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HSP気味で地獄耳なアラフィフ

地獄耳という才能に気づいたとき

アラフィフの私は、自分が地獄耳だと思います。
その自覚が芽生えたのは、働くようになってから。
どうやら私は、みんなが気にしていない会話を拾ってしまうらしいのです。
仕事とかその場に集中していないだけなのか、それとも私のHSP的な気質、感受性の高さよるものなのか。

オフィスのコソコソ話、電車で近くの人の会話、カフェの周囲のおしゃべり、ミシュランレストランの隣の席の意味深な会話、カップルのけんか、悪口に熱中するおばさんたち、居酒屋のサラリーマンの与太話、さらにはオンライン会議に入っている人の声まで——気がつくと、私は熱心に盗み聞きしています。
私は小学生のころに、悪口でめそめそ泣いていた。子ども社会の声が聞こえすぎていたんでしょう。幼い私はHSPさんだったのね。

一人でいるときは、知らぬ間に“地獄耳モード”になり、周囲の会話を集中して聞きがちです。
一人ランチやお茶は、気がつくと周りの会話を聞いています。最近ではみんなスマホで、妙に静かなことが多いかも。
誰かと一緒のときは、目の前の人とも会話はしているので、ずっと盗み聞きをしているわけではありません。相手がトイレに立ったとき、電話で外すときなど、一人になると、“地獄耳モード”。
ただしこのモードは、日本語限定。英語は「音」として流れていくだけです。

記憶力までついてくる厄介さと熟女談義

さらに、私は記憶力が妙にいい。盗み聞きした会話を忘れず、そのまま覚えているのです。
一人になると、その会話を反芻して組み立てて、一編の物語にします。印象的な会話は忘れられなくて、その場所に出没する地縛霊のように、訪れるたびに思い出します。でも視覚的にはあまり覚えていないので、どんな人が話していたかは、思い出せない。

20年前くらいのことです。
新丸ビルのカフェで慶應大学の男子学生たち(会話を盗み聞きして、5人みんなが慶應の三田キャンパスに通う3年生で二十歳をすぎた年齢なことがわかった)が、好みのタイプ談義をしてました。

「おれ、潜在的に熟女が好き」
「熟女って、大学の女ってこと?」
「違う、熟した女だよ」
「お前、おばさん好きなの?熟女って何歳よ」
「32歳くらいじゃないか?」
「ふつう40歳以上じゃないの?」
「それはただのおばさん、お母さんの友だちだよ。32歳から、39歳くらいまでが俺の熟女。初恋は小児科の看護婦さんだった」
「おれも好きだった。でもすごく若いお姉さん看護婦さんが好きだったな」
「お前の塾女は、30歳は違うの?」
「違う。29歳は熟女とは違うし、30歳は、29歳と同じ学年かもしれない。だから30歳は熟女じゃないな」
「だとしたら、31歳も留学してたら、29歳と同学年だしな、お前の熟女には入らない。32歳からだな」
「なんとなくわかったよ、熟女の定義」

「熟女の定義決まったけど、お前、どうやって熟女と知り合うの?」
「ナンパかな」
「結婚してる32歳をナンパしたらやばくない?」
「だよな。既婚者はリスクだよな。でもきれいな奥さんみたいな32歳が、俺の熟女の理想なんだよな。独身より新婚が好きみたいな。熟女にナンパされるのを待つしかないな」
「おまえの願望、設定が無理すぎるだろ」

隣で地獄耳で聞いていた私と友だちは、33歳。学生たちが帰ったあとに、ムカつきが爆発しました。
「聞いた?私たち、二十歳から見たら熟女枠なんだ。独身の熟女より、既婚の熟女が、慶應生の彼は好きなんだ。私たちじゃダメってこと?」
「だめみたいね。新婚の女が好きなんでしょ。あの子、歪んでるね。いつか事件を起こす系。性癖も絶対に歪んでるよ」
「男性が年下だと事件性がなくなるよ。なんかムカつくけど、熟女側が悪くなるんじゃない?」
「まず、新丸ビルでお茶してる大学生ってとこがムカつく。学生時代に丸の内なんて来たことなかったよ。そんないけすかない奴に、私たちは熟女に分類されたうえに、独身だから下に見られるんだよね。ムカつくわ」

自分たちが熟女枠なことと、年齢は満たしても属性でアウトなことに、それなりに落ち込みました。

今でも、新丸ビル7階レストランフロアに行くと、学生男子の理想の熟女像談義を思い出します。

みんなの黒歴史を覚えてる

アラフィフになって女子たちと昔語りをする機会が増えると、私が鮮明に覚えていることを彼女たちはほとんど覚えていないことがわかりました。「そんなことまで、よく覚えてるね」と言われるのは日常茶飯事。
私は、みんなの黒歴史を細かく覚えてるよ。

私の記憶は、古いほど鮮やか。
高校生のときの会話のほうが、アラフォー時代の会話よりも鮮度高めに保存されています。
反対に、昨日のことは覚えていない。アラフィフになってからは直近の記憶があやしくなり、若い頃の私の記憶力は本当にすごかったんじゃないか、と最近よく思います。そして、覚えすぎててメモリーがいっぱい状態だとも。

80代カップルの会話で幸せになる地獄耳に続きます。


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