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美容クリニックの現実〜ラクそうだから転職した結果〜【第十話】

思っていたのと違った面接

面接当日。 
私はとんでもなく緊張していた。

保育園看護師。
小児科経験はない。
保育園で働いた経験もない。 
保育士の知り合いだって一人もいない。

今思えば、なかなか勇気のある応募だった。いや、当時は勇気というより勢いだったのかもしれない。

それでも当時の私は必死だった。

とにかく今の職場を辞めたかったのである。

面接会場に着いても落ち着かない。
そわそわする。
履歴書を見直す。
また見直す。
たぶん何も変わらない。
それでも見直す。

人間、緊張すると意味のないことをするらしい。



案内された部屋には園長先生と主任保育士さんがいた。 
私は深呼吸をして椅子に座った。
これまでの経歴。
志望理由。
なぜ保育園看護師を希望したのか。

私は必死に話した。
良く見られようとした。
ちゃんとした人間に見られようとした。
今思えば、少し空回りしていた気もする。

話が終わると、園長先生と主任保育士さんが顔を見合わせた。

私は身構えた。

何かまずいことを言ったのだろうか。

小児科経験がないことだろうか。
保育園経験がないことだろうか。
頭の中で反省会が始まる。


すると園長先生が言った。


「いいですね」


そして続けた。


「では、いつ頃から入職できそうですか?」


私は一瞬意味が分からなかった。 
聞き間違いかと思った。
面接というものは、もっと色々聞かれるものではないのか。
そんな簡単に決めていいのだろうか。
私が悪いやつだったらどうするんだ。

もちろん口には出さなかった。
大人なので。

だが本音を言うと、一番驚いていたのは私だった。

こうして私は次の職場を見つけた。


面接が終わり、外に出る。

帰り道。

私は久しぶりに空を見上げた。
少しだけ肩の力が抜けた気がした。


だが数分後、その余裕は消えた
 
退職を伝えなければならないことを思い出したからである。

「うわぁ……言わなきゃいけないのか」

次の職場を探すより、退職を伝える方が難しい。
そんな馬鹿な話があるだろうか。

だが当時の私には、わりと本気でそう思えた。

【第11話へ続く】

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