「AIとロボット」考
AI(人工知能)の発達が目覚ましい。で、このAIの能力の高さを、もっと現実の世界でも活かそうと、ロボットの開発が次の重要テーマだ、とささやかれているらしい。AIロボティクス、と呼ばれている様子。でも、正直難しいなあ、と私なんかは思う。
その理由は「自己修復機能がないから」。AIがここまで発達したのは、扱うのが情報のみで、情報だったら書き換え、修正がいくらでも可能。AIが誤った学習をしたとしても、膨大な情報を提供することで修正させることもできる。このように、作っては壊し、壊しては修復するという機能を、「情報」の分野なら持たせやすい。AIがここまで発達したのは、修復が容易にできる、という面があるように思う。
でも、ロボットの場合はそうはいかない。たとえば関節部分が壊れた時、勝手に治癒はしない。人間なら、小さなケガなら自己修復してしまう。けれど機械にそれはできない。この「自己修復機能の欠如」は、ロボットを開発するうえでかなり決定的なように思う。
また、人間の場合なら、どこか悪くしている部分があると痛みとして感じることができる。無理をしないでその部分を休ませることにより、自己修復を促すこともできるし、病院に行って治療することもできる。ところがロボットには、痛覚にあたるセンサーがない。
人間なら、関節部分の軟骨に異常があっても痛みとして感知することができるけれど、ロボットの関節は、関節部分にセンサーを仕込むのはかなり大変。もし仕込めたとしても、全身から提供される情報が多すぎて、AIの処理能力が追い付かなくなる恐れがある。コストも一気に跳ね上がるだろう。
となると、「壊れた時は壊れたでいいや」と開き直り、低コストで製造することを重視することになると思う。すると関節部分にセンサーはないから壊れたことを知らせてもくれないし、もちろん自己修復能力もない。結果、人間が「診て」やらなきゃ異常が起きたのかどうかも把握できないということになりかねない。
実際、機械を扱っている人なら経験があるだろうけれど、「知らない間に壊れていた」てしょっちゅう。しかも壊れるときはしばしば前触れがない。メンテナンスを気をつけていても故障が起きる。
先日、東京スカイツリーのエレベーターが故障して、長時間閉じ込められた人が出た。12月にもメンテナンスをして異常が見つからなかったのに、ある意味突然故障して大慌て。エレベーターのような、ある意味シンプルな機構にも思える(実際にはいろいろな仕組みが備わっているのだろうけれど)機械でも、故障を予見することは難しい。また、機械自体が「ここ、異常が発生していますよ!」と知らせてくれることもない。人間があらかじめ設置したセンサーが役に立たない場所で故障をしたら、どうしようもない。
ロボットにAIを搭載するというのは確かに新しいから、面白いのは出てくるかもしれない。それでも、一部期待されているほどの成果は出にくいのではないか、という気がしている。エネルギーの問題。
「情報」だけを扱うなら、エネルギーはそんなに食わない。でもロボットに関節や車輪、リフトなどの「可動部分」をつけたとたん、バカみたいにエネルギー食いになる。そんな大量のエネルギーをバッテリーで補おうとすると、そのロボットは超重量級になり、よけいに関節が壊れやすくなる。
そう考えると、二足歩行のような関節が壊れやすい仕組みよりは、壊れにくい車輪型が中心になるように思う。すると、平らな場所でしか使えない。階段を上り下りするのは無理になる。AIロボットの活用場面は限られることになる。
電源ケーブルでつなげば、エネルギーをいくらでも確保できるからエネルギー不足の心配はなくなるけれど、今度は動く範囲が限られてしまう。ケーブルなんか引っ張っていたら、二足歩行型のロボットはそれに引っ張られてコケやすくなるだろう。
AIロボットの活用場面は恐らく、
①車輪での移動など、単純で壊れにくい機構を採用する。何なら移動能力をなくし、固定。
②平らな場所など、移動が容易な場所に活用場面を限定する。
③バッテリーで賄える程度の低エネルギーの活動に限定。
などの制約条件が生まれると思う。
ロボットがAI並みの驚くべき発展を遂げるには、「自己修復機能」と「異常を知らせるセンサー」の開発が不可欠ではないか。でも、そのどちらも目途が立っていない。機械が自己修復するという仕組みは、ごく微細な現象としては研究されているようだけれど、ロボットの関節に採用できるようなものではない。ロボットは今後も、「作ったときが最強で、あとは壊れていくだけ」という宿命を背負うだろう。
また、センサーについても、人間の神経のように微細なものを作ることはまだできていない。人間は何なら骨の中の異常でも痛みを感じるけれど、ロボットアームの金属棒の金属疲労をリアルタイムで感知することは難しいだろう。
そうしたことを考えると、AIロボティクスは、私たち素人が思い描くほどには大して発達できないように思う。ロボットはほんと、よく壊れるからねえ。
