第3回:ビジネス編「『動詞』のマネジメント」― 組織をネットワークとして捉え直す ―
前回は、
「観測者(あなた)が世界を創っている」
というお話をしました。
今回は、その考え方を「組織」という現場に当てはめてみます。
私が50代半ばで、222名の組織の責任者を務めていたときの実体験を通して、 「名詞のマネジメント」から「動詞のマネジメント」へ切り替えたときに何が起きたのか をお伝えします。
組織は「部品の集まり」ではない
当時の私は、極端に表現すると組織をどこか
「思い通りに動かすべき機械」のように捉えていました。
それは、部下は部門の方針までは作れないから、自分が作って何とか導いてやらねばと思っていたからです
名詞のマネジメント(以前の私)
自分が方針を決め、部下に指示として展開する。そして、部下はそれを実行する。
一見、効率的に見えますが、実際には部下を「決められた方針を実行する存在」として見ていたのです。
たった一つ変えたこと:「訊く」
あるとき、私はこのやり方をやめてみました。
代わりに選んだのが、
「訊く」という関わり方(動詞)です。

ここでいう「きく」は、単に耳で情報を受け取る「聞く」ではありません。相手の中にある考えや意志、可能性を引き出そうとする関わり
それが、あえて「訊く」と表現している意味です。
つまり、「聞く」=受け取る。「訊く」=引き出す
「訊く」とは、相手を“答えを持っている存在”として扱うことでもあります。この違いが、組織のエネルギーを大きく変えることになります。
10名ほどの部所長を集め、こう問いかけました。
「どんなアイデアがある?」
「どうすれば、現場はもっと良くなるだろう?」
ただそれだけです。
「訊く」ことで何が起きたか
すると、これまでとはまったく違う現象が起きました。
①「自分事化」が起きた
部所長たちがプロセスに関わったことで、施策は「やらされ仕事」から
「自分たちが決めたこと」へと変わりました。
その瞬間、行動のエネルギーが一気に高まります。
②「意図」がそのまま自分たちの言葉で伝わるようになった
自分たちで考えた施策だからこそ、意図を深く理解しています。
そのため、参加した部所長が部下に伝えるときも、
言葉に自然と“熱”が乗るようになります。
③ 組織全体に「波及」した
一人のリーダーの小さな変化が、
部所長 → 現場 → 組織全体へと広がりました。
結果として、
成果は予想を大きく上回り、成果はもちろんですが、なにより部下たちがイキイキしてきたことが何より嬉しく思いました。そして、全国のベンチマーク先として注目を集めました。
もちろん、これだけではなく、問題・課題解決や提案・プレゼンの体験学習会やベンチマークなど、考えられる体験を積んでもらいましたが、このことがきっかけになったのは確かです。
なぜ「訊く」だけで成果が変わるのか?
この変化は、これまで見てきた3つの視点でも説明できます。
① 物理学の視点
リーダーが「答え(固定)」を押し付けるのではなく、「問い(可能性)」を投げかけたことで、新しい相互作用(対話)が生まれた
その結果、組織全体の状態が変化した、と言えます。
② 仏教の視点
リーダーの役割を「支配する人」から「場を整える人」へと変えたことで、人の知恵が引き出される“縁”が整った
結果として、成果が自然に生まれました。
③ 選択理論の視点
相手を動かそうとする関わり(外的コントロールを使うボスマネジメント)から、 相手の内側から動きを引き出す関わり(内発的動機付けのリードマネジメント)へと変わったことで、
部下が「自分でやる」と選ぶ状態になったということです。
まとめ:マネジメントは「指示・伝達」ではなく「訊くと言う関わり方」
222名の組織を動かしたのは、
強いリーダーシップではありませんでした。
「良い問いかけ(訊く)」という関わり方でした。
リーダーが「答え」を手放したとき、組織には「知恵」と「エネルギー」があふれ出すということかも知れません
もし今、組織に行き詰まりを感じているなら、 「指示する」前に「訊く」この一歩から始めてはどうでしょうか。
次回予告
第4回は実践編
👉幸せな関係をつくる『相互作用』の変え方」
家庭や職場ですぐに使える、具体的なコミュニケーションの「型」をお伝えします。
