商業施設は、最高のサードプレイスになれるのか
生活のすべてを自給自足できない現代社会において、買い物は生命や生活の基盤を支えるために欠かせない行為だ。
また、店員とのやり取りや街の活気に触れることで社会とのつながりを感じ、自分の好きなものを選ぶことで精神的な充足も得られる。
ふと思った。
身近にある商業施設は、家でも職場でもない『サードプレイス』として機能するのではないか。
実際の自分の行動を振り返りながら考えてみた。
私が定期的に食料品や日用品を買うのはスーパーマーケットである。
イオンモールのような巨大な商業施設ではない。
スーパーには日常のちょっとしたぜいたく品を買う余地はあるが、少し休憩する、人と話すといった余白はほとんどない。
ほしいものを買ったらすぐ帰宅することが多いし(冷蔵・冷凍品があればなおさら)、仕事帰りであればなおさらだ。
おそらくスーパー側も、客が長居することを前提とした構造にはしていない。
一方、商業施設には近所にあったり、目的地の近くに偶然あったりした時に足を運ぶ。
とくにほしいものがなくても、便利な雑貨や好みの服があり、家電や健康器具を吟味することもできる。
魅力的な飲食店や活気あるイベントもあり、楽しさは感じる。
でも、ひととおり楽しんだら、さっさと帰りたくなるのだ。
ただし、最近の商業施設は本当によく努力している。
買い物だけでなく、地域の人が集まり、長く快適に過ごせる「サードプレイス」を目指し、快適な空間づくりや地域社会との共生、多様な体験の提供に力を入れている。
・館内にソファやベンチを配置し、空調管理された室内で誰でも無料でゆったり休める工夫
・緑や広場を囲んだ、新しい形のにぎわい・交流スペースの創出(私は見たことがないが)
・行政や地域の窓口スペースの貸し出し
・駐車場や広場を使った地域のお祭りやイベント開催
・文化教室、子育て支援、習い事、フィットネス、コワーキングスペースなど
サードプレイスとしては、これ以上ないほど正しい。正しくて、完璧だ。
でも、なぜ私はそこに魅力を感じないのだろうか。
個人的な見解を述べてみたい。
子育て世帯中心のイベント
商業施設のイベントは子ども向けが多い。
単身者にとっては興味がないだけでなく、疎外感を覚え、むしろ避けてしまう。
やはり消費が前提となる
最近のイベントは資産形成、健康相談、保険相談、推し活など多種多様だ。しかし、ひととおり説明が終われば、契約だの商品だの、結局は「お金がかかる」話に行き着く。
もちろん、実際にそんなことを言われたことは一度もない。
それでも、「お金を使わない人はとっとと帰れ」という空気を感じてしまうのだ。
地域のお祭りは嫌いな人も多い
私は比較的お祭りが好きなほうだが、嫌いな人もたくさんいる。また、参加への同調圧力がある場合は、やはり忌避したくなる。
集まってほしいターゲットがどこかわからない
子育て支援、フィットネス、コワーキングスペース……いろいろありすぎて、誰に来てほしい場所なのかがわからない。
子ども、単身者、ビジネスパーソン、高齢者。これらすべての人が同じ空間で居心地よく過ごせる場所というのは、たぶん成立しづらい。
子育て世帯とは別に単身者向けの場所を作るなど、ある程度のすみ分けをしたほうが建設的だと思う。
文化・コンセプトが感じられない
人が集まり、根付く場所には必ず独自の文化やコンセプトがある。
高級ブランドが入るデパートでの買い物がステータスになったり、ファッションビルが若者文化の発信地になったりするように、その場所ならではの意味が生まれている。
しかし、多くの大型商業施設はどうだろう。
全国どこへ行っても同じブランド、同じテナント構成の金太郎飴状態だ。
便利ではある。しかし、「この場所だから来たい」と思わせる個性は感じにくい。ただ消費を促すための無機質な箱に思えてしまい、愛着を持てるほどのコンセプトは感じられない。
「だれでも無料」が抱える難しさ
コンセプトは素晴らしい。
しかし、誰でも無料で空調管理された場所というのは、悲しいかな、治安やマナーが悪化しやすい。
そういう場所には、あまり長居したくない。
個人的には、お金を払ってでも席と安心を提供してくれるカフェのほうが、居場所として落ち着く。
わざわざ行かなければならない立地
とくに地方の商業施設に多いが、多くは「車でわざわざ行く場所」である。
通勤途中にふらりと立ち寄れる駅や、道すがらのカフェのような気軽さはない。
負の側面ばかりを書いてしまったが、商業施設がサードプレイスを目指していること自体は、とても良いことだと思っている。
行政や地域の窓口は便利だし、地域のイベントも悪くない。
使い勝手の良いフィットネスがあれば、買い物がてら利用してみたい。
上で「誰でも無料で休める場所」を批判したが、治安さえ維持できれば決して悪いコンセプトではない。
私が商業施設に魅力を感じきれないのは、今はそこでゆっくり過ごす時間がなく、わざわざ行く場所よりも、通勤や用事の途中で立ち寄れる「駅」や「カフェ」のほうが、今の自分のライフスタイルに合っているからなのだと思う。
もちろん、「イオンモールが大好きで、休日は必ず行く。商業施設こそサードプレイスだ!」という人の意見も、ごもっともだと思う。
いつか私に余裕ができ、商業施設でゆっくり過ごせる日が来るまで、この場所が、誰かにとってのより良いサードプレイスとして発展していくことを願っている。
