今これだけは頭に入れておきたい⑤「安全」~AIが天才ハッカーを量産する~
お疲れ様でございます。
暑いですね。
クーラーがある時代に生まれて、本当に良かったと思います。
暑い夏でも快適に過ごせますし、熱中症から身を守ってくれます。考えてみれば、クーラーは「安全・快適・便利」を同時にかなえてくれる製品です。
独立研究者の山口周さんは、「安全・快適・便利」という、人類が求め続けてきた課題は、ほとんど解決されてきたとおっしゃっています。
ビジネスとは人類が抱える課題を解決することなのに、その課題自体が少なくなっていると。
言われてみれば、確かにそうですよね。
その一方で、テクノロジーが進化すると、必ず新しい「安全性」が問われます。
インターネットによって生活は便利になりましたが、サイバー攻撃という新しい脅威が生まれました。AIによって仕事は効率化しますが、そのAIが攻撃にも使われ始めています。
安全は、一度実現すれば終わりではありません。
新しい便利さが生まれるたびに、新しい危険が生まれ、安全をつくり直す必要があります。
私は、この「安全」という分野には、まだまだ大きなビジネスチャンスがあると思っています。
そして、安全は有力な投資テーマにもなる。
今回は、「安全」について書いていきたいと思います。
鍵を閉め忘れた瞬間を、AIは見逃さない
これまでのサイバー攻撃は、泥棒が一軒ずつ家を回り、鍵が開いていないか確かめるようなものでした。
ところが、AIの登場で状況は変わりました。
何万軒もの家を24時間監視し、うっかり鍵を閉め忘れた瞬間を見つけて、一斉に侵入できるようになったのです。
これは怖い・・・。
さらに、家主も鍵のメーカーも知らない欠陥まで見つけます。開発会社さえ気づいていない弱点を突く「ゼロデイ攻撃」です。修理方法がない段階で攻撃されるため、守る側は後手に回ります。
米アンソロピックの「クロード・ミュトス」は、こうした未知の弱点を見つける能力に優れています。
ただ、本当に怖いのは特定のAIではありません。
パロアルトネットワークスの調査によると、AIなどの活用でサイバー攻撃のスピードは1年前の4倍になりました。侵入からデータを盗み出すまで、最短72分です。
これまで一部の天才ハッカーにしかできなかったことを、AIが休まず繰り返します。
攻撃の腕前だけでなく、規模と速度がまるで違います。
しかも、AIは眠りません。

AIに、会社の鍵をどこまで渡すのか
AIエージェントは、これから「人間以外の従業員」になっていきます。
仕事をさせるには、社内システムや顧客情報へのアクセス権限が必要です。メールの送信、資料の変更、場合によっては注文や支払いも任せることになります。
では、社内にAIエージェントが何十、何百と増えたらどうなるのか。
どのAIが何を見られ、誰の指示で何を実行したのか。問題が起きたとき、誰が責任を負うのか。
これを管理できなければ、企業自身も分からないところで、AIに大量の合鍵を配ることになります。
AIエージェントが乗っ取られれば、攻撃者は外から鍵を壊す必要すらありません。
正規の鍵を持ったAIに、内側から扉を開けさせればよいのです。
これが怖いよね。
社員が正当な業務だと思って犯罪者を招き入れるみたいな。
特に影響が大きいのが金融機関です。
銀行や決済網、証券取引所が同時に止まれば、単なるシステム障害では済みません。金融システム全体への信用不安につながります。
だからこそ、金融庁にも、金融機関を検査して処分するだけでなく、日銀や金融機関、政府機関をつなぐ「金融安保の司令塔」としての役割が求められています。
サイバーセキュリティーは、もはやIT部門だけの話ではありません。
企業経営の問題であり、国家の安全保障です。
AIに消されるソフト、AIを守るソフト
では、投資ではどう考えればよいのでしょうか。
ソフトウエア株を一括りにして買う局面ではないと思っています。
S&P500ソフトウェア&サービス指数は、7月14日時点で年初来18.7%下落しています。AIインフラ関連が大きく上昇する一方、ソフトウエア株は取り残されました。
なぜか。
AIエージェントが、従来型ソフトウエアの収益モデルを壊し始めているからです。
これまでのSaaS(企業向けアプリケーションソフト)は、利用者やIDが増えるほど売り上げが伸びました。しかし、AIが複数のシステムをまたいで仕事を終わらせれば、人間が各ソフトを操作する機会は減り、企業も契約数を見直すでしょう。
使いやすい画面だけのSaaSは、厳しくなると思います。
一方で、AIが増えるほど必要になるソフトもあります。
AIを動かすPaaS(開発・運用基盤)、IDやアクセス権限の管理、利用状況の監視、データ保護、クラウドセキュリティーです。

私は、AIに代替されるソフトより、「AIを動かす・管理する・守るソフト」を重視したいと考えています。
見るべきなのは、決算資料に「AI」という言葉が何回登場したかではありません。
・AIやデータの利用増を売り上げに変えられるか
・更新契約によって収益を安定させられるか
・AI機能を増やしても、計算コストに利益を食われていないか
私は、この3点で選びたいと思います。
ただし、サイバーセキュリティーの必要性が高まっても、関連株を何でも買えばよいわけではありません。
競争で価格が下がり、計算コストが膨らめば、売り上げが伸びても利益は残りません。
やはり、ここでも勝ち組と負け組の選別は進みます。
良い企業でも、どんな株価で買ってよいわけではありません。
上昇を追いかけず、数回に分けて買う慎重さは必要でしょう。
具体的な銘柄を知りたい方は、サイバーセキュリティー関連の投信が保有している銘柄を調べてみるのも一つです。
個別株を選ぶのが難しければ、投信をそのまま買う方法もあります。
クーラーが暑さをなくしたわけではありません。
暑さの中でも、安全で快適に暮らせるようにしたのです。
サイバーセキュリティーも同じです。
サイバー攻撃を完全になくすことはできません。それでも、攻撃されることを前提に、私たちの生活や会社を守り続ける仕組みはつくれます。
AI時代に生き残るのは、人間が操作するためだけのソフトではありません。
AIを安全に働かせるためのソフトです。
この文章が誰かのお役に立てていたら嬉しいです。
ではでは。
