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ブラックミュージック連載第3部第1話 ニューヨーク再生

王が消えた街

1997年

Christopher Wallace
(クリストファー・ウォレス)

The Notorious B.I.G.
(ノトーリアス・B.I.G.)

東海岸の象徴は消えた。


ヒップホップの中心にいた存在が
いなくなった。

だが街は止まらない。
クラブは開く。
音は鳴る。
若者は集まる。
ラジオは流れる。

ヒップホップは終わらなかった。

むしろ空白が生まれていた。
象徴のいない空白。

そして空白は
必ず誰かが埋める。

ニューヨークは
静かに次の時代へ向かっていた。



別の種類の男

同じ街に別の男がいた。

Shawn Carter
(ショーン・カーター)
後に
Jay-Z(ジェイ・ジー)
と呼ばれる存在。


Brooklyn(ブルックリン)
Marcy Projects(マーシー・プロジェクト)
低所得者向けの公営住宅。

多くの若者が
抜け出すことを夢見た場所だった。

貧困。犯罪。ドラッグ。暴力。

この家庭も
これまでの物語と変わらず
父親はいなかった。

環境はThe Notorious B.I.G.と似ていた。

だが内面は違った。

彼は
ラップスターを夢見ていたわけではない。
どうやって上に行くかを考えていた。

その方法は一つではなかった。 
ラップもその一つにすぎなかった。



ストリートの現実


若い頃の彼は
ドラッグディーラーだったと語っている。

生きるため。金のため。
選択肢は多くなかった。

だがそこで学んだものがある。
計算。判断。リスク管理。資本感覚。

後に彼は言う。
「俺はビジネスマンだ」

これは誇張ではない。
現実だった。

彼にとってラップは手段だった。



扉は開かなかった


彼はラップを始める。
だが音楽業界は興味を示さない。
契約は取れない。
新人。無名。すでに26歳だった。

若手と呼ばれるには
遅いと見なされた。

市場価値は
低いと判断された。

普通ならここで終わる。
だが彼は違った。



自分で作る

1995年
Damon Dash(デイモン・ダッシュ)
らと共に
Roc-A-Fella Records
(ロック・ア・フェラ・レコード)を設立。

自分たちで会社を作る。
資金も自分。販売も自分。
すべて自分。

これは当時異例だった。
ラッパーが企業を持つ。
発想がすでに経営者だった。

ヒップホップは

次の段階へ進み始めていた。



転換点

1996年
Reasonable Doubt
(リーズナブル・ダウト)

デビューアルバムだった。

評価は高かった。
だが最初は爆発的成功ではなかった。

ストリートでは支持された。
だが主流ではない。

まだ王ではなかった。

しかし業界は気づく。
知性。ストリート。現実。洗練。
それまでのラッパーとは違う。

やがて
Vol. 2… Hard Knock Life(1998)。

状況が変わる。
大成功。

Jay-Zはトップへ登り始める。

ニューヨークの中心に
新しい存在が現れた。



ニューヨーク再生


Christopher Wallaceの死から
わずか数年。
ニューヨークには新しい象徴が生まれていた。

Jay-Z

彼は王の代わりではなかった。
新しい種類の王だった。
暴力ではない。資本。
戦争ではない。経営。


ヒップホップは

カルチャーから産業へ変わる。


その中心に彼がいた。

ニューヨークは
再び動き始めていた。



帝国への道


Jay-Zは音楽だけに留まらなかった。

ファッション。アルコールブランド。
スポーツ事業。企業投資。
事業は拡大していく。

そしてついに
ヒップホップ初の
ビリオネアになる。


Brooklynの団地の少年が
世界の富豪になる。

それは個人の成功ではない。
文化の進化だった。

ヒップホップは完全に産業になった。



再生


王は消えた。
だが空白は残らなかった。

街は自分で立ち上がる。

ヒップホップは
誰か一人のものではなくなった。

暴力ではなく構造。
感情ではなく戦略。

ニューヨークは
形を変えて再生していった。



次回予告

ブラックミュージック連載第3部
第2話 Jay-Zの時代

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