メンデルスゾーン
序曲「フィンガルの洞窟」
暗い青が地を這い
重低音のうねりがせり上がり
たちまち押し寄せるロ短調の大波が
漆黒の玄武岩を噛み砕くように激しく濡らす。
洞窟の奥へと狂ったように滑り込んで冷たいこだまを撒き散らした、その刹那。
一気につり上がる、狂気の白波。
断崖に激突して粉々に砕け
飛び散る無数の破片が
冷たい飛沫となって額を容赦なく打ち据え
烈風の咆哮が、鉛色の雲を、一気に、引き裂く。
引き裂かれた闇の裂け目から
吹き抜けた一筋の風は
あまりにも美しく、切ない、一本の光の線。
それが波の背を鮮やかに滑り落ち
激しい嵐の余韻をその身に包み込みながら
満ちては、引き、
引いては、満ちる、
果てしない海のうねりへと融けて
すべての色彩が
水平線の彼方へと
一気に
駆け抜けて
消えてゆく…。
いすみん
