恋の力はまさにミラクル②
私が惚れた相手は34歳。
最初は、「めちゃくちゃ背の高い青年がいるなあ~」という感じで。
商品棚の上をキリンみたいに頭だけが移動していく…
「なんだ、あれは!?」
と思ったんですよね。
直属の上司ではなかったのですがレジが同じだったので、お互いに顔だけは知っていたけれど、話したこともなければ接点もない。
それでも彼は目を引く存在でした。
とにかくスーツがよく似合う。
韓国ドラマに出てきそうなくらい、いや、歩くマネキン?
アパレルは肉体労働なんで、引き締まった体に細身のスラックスがばっちり決まって。
はしたないですが、お尻に惚れた✨

パートさんたちはみんな年上なんで。
色白で京都弁をしゃべる彼は「公家みたい」ということで、
「公(きみ)ちゃん」と呼ばれていました。
しかも彼、うちの直属の上司(46才)に嫌われていたんですよね。
おかげでいつも不機嫌な顔で、暗いオーラを出しまくって歩いていました。
******
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
自分を虐めるヤツの下で働く私を助ける気なんて、さらさらありません。
なので、彼に助けてもらったことはなかったのですが。
ある時、金額を打ち間違えて、返金しなければいけなくなりました。
ところが、やり方がわからない上に、聞こうにも周りには誰もいない。
そんな時、視線の向こうに動く頭が見えました。
「公ちゃんだっ」
とっさに駆け寄って、
「助けてくださいっ」
相変わらず不機嫌な顔の彼は、一瞬、目を大きくして私を見下ろしたあと、「ふん」という感じで。
面倒くさそうに、返金を手伝ってくれました。
意外といいやつじゃんっ
そう思ったんですけど…
それからです。
気付くと公ちゃんが近くにいることが多くなりました。
最初は気のせいかと思ったんですけど、そうでもなく。
新人の私はしょっちゅう失敗してしまう、すると、彼の姿が目に入るんです。
「お願いしますっ」
声をかけると、相変わらず「ふんっ」と言いながら助けてくれる。
頼られるという行為が彼の何かを刺激したのかどうか、それは分かりません。当然そこには、恋愛感情などないわけで。
彼にとっては、おたおたしている「新人のおばちゃん」を助けることがちょっと楽しかったのかもしれない。
或いは、ジタバタする姿が小動物みたいに見えたのかもしれません。
ただ、見た目がいくらおバカに見えても、私の中身はいい大人です。
マハラジャ世代で、若い頃は恋愛が全てだった、しかもアグレッシブな狩人タイプ。
「落としたい」と思った相手にはつい、自分から仕掛けたくなってしまって。
恥ずかしながら、駆け引き大好き。
なので、ちょっかいを出したい衝動を止められませんでした。
******
作戦その1:声のトーンを変える
日本はアニメ文化が色濃いので、可愛い女性は「アニメ声」と思われがちですが、洋画を観れば一目瞭然。
色気を出すなら、「低い声の方がいい」
いつも高い声で話してる人が、急にトーンを下げると「うわっ」と思うのは男も女も同じです。
キリンの川島さんやケンコバさん、
女性なら渡辺直美さんや甲斐田裕子さん。
やってみると、彼の目がぴくっと動くんですよね。
後ろから話しかけると、うわっと振り向く。
その反応が面白くて。
作戦その2:間接的ボディタッチ
直接触るとセクハラになるけれど、ボディタッチはめちゃくちゃ刺激になります。
ということで、他のもので代用。
たとえば、レジに立っている彼の後ろを通る時にはわざと、持っている荷物を押しつける。
後ろを向いていれば、体に何が当たっているのか分かりません。
特に洋服の入った袋は柔らかいので、効果絶大。
想像力をかきたてる🥰
心の中で
「ほれほれ~」
と笑いながら。
最初は楽しんでいましたが、さすがに彼も、からかわれることにムッときたんでしょう。
付き合っている彼女もいるし、男としてのプライドもある。
突然、雰囲気が変わりました。
目を覆い隠していた前髪をかきあげ、顏がはっきり見えるようになり、それまで曲がっていた背筋がスッと伸びて。
雰囲気が引き締まったというか。
振り向きざまにオーラが見えるというか。
扉を開けたとたん、足を組んで座っている彼の姿がカッコよすぎて、思わず荷物を落としそうになったほど。
それ以上にびっくりしたのは、周りの「おばちゃん達」の反応です。
「なになに、いよいよ彼女と結婚するの?」
「なんか最近、オーラを感じるんだけど」
テンションが上がりまくりで、巣箱に集まるミツバチのごとく。
これまでのように、簡単には近づけなくなりました。
事実:ホルモンの力はすごい、どんな人でもカッコよくなる
それは間違いありません。
「感覚的なもの」で言葉では説明しがたいのですが、恋じゃなくても、やりがいでも成功でも。
エネルギーが上手く回っていると人は顔が輝く。
おそらく、それが人生を好転させるのでしょう。
その後すぐに、公ちゃんは、売り場を統括する「フロアマネージャー」に昇格しました。
しかし・・・
これが、私にとっては苦悩の始まりだったのです。
(プライバシー保護のため、本人を特定できないように変更しています)
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