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妖怪と蛇と拝み屋と薬草

水木しげるさんの故郷である境港が募集している「妖怪川柳コンテスト」は、今年が最後になるとニュースでしていた。理由は、AIで作ったものと見分けがつかないからだと。
何とも、切ないような虚しいような、妖怪とは真逆の世界のような、何だかなあと思うニュースだ。
私が子供の頃は、妖怪の気配が感じられる生活だった。
我が家は山の中にあって、裏がお墓と竹藪、右隣は中原神社、左隣は井上神社があって、どこも遊び場だった。
父親は子供の頃、近所で葬式があると、リンが飛んで墓場のほうに行くのを見たと言う。リンというのは青白い炎のようなもので、人の魂だと考えていたらしい。
近所の人は車で家に帰ろうと思っても同じ場所ばかりぐるぐる回って帰れなくなったので、狐に化かされたと話していた。
私は小学生の頃、部屋で寝ているとよく金縛りにかかった。古い家の天井からネズミや猫や蛇?が走る音が聞こえていたものだ。ある日、夜中に押し入れから音がすると開けてみると、2匹の蛇がトグロを巻いてカゴの中にいた。その蛇は青大将と言って、家の守り神になるから殺してはいけないというので、父親が外に捨てに行った。何日かしてすぐ近所の家の人が「家の中に蛇が出た」と言っているのを聞いて、うちで捨てた蛇に違いないと思ったものだ。
父の父、つまり私の祖父は戦争に行って、終戦後、帰ってきたもののすぐに亡くなった。拝み屋のお婆さんが「◯◯が、蛇を振り回して遊んだ祟りだ」と言ったらしい。◯◯とは、父の弟で私にとっては叔父にあたる人だ。そんなこと言われたら傷つくよなあ。だから蛇を大事にするのかとも思った。
拝み屋。いたよなあ。二十代の頃、両親に連れられて結婚を占いに行ったことがある。あれも拝み屋だったような気がする。何を言われたのか覚えていないけれど、結局、私の人生に結婚はなかった。すまんなぁ両親。
話はまた元に戻るが、昔の古い家は、いろんなものが住んでいた。いろんなものが寄ってきた。
イタチがてんかふ(ベビーパウダー)を抱えて階段を走って登っているのを母は見たらしい。てんかふ? 何のため?
縁の下には、マムシを焼酎に漬けたものを置いていた。消毒薬として使っていたのだ。そうだった、今みたいに薬は買うのではなくて作っていた。切り傷にはよもぎを採ってきてすり込んだり、アロエをポキンと折って塗ったりしていた。薬草だ。
マムシの焼酎漬けは毒消になる。縁の下は適度にひんやりとして保管場所に良かったのだろう。子供の頃、縁の下から取り出して、緑色の瓶に入ったマムシがゆらりゆらりと焼酎の中で揺れるのを見るのが好きだった。不気味な子供だ。
いとこの兄ちゃんと蜂の巣に石を投げて遊んでいたら、蜂に追いかけられ私だけ刺された時もこれを塗った。
またある日の明け方、なんだかこそばゆくて目を覚ましたらムカデが左手を這っていた。とっさに振り落としたがチクリと噛まれた。この時も塗った。そしたら手が熱を帯びてパンパンに腫れてしまった。痛くはないが1日不自由した。財布から小銭を出そうと思っても手がパンパンなので掴めなくてお店の人にとってもらった覚えがある。この前テレビを見ていたら、蛇とムカデは相性が悪いみたいなことをしていた。ああ、それでムカデの毒消しにはならなかったのだと何十年かぶりに謎が解けた。
昔はよくも平気でいろんなことをしていたものだ。
自然の生き物と隣り合って暮らしていたから、動物だけじゃなくて妖怪が出たっていいのにな。そんな気配がある世界の方がいいなと思う。

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