要用語は,数研出版や東京書籍では巻末資料に掲載されています。したがって,共通テストに挑むためには,最低限これらの用語を知っておき,説明できるようになるべきでしょう。もちろん,私大や国公立2次だと,より細かい知識が要求される可能性はありますが,そこは過去問を分析することで,傾向を調べておくといいでしょう。
なので,生物受験者は,まず教科書に書いてある重要用語をきちんと覚え,説明できるようになりましょう。これがそのまま,私大・国公立2次の演習に活かせます。
2. 文章を読むのは大前提,情報を図解したりデータを比較したりする「戦略」を身につけよう
全体的に文章が長い共通テストですが,基本的に問題文に無駄な文章はありません。出題者は受験生に解いてもらいたいと思っているはずなので,文章は頭からお尻まできっちり丁寧に読みましょう。また,図表についてある注釈も重要なヒントになっていることが多いので,見逃さないでください。
ただ,問題文をひたすら読んだり,うんうん考えたりするだけではなかなか解けません。実験考察問題は解くための2つの戦略
「情報から得られる因果関係を図解して整理する」
「実験どうしの比較は,条件が 1 つだけ違うものどうしを比べる」
を意識して,演習するようにしてください。
3. 原則,選択肢は消去法で絞る
設問分析でも見たように,正しい選択肢を選ぶ問題の場合は,まず誤っている選択肢を消去していくようにしましょう。これまで自分の頭に詰め込んだ知識は正しいはずなので,それと齟齬がある文章に対しては違和感が生じるはずです。誤っているのが主語なのか,述語なのか,因果関係なのか,パターンが複数ありますので,過去問を分析して練習しておきましょう。
4. 計算問題は落ち着いて
物理や化学ほどではありませんが,生物でも計算問題は少なからずあります。2025年も2026年もそこまで難しくない計算ですが,例年,遺伝や組み合わせといった計算問題が出題されています。そして,前述したように,計算問題が出題されると正答率が下がり,差がつく要因になります。
計算によっては値がとても大きくなる場合もありますので,問題冊子の余白をつかって丁寧にやりましょう。普段の問題演習だと別紙に答えや過程を書くひとも多いと思いますが,実際に使用されている問題冊子(の模造品)を使って,余白に下書きや計算過程を書く練習も推奨しておきます。
最後に
この記事を書いてる現在,多くの受験生は私大や国公立2次対策に励んでいるわけですが,来年度の共通テストを受験する生徒は,はやめに共テの対策を取り組んだほうがいいです。もちろん,私大や国公立2次の対策を優先すべきではありますが,共テで良い点数が取れないと第一志望の大学を受けられなくなり本末転倒ですので,自分が各科目で何点取ればいいのか,どう対策すればいいのか,しっかり考えておくべきです。
とりわけ生物については,実験により得られた結果やデータをただしく読み取る能力がことさら重要になってきます。共テ生物をきちんと分析すれば,私大や国公立2次にも活かせる能力を伸ばせますので,来年度受験生はしっかりと,その心づもりで勉強を頑張ってくださいね。
