おばあちゃんちの台所・・時間が止まる
手をかけていた頃 不便だったけど、温かかった
祖父の家には、かまどがあった。
泊りに行くと、朝早くからおばあちゃんが台所に立っていた。
薪の匂いと、湯煙がかまどから上がっていた。
水道はなくて、山から引いた水を使っていた。
その水を飲むと、不思議と元気が出る気がした。
冬は掘りごたつ。 足を入れる時、少し怖い。
でも、中はぽかぽかだった。
布団をめくると炭の匂いと優しい火が見える。
私の家は、こたつと湯たんぽと石油ストーブ。
今よりずっと寒い時代だったはずなのに、不思議と「寒い」と思った記憶があまりない。
なぜだろう。
祖母の家には、いろんな物があった。
小さくなったセーターは、ほどいていた。
ほどいた毛糸を、水車みたいな機械に通して、くるくる回す。
すると、また綺麗な毛糸の束になる。
それを、もう一度編み直す。
布団もそうだった。
ぺちゃんこになった布団に、母が綿を足していた。
白い、カイコの繭みたいな布を広げて、 「そこ持ってて」 と言われる。
最後には、ちゃんと布団になる。
今思えば、母はどこで覚えたんだろう。
きっと、おばあちゃんから教わったんだろうね。
昔は、古くなったら終わりじゃなかった。
足したり、直したり、作り直したりしていた。
洗濯機も二層式だった。
脱水のローラーに布を挟んで、くるくる回す。
私は歯みがきのチューブも挟んでみた。
本当に最後まで出るのか試したかった。
でも、手で絞ったのとあまり変わらなかった気がする。
子供なりに、一生懸命実験していた。
おかしかったね。
豆腐を作る石うすみたいなものもあった。
豆を挽いて、しぼって、豆腐を作る。
食べさせてもらった豆腐は、味が濃くてクリーミーだった。
牛も飼っていた。
搾りたてのお乳を温めて飲ませてくれる。
あまりに、美味しすぎて上手く言葉にできない。
「何これ」 子供だった私は、本気でそう思った。
これが、本物なんだと思った。
いまでも、あれが牛乳…他のはミルクと思っている。
今は、スマホがあれば迷わず目的地に着ける。
便利になった。
でも昔は、道に迷った。
知らない道に入って、誰かに道を聞いて、途中で違う景色を見つけたりした。
迷うから、出会うものがあった。
今は、最短で答えに辿り着ける。
でも、最短だからこそ、途中にあったものを通り過ぎている気もする。
昔は、不便だった。 でも、人が手をかけていた。
手をかける時間の中に、ぬくもりがあった気がする。
そんな時間を過ごした、そこのあなた・・思い出をかたりませんか?

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