愛ってやつは…③
「恋は、言葉が無くてもできる」
だって、「好き」は相手の表情を見ればわかるから。
好きなものを見ると、人は目を細め、
「かわいい」と思うと口元がほころびます。
でも、愛はちょっと違うと思うんです。
愛には言葉が必要。
会話しないと生まれないもの。
思いがつながった瞬間に感じる、心が満たされていく温かさ。
私が公ちゃんと会話したのは、ほんの数回です。
最後は、フロアマネージャ-になった彼に、私が意見をしてしまった時。
さすがに黙っていられなくて、
仕事にかこつけて、バックヤードの片隅で、周りの目も気にせずしゃべりまくりました。
それでも彼は何も言い返さず。
俯いたまま反論しないので、
「ちょっと、聞いてるの!?」
とゲンコツでどついたら、彼がようやく私を見た。
その顔が、すごく嬉しそうで、
まるで子供みたいに笑うんです。
なんだよそれって。
*****
悶々としなが思い返していると、ふと頭に声が響きました。
「結婚させてあげなきゃ…」
音ではなく、突然、頭の中に浮かんでくる感じ。
「え?」と思いました。
おそらくこれは、無意識からのメッセージ。
今が引き際。
これ以上は関わるべきじゃないのだと。
なので、フロアを変えてもらうことにしました。
私は違う部署へ異動させてもらって。
それ以来、私は彼に会うことも、話すこともありませんでした。
******
それから半年ほど経った頃でしょうか。
事務所の前で、向こうから歩いてくる公ちゃんとすれ違いました。
一時期の輝きはどこへやら、すっかりオーラの消えた顔で。
その表情を見た瞬間、またもや、頭の中に言葉が浮かびました。
「子どもができた」
何の根拠もありません。
それでも、確信したというか。
そしたら、本当にデキ婚で。
「ついに結婚したね~」
という話をちらほらと。
優柔不断な彼は、なかなか結婚に踏み切れずにいたそうです。
そっかあ、良かった…
出世して、結婚して、子どもも生まれて。
彼の親御さんも、さぞ喜んでいることでしょう。
ただ、思いを断ち切るのは本当に苦しかった。
スーパーで彼女と買い物をしている姿を見た時には、
息もできず、立っているのがやっとでした。
何度経験しても、失恋のツラさは耐えがたいもの。
その頃世間では、髭ダンの「プリテンダー」が一億回再生を突破、
君とのラブストーリー
それは予想通り
いざ始まればひとり芝居だ
ずっとそばにいたって
結局ただの観客だ
感情のないアイムソーリー
それはいつも通り
慣れてしまえば悪くはないけど
君とのロマンスは人生柄
続きはしないことを知った
もっと違う設定で
もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
もっと違う性格で
もっと違う価値観で
愛を伝えられたらいいな
そう願っても無駄だから
グッバイ
君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない
でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで痛いやいや
でも
甘いないやいや
グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない
分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
君は綺麗だ
多くの人が共感した歌詞、
実らなくても、恋は恋。
黙って去ることもまた、愛なのだと思います。
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