【外伝】お母さん太郎
鬼ヶ島へは意外に直ぐついた。
桃太郎の操る〝犬〟超戦闘様ホバークラフトで。
桃太郎はZ世代でクレバーだった。
「たった1人で挑むんだ、最新AI〝赤猿〟とドローン軍団〝鉄雉〟がバックアップしてる。これが現代の戦だよお母さん太郎よ」
お母さん太郎の家にはリモコンすら無かったので
「…あっ?うんうん、そうやね〝どろ〜ん〟ね!そっちのほうのヤツやん、あいつ気さくなひょうきん者やもんな桃兄ちゃん!」とか言いましたがスルーされました。
何故かハナちゃんの顔が真っ赤でした。
上陸作戦程不利な戦いは無い。
「お母さん太郎よ!俺が浜の尖兵を殲滅する間に遊軍として中心部を攻めて欲しいのだ!」
ゴクリ…
お母さん太郎は生唾を飲み込んだ、たしかにハナちゃんの機動力で敵を翻弄しつつ数を減らす、合理的な陽動だ。
自爆ドローン部隊の価値もそこにある。しかし危険もMAXだ。島津家の戦い方だ。
「…臆するな!引けば老いるぞ!日の本の兵、戦の本懐此処にあり!」
お兄ちゃんは本気だった。花の慶次みたいに彫りが深くなっていた。
だがしかし、浜に着いた俺達を迎えたのはなり損ないの鬼だったモノばかりだった。
殺すまでもない。
もう生命の炎はつきかけているのがわかった。
「…どういうことやねん?鬼ってめっちゃ強いんちゃうんかい?」
桃太郎は言った。
「何かが起こっている、この鬼ヶ島で!我等兄弟はテレパシーで意思疎通出来る様だ。何かあれば共有する事を覚えておけ。」
俺は違和感を感じながらも
「桃兄ィ!一番槍は頂くぜ!」
ハナちゃんに乗り浜を走り出した。
「…バカ太郎、槍持ってないだろうが…」
桃太郎はお母さん太郎の後ろ姿に目をやる。
膝を落とし霞む視界でお母さん太郎を見つめる。
「…お母さん太郎、お前は大丈夫だ…ふふっ、桃兄ィか…悪くない…な…」
一方お母さん太郎は敵の本拠地目指して駆け上がる!
「うおぉぉぉぉぉ!!全員シバきあげたらぁ!」
しかし城までの道中大した敵は居なかった。
ゾンビの様に徘徊し目的も戦意も垣間見る事は無かった。
(もしや他の太郎に先に落とされたのか?)お母さん太郎はテレパシーで桃太郎を呼んだ。
(桃兄ィ!何かおかしい?鬼たちに戦意が感じられん!)
何かを感じているのか、ハナちゃんが辺りを警戒するそうに耳を立てる、そして王城の門は不気味な音をたて開く…
(…必ずそっちに行く!城には1人で入るな!)
しかし中から聞こえるうめき声が暗黒の風に乗って吐き出されるのだ。
暗い、誰かを呪う地獄の底から響く鳴動。
その穴の奥に求める真実があるのだ。
お母さん太郎は幼き頃より力が強くあずきバーを素手で粉砕出来た。
母は「お母さん太郎、偉いねぇ~!お母さん嬉しいわ!」と褒めるので目に入るあずきバーは粉砕してきた。
保育園では何故か避けられ苛められる様になった
のだ。
(母の望む事をしているのに何故?)と悩んだ。
だが俺が強い上にその攻撃力が自分に向くかも知れないと感じたのか4歳の頃はただ孤独だった。
あらゆる武道をマスターし、修業に明け暮れた。
ハナちゃんだけが心の拠り所だった。
(何で俺だけがムキムキやねん?何でみんなと違うねん?)
母に問うも「…ごめんなさいお母さん太郎…」と泣くばかり。
ジジイは言った。
「鬼ヶ島シバいたらええんとちゃう?」
ババアが言った。
「生活費いつくれるんや?」
鬼ヶ島の鬼たちを絶滅させるしか道は無かった。
そして今、本丸の前に居る。
俺は桃太郎を待たずに奥に進んだ。
最深部に居たのはコンピューターを操作するマッドサイエンティスト唯一人だった。
「…来たか、我が息子よ…」
後ろ姿でいきなり重大発表をしやがる!
「…何だと!おとう…パパ…いやコノヤロー!」
「お母さん太郎よ!そいつは人類の敵だ!」
そう叫んだのは桃太郎、瀕死の状態で両脇にジジイとババアがいた。
「桃兄ィ!あと何でおるねんお前ら!」
マッドサイエンティストは話しだした。
「そいつらはワシを狙う政府のエージェント、桃太郎は私の遺伝子工学で作り出したレプリカントだ。」
フルーツなど賞味期限が知れている。
「…まさか鬼ヶ島の鬼たちは…」
「苦汁の決断じゃった、お前の母は唯一人の純粋の鬼で誰も仲間がいなかった。ワシは奇跡的に遺伝子が合い超久の寿命を得たが残せた子はお前だけだった。後の太郎や鬼たちは欠陥品で超常の能力は持って産まれたが寿命は非常に短いのだ。」
じゃあ桃兄ィは?
「…ふざけんな!いつまで繰り返す!本当に母は望んどるんか?」
ふふっと笑いマッドサイエンティストは言った。
「人間と鬼のハーフであるお母さん太郎よ!」
「貴様が最高傑作だ!」
(お母さん太郎よ、ハナちゃんと出口に走れ!コイツも俺ももうダメだ、最後に多くの兄弟を殺したこの島は鉄雉ドローン隊で破壊する)
ジジイ!
「辛く当たったが愛していた、お母さん太郎!生きて母を守れ!」
ババア!
「ふぁふぁ金何てどうでもいいのよ、要は価値観、アンタは強いからねぇ〜教育と縛る方法はいくつもなかったのさ、さ、行っとくれ」
桃太郎の怒号が飛ぶ!
「鉄雉自爆ドローン隊!出ませい!」
次々と鬼ヶ島研究所に突っ込むドローンは確実に城を破壊していた。
(桃兄ィわかってたのかな?)逃げながら理解が追いつかないお母さん太郎は多くの愛を失う事を知っていた。
「キュルル…」ハナちゃんが鳴く、俺を慰める様に。
ホバークラフトに乗るとAI赤猿が起動、鬼ヶ島が遠ざかる。
鬼は消えた。
母だけを残して。
