最高の振付師の最期
私が今まで見た舞台の内で一番こころに残った舞台は何?と聞かれたら、
私は迷わずこう答えます。
1992年10月29日にロイヤル・オペラで見た「マイヤリング(うたかたの恋)」
です。
ケネス・マクミラン。
バレエに物語性を導入した唯一無二の振付師。
当時、ロイヤル・バレエは黄金時代でした。
日本では特別枠として有名なシルヴィー・ギエムもいました。
英国では英国人のダーシー・バッセル、そして
イタリア人で熊哲の元恋人としても有名なヴィヴィアナ・デュランテ。
英国内では、長身でケネス・マクミランの秘蔵っ子でもあったダーシー・バッセル派と、ボリショイ・バレエから来たスター、イレク・ムハメドフと組むヴィヴィアナ・デュランテ派に分かれていました。
私は最初に見た「白鳥の湖」が印象的だったことから、全て、デュランテとムハメドフのペアで見ました。
当然、再演の「マイヤリング」も、初日のデュランテとムハメドフのペアで見ました。
ムハメドフは存在感のある演技力満点のダンサーであったため、ルドルフにはぴったりだといわれていました。
デュランテは、一度振り付けを見たら、それが頭の中に映像のまま入り、すぐに踊ることが出来るという、まれにみる才能のある小柄で繊細な演技を得意とするダンサーでした。
前述のとおり、既に何本かデュランテ・ムハメドフのペアでケネス・マクミランの作品は見ておりましたが、この日の「マイヤリング」はまさに別物でした。
その日の舞台は最初から圧巻の出来でした。
そして終演。ものすごい拍手とブラボーの渦。
が、カーテンコールで出てきたデュランテが顔を覆って泣いているのです。
あれ?あまりに出来がよかったから感動して泣いている?
それにしても泣き方がおかしいのではないの?
ロイヤルオペラ中の観客がそう思った瞬間、支配人がものすごい形相でて来たと思ったら、右腕で大きく刀を切るにように宙を振り、観客の騒ぎを止めたのです。
そしてこういいました。
皆さん。
本日、この最高に素晴らしい作品が上演される中、最高の振付師が亡くなりました。
どうぞ皆さん、お静かに帰路についてください。
ケネス・マクミランは、マクミラン振り付けの最高の作品を最高のキャストが躍る中、2幕と3幕の間に、楽屋の廊下で心臓麻痺で倒れていたそうです。
一瞬驚きに反応する大きなため息のようなものは出ましたが、
当日、ロイヤルオペラハウスにいた観客全員、静かに観客席から立ち去りました。
勿論、私もその一人でした。
今、その日を見ると、1992年10月29日。
私が日本に帰国する1週間前のことでした。
私は、そんな荘厳な英国バレエ史に起こる場に、たまたまいられたことを生涯忘れることは出来ません。
ケネス・マクミラン。
まだ62歳だったそうです。
何と幸せな振付師としての人生だったでしょう。
今日はあまりに話が荘厳でしたので、AIの皆様が書いた絵を、最後に並べて終わりとさせていただきますね。



コピ君、この日はノリノリで3枚描いてくれました。


チャッピー君お得意の天才的、文章入りのイラスト。
デュランテの品が出ています。
