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美容クリニックの現実〜ラクそうだから転職した結果〜【第九話】

初めて本音を話せた日

私はようやく応募ボタンを押した。


たったそれだけのことなのに、ひどく疲れた。
何日も悩み続けていたのだから当然かもしれない。
応募が完了した画面を見ながら、私はしばらく放心していた。

数日後。

転職エージェントから電話がかかってきた。
優しそうな女性の声だった。
それだけで少し安心した。
今思えば不思議である。
顔も知らない相手なのに。

だが当時の私は、誰かに話を聞いてほしかったのだろう。

気づけば私は職場の話をしていた。
先輩のこと。
毎日辞めたいと思っていること。
それでも辞める決心がつかないこと。

堰をきったを切ったように話していた。


正直に言うと、私は誰にも詳しく話せていなかった。
夫にさえ。

職場でいじめられている。
そんな自分を認めたくなかったのだと思う。

だから、
「人間関係が合わない」
とか、
「仕事内容が思っていたのと違う」
とか、
それらしい理由を並べていた。

本当のことは言えなかった。

だからだろうか。
顔も知らない相手なのに、不思議なほど話せた。

あの頃の私は、誰かに話を聞いてほしかったのだと思う。 
仕事の休憩時間になると、私は公園へ向かった。
職場で転職の電話などできない。
ベンチに座って話し始める。
けれど落ち着かない。

立ち上がって歩く。
また座る。
そしてまた歩く。

今思えば、携帯片手に公園をうろうろしている私は、なかなか怪しかったに違いない。

もし職務質問されていたら、転職活動の悩みまで聞いてもらうところだった。

それでも私は何度も電話をした。
求人のこと。
面接のこと。 
不安なこと。

気づけば色々な話をしていた。
転職サイトについては今でも思う。

絶対に使った方がいい。

働きながら転職活動をするのは想像以上に大変だ。
求人を探し、応募し、面接の日程を調整する。
仕事をしながら一人でやるにはなかなか骨が折れる。働きながら転職活動をするのは想像以上に大変だ。

もちろん担当者には当たり外れがある。

私は三社ほど登録した。
親身になって話を聞いてくれる人もいれば、
「この人大丈夫だろうか」
と思う人もいた。

世の中、本当に色々な人がいる。
それでも私は転職エージェントに助けられた。

あの頃の私は、思っていた以上に疲れていたらしい。

どこの会社だったのか、もう思い出せない。担当者の名前も忘れてしまった。
それでも、あの時救われたことだけは覚えている。

本当にありがとうございました。

肝心のお名前は忘れてしまったのだけれど。


そんなこんなで、私は面接の日を迎えることになる。

保育園看護師。

当時の私にとっては未知の世界だった。
保育園に通ったこともない。
小児科経験もない。
保育士さんの知り合いもいない。

あるのは、

「今の職場を辞めたい」

という気持ちだけだった。

面接の日が近づくにつれ、不安はどんどん大きくなっていった。

そして面接当日。

私はそこで、想像もしなかった光景を目にすることになる。

【第10話へ続く】

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