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「Copilotが使えない」と言える社員は、実は次のAIを使う準備ができている【製造業の社内AIアンバサダー#4】

「資料作成を頼んだら文字化けした」 「指示通りのアクションをしてくれない」 「ハルシネーションが怖くて業務には使えない」

最近、社内からこんな声が上がり始めました。

私はメーカーの営業をしながら、社内のAI活用を推進する「AI Ambassador」という役割を担っています。

社内の状況から、Copilot一本に絞ってAI活用を進めていました。営業、オフィスマネージャー、ロジスティックスと少しずつ成功体験が積み重なり、他のメンバーもAIに触れることが増えてきた中、不満の声がちらほら聞こえ出したのです。

正直、焦りました。せっかく少しずつ成果が出てきたのに、また使わなくなってしまうかもと。

でも、よく考えてみると、この不満には大事な意味がありました。「使えない」と言えるのは、使った経験があるから。つまり、社員のAIリテラシーが確実に上がっている証拠なのです。

ならば、不満を感情論で片付けるのではなく、事実を集めて構造化しよう。Lean Six Sigmaの手法「DMAIC」を使って、社内で納得してもらいやすくロジカルに。(直接の業務改善ではなくても、ロジカルに考える際にDMAICは役立ちます)
今回は、その時の内容を記事にしました。社内でAI活用推進をしている人の参考になれば幸いです。


この記事でわかること

  • Copilotが「使えない」と言われる構造的な原因(世界的なデータで検証)

  • なぜ「Copilot一本」ではなく「2つのAIの使い分け」が最適解なのか

  • Copilot × Claude(ChatGPT)の具体的な使い分け方法

  • AI Ambassadorとして社内でどうアクションを取ったか




1.Define(問題を定義する)

まず、社内の声を整理しました。不満は大きく4つに分類できます。

① 文字化け・出力崩れ — 日本語フォントや言語設定に起因する問題。
② 指示通りに動かない — プロンプトの意図を正確に汲めない。
③ ハルシネーション — 事実と異なる情報を自信満々に出力する。
④ 信頼性・安定性への不安 — 「なんとなく信用できない」という感覚。

ここで大事なのは、これらの声を「ユーザーの理解不足」と片付けないことです。ウェブ上で調べてみると、同じ不満が世界中で共有されていました。

2.Measure(事実を数字で把握する)

ウェブ上のデータを徹底的に収集しました。以下はいずれも出典を確認した数字です。

  • 精度に関するNPS:−19.8 (出典:Recon Analytics調査、2026年1月、米国ユーザー対象)

Copilotの「回答精度」に対するNPS(推奨度スコア)がマイナスということは、精度を信頼する人よりも「信頼できない」と感じる人の方が多いことを意味します。時系列で見ると、2025年7月の−3.5から9月に−24.1まで悪化し、1月に−19.8まで持ち直したものの、依然として負のままです。

ただしこれは「精度」に限定した指標であり、製品全体の満足度ではありません。また第三者検証された業界標準の指標でもない点に留意が必要です。

  • M365商用シートに占める有料Copilotの比率:3.3% (出典:Microsoft FY26 Q2決算発表、2026年1月28日)

MicrosoftはこのQ2決算で初めてCopilotの具体的な数字を開示しました。M365の商用シート約4.5億に対し、有料Copilotは1,500万シート。Copilotを8四半期にわたり推進してきた中での数字です。なお、全M365ユーザーがCopilot対象プラン(Business/Enterprise)であるとは限りません。

  • 複数AI利用可能環境での選好:ChatGPT 76% vs Copilot 18% (出典:Recon Analytics調査、米国の職場ユーザー対象)

CopilotとChatGPTの両方が使える環境では、76%がChatGPTを選択しています。ただし、Copilotのみが提供されている環境では利用率68%に達しており、ユーザーの自発的な選好と企業のツール提供方針で数字が大きく変わる構造です。

  • 利用規約「娯楽目的のみ」問題 (出典:TechCrunch、Tom's Hardware等、2026年4月報道)

2026年4月、Microsoftの利用規約(最終更新2025年10月24日)に「Copilot is for entertainment purposes only(Copilotは娯楽目的のみです)」と記載されていたことがSNSで拡散し炎上しました。Microsoftは「Bing Chat時代のレガシー文言であり、次回更新で修正する」と回答しています。なお、M365 Copilotの法人契約は消費者版の利用規約とは異なります。

  • Copilot冠称の数:81 (出典:AI戦略コンサルタント Tey Bannerman氏調査、2026年4月9日時点)

Bannerman氏がMicrosoftの製品ページ・発表資料を網羅的に調査した結果、「Copilot」の名前が付いた製品・機能・ブランドが81個確認されました。アプリ内機能やハードウェアブランド(Copilot+ PC)、開発者ツール等を含む数字であり、すべてが独立した製品ではありません。ただし、「どのCopilotが何をするのか分からない」という混乱は十分に裏付けられます。

3.Analyze(なぜ起きているか)

数字を集めた上で、原因を構造化すると5つに集約されました。

① 期待値のミスマッチ
「万能AI」を期待しているが、Copilotの設計思想は「M365統合型の業務補助AI」です。ChatGPTのように何でも答えてくれるAIを想像すると、ギャップが不満になります。

② 日本語処理の未成熟
英語環境で開発されたツールのため、日本語の精度は構造的に劣ります。文字化け、不自然な敬語、指示の誤解釈はここに起因します。

③ ハルシネーションはLLM共通の課題
Copilot固有の問題ではなく、ChatGPTやClaudeでも起きます。ただし「会社が公式導入したツール」で起きると心理的インパクトが大きくなります。

④ 一度の失敗体験が再挑戦を止める
ある企業の社内調査では、Copilotで一度失敗したユーザーのほとんどが、その後の新機能にも手を出さなくなっていました。「高いお金をかけているのに使えない=AIってそういうもの」と結論づけてしまう構造です。

⑤ 強み/弱みの切り分けがされていない
Copilotには明確な得意領域(M365データとの連携、議事録、メール下書き)があるのに、「何にでも使えるはず」という前提で使われてしまい、弱い領域で失敗体験が蓄積されています。

ここまで分析して、私はひとつの結論に達しました。

問題の本質は「Copilotが使えない」ことではなく、「Copilot一本で全てを賄おうとしている」ことだ。

4.Improve(2つのAIを使い分ける)

「Copilotが使えない」は"卒業証書"だった

社員がCopilotに不満を感じるということは、AIを実際に使い、その限界を体感し、「もっと良い結果が欲しい」と思えるようになったということです。これはAI活用の成長プロセスそのものです。

このタイミングで2つ目のAI(Claude/ChatGPT)を導入することで、AI活用を次のステージに引き上げることができると判断しました。

Copilot vs Claude/ChatGPT — 何が違うのか

そもそもCopilotとClaude/ChatGPTは、設計思想が根本的に異なります。

Copilotの本質:M365に統合された業務サポートAI

CopilotはMicrosoft 365の中で動くことを前提に設計されています。Outlook、Teams、Word、Excel、PowerPoint、SharePointと直接つながり、社内のメール・会議記録・ファイルを参照して出力を生成できます。これは他のAIには真似できない決定的な強みです。2026年3月時点でCopilotのバックエンドにはGPT-5.4 ThinkingやGPT-5.3 Instantが使われており、さらにCopilot Studio経由でAnthropicのClaude(Opus 4.6 / Sonnet 4.5)やGoogleのGeminiも選択可能なマルチモデル構成に進化しています。セキュリティ面でも、法人プランではテナント内でデータが処理され、顧客データがモデル学習に使われることはありません。

Claude/ChatGPTの本質:汎用的な思考・分析パートナー

Claude(Anthropic社)とChatGPT(OpenAI社)は、いずれも独立したAIアシスタントです。M365との統合はないため、使うときはブラウザやアプリに切り替える必要があります。しかしその分、特定のエコシステムに縛られず、純粋な言語能力で勝負しています。

Claudeは長文の読解・分析・構造的な文章生成に特に強く、200Kトークンのコンテキストウィンドウで数百ページの文書を一括処理できます。複雑な指示への追従性能が高いことでも知られています。ChatGPTは汎用性と多機能性(画像生成、コード実行、プラグイン連携、音声対話)に優れ、世界で最も多くのユーザーに使われているAIです。

実務での使い分け:何をどちらに任せるか

原則はシンプルです:

  • M365の中で完結する業務 → Copilot一択。データ連携・セキュリティの強みが活きる

  • 「考える」「分析する」「正確に書く」仕事 → Claude / ChatGPT。純粋な言語能力で勝る

  • 社外に出す重要文書 → どのAIを使っても、最終確認は必ず人間が行う

なぜ「使い分け」が最適解なのか

複数AIを使える環境でユーザーがChatGPTを圧倒的に選ぶ(76%)という調査データは、Copilotが「ダメ」という意味ではありません。汎用的な質問応答や自由な思考作業にはCopilotが向いていないということです。

逆に、CopilotにはCopilotにしかできないことがあります。TeamsやOutlookの中で直接AIが動く体験は、他のどのAIにも実現できません。

だからこそ、得意領域で使い分けるのが、現時点での最適解です。

社内で実際に動いたこと

AI Ambassadorとして、以下のアクションを実行しました。

① 「困りごとアンケート」の即時実施
Formsで5問のミニアンケートを配布し、「どんな業務で」「どんな問題が」「どのくらいの頻度で」起きているかを定量化。回答結果は全社に共有し、「声を拾っている」ことを可視化しました。

② Copilotの「得意/不得意マップ」配布
上記の使い分け表をベースに、「この業務ではCopilot」「この業務ではClaude」と一目でわかるガイドを社内に共有。期待値のリセットと、2つ目のAIへの自然な誘導を両立させました。

③ Copilot出力の検証SOPを策定
ハルシネーション対策として、3ステップの検証フローを明文化しました。

  • ステップ1:出力を受け取る → そのまま使わない(鉄則)

  • ステップ2:数値・固有名詞・URLは必ず原典で確認

  • ステップ3:社外向け文書は必ず人間がレビューしてから送付

「AIを使うな」ではなく「AIを安全に使うための共通ルール」として浸透させました。

④ 「entertainment purposes only」問題への先回り周知
Microsoftの利用規約問題がSNSで炎上したことを受け、指摘が入る前に社内向けの3行メモを配信。法人契約と消費者版の違いを説明し、不安の拡大を防ぎました。

5.Control(続ける仕組み)

カイゼンは導入して終わりではありません。DMAICの最後のフェーズ「Control」として、継続的な仕組みも整えています。

月1回のアップデート共有会 — Microsoftの更新情報と社内の成功事例を5分で共有。「先月ダメだった機能が改善された」という情報を届け、一度の失敗で完全離脱するのを防ぎます。

AI使い分けガイドラインの定期更新 — AIの進化は速いため、使い分けの基準も3ヶ月ごとに見直します。

効果測定 — 時間削減効果、問題発生件数、ユーザー満足度を追い続けます。データがあれば、経営層への報告も説得力を持ちます。


今日できること

もしあなたの職場でもCopilotをメインで使用していて、不満の声が出ているなら、それはAI活用が次のステージに進むサインです。

まずは、こんなことから始めてみてください。

  1. 社内の不満を5問のアンケートで定量化する — 感覚ではなく、数字で把握する

  2. Copilotの得意/不得意を1枚にまとめて共有する — 期待値をリセットする

  3. 2つ目のAI(Claude/ChatGPT)を「分析・思考用」として試してみる — 使い分けの効果を体感する

「使えない」という声は、後退ではなくカイゼンの種。その種をDMAICで育てれば、組織のAI活用は確実に一段階上がります。

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