「にじいろのさかな」の続きを読んだ 先生を、私は忘れられない
高校生のとき、現国の先生が最初の授業で絵本を読んでくれた。
にじいろのさかな。
青い深い海に、虹色のうろこと銀にきらめくうろこを持つ魚が住んでいた。
世界一美しいのに、世界一孤独な魚。
自分の美しさを誇るあまり、仲間を寄せつけなかったから。
賢いタコのお婆さんに導かれ、きらきらのうろこを一枚ずつ仲間に渡し始めると、海じゅうがきらきらしてきた。
最後に一枚だけ残ったとき、にじうおは幸せだった。
原作は、そこで終わる。
でも先生は、その続きを読んだ。
この続きは、どこの本にも見つからない。
先生が創作したのか、本当に存在する話なのか、今でもわからない。
ただ私は、あの日、確かに教室でその話を聞いた。
やがて、雨が降らなくなった。
水が減り、海の生き物たちは生死をさまよい始めた。
そのとき、なまずが、にじうおに言った。
「その尻尾、おいしそうだね」
にじうおは答えた。
「いいよ、食べても」
次々と生き物たちがやってきた。
「その、〇〇、おいしそうだね」
そのたびに、にじうおは言った。
「いいよ、食べても」
やがて、にじうおは骨と顔だけになった。
最後に残った体に、生き物たちが集まった。
にじうおは言った。
「これだけしか、無くてごめんね」
「食べてもいいよ。でも、目だけは残しておいてね。みんながまた幸せに暮らせるようになったら、その姿が見たいから」
そうして、目だけを残して、にじうおは食べられた。
やがて雨が降り、水が戻り、生き物たちはもとの暮らしを取り戻した。
「あれ、にじうおはどこにいった?」
みんなが口々に言い出したとき、なまずが言った。
「僕は尾っぽを食べた。でも、悪くない。食べていいと言ったのは、にじうおだ」
他の生き物たちも言った。
「私も食べた。でも悪くない。食べていいと言ったんだから」
しばらく沈黙が続いた。
みんな、自分が悪いことをしたと感じていた。
涙がこぼれた。
「ごめんね」
そのとき、残されていた目が言った。
「よかった。みんな幸せになれたね」
そうして、目は天へと帰っていった。
高校生だった私は、
その話を、うまく理解できなかった。
ただ、
ずっと忘れなかった。
先生の授業は独特だった。
お菓子の商品名の由来を調べたり、
一行の感情だけを何時間も考えたり、
人間失格を半年かけて読み解いたりした。
「正解」ではなく、
「あなたはどう感じたか」を、
先生はずっと見ていた。
そして、詩を書いた。
ある日、先生はみんなの前で言った。
「私が欲しかった、望んでいた詩が見つかりました」
それが、私の詩だった。
「スコールが降ると、動物たちはどうするのか。彼らは雨の中に立ってます。いつか止むのだから・・・」
そんな書き出しだった。
自分では、他の人の詩の方がずっとすごいと思っていたから、驚いた。
後から聞いた話では、
先生はクラス全員の詩を一冊にまとめ、
自分が卒業した大学や関連大学に送ったらしい。
その間、家に帰らず、
ビジネスホテルに泊まりながら、
詩集を作っていたという。
漢字が書けなかった私は、
毎日補習を受けた。
先生のおかげで今、
人より漢字が読めるし、書ける。
私たちが卒業したあと、
先生は離婚した。
その後、
ずっと好きだった人と再婚し、
子どもにも恵まれたと聞いた。
40歳を過ぎたころ、
母がぽつりと言った。
「あんたが高校のとき、現国の先生から電話があったよ。大学で国文学を学ばせてあげてほしいって」
「でも、それを言うと、あんたが大学に行きたいって言い出すと思って、黙ってた」
そのとき初めて知った。
先生が、
そんなふうに思っていてくれたことを。
今思えば、
先生自身も、
自分を削って誰かに渡してしまう人だったのかもしれない。
最初の授業で先生が読んだのは、
「優しい魚」の話ではなかった。
自分の一部を渡して、
それでも最後まで、
誰かの幸せを見届けようとする存在の話だった。
そして私は、
あの教室で、
そんな人に出会っていた。
学生生活の中で、
こんな先生に出会えることは、
きっとほとんどない。
先生が渡してくれたものが、
今も私の中に生きている。
大切な人に出会えた。
それだけで、
あの時間は、
ほんとうによかったと思う。
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😊😊😊😊😊😊😊😊を最初に入れているので、よろしかったら見てください。

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