美容クリニックの現実〜ラクそうだから転職した結果〜【第六話】
朝が来なければいいのに ― 私が甘えているだけだと思っていた
辞めようか。
でも辞めちゃいけないんじゃないか。
その二つの言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。
夫に話を聞いてもらった。
少し気持ちは楽になった。
でも、答えは出なかった。
翌日も私は出勤した。
やっと入れた美容クリニックだった。
しかも誰もが知る大手だった。
都会のきれいなクリニック。
給料も悪くない。
定時で帰れる日だってある。
田舎の病院で、120円の菓子パンをかじりながら働いていた頃から。
ずっと憧れていた世界だった。
たしかに職場はつらかった。
先輩は怖かった。
毎日緊張していた。
でも、よく考えればそれだけだ。 殴られるわけじゃない。
給料を払ってもらえないわけでもない。
「ちょっと嫌がらせされているだけ」
私はそう自分に言い聞かせた。
新人時代だって大変だった。
理不尽なこともあった。
忙しい病棟で必死に働いた。
あの時だって乗り越えられたじゃないか。
今回だってきっと大丈夫。
私が甘えているだけなんだ。
そうやって何度も自分を叱咤した。
仲の良い友人には、
美容クリニックへ転職したことを話していた。
当時の私は浮かれていた。
都会の美容クリニック。
大手企業。
給料アップ。
憧れていた働き方。
「美容クリニック看護師でYouTuberデビューしちゃおっかな」
そんなことまで言っていた。
今思うと、少し恥ずかしくなる。
美容クリニックに転職しただけで、何か特別な人間になれた気がしていた。
でも、その時は本気だった
だから余計につらかった。
入職して間もない。
まだ誰にも本当のことを話せなかった。
「実は職場でうまくいってないんだ」
そう言うのが恥ずかしかった。
もう少し頑張れば何とかなる。
我慢すれば変わるかもしれない。
そう思い続けていた。
でも、夜になると駄目だった。
ベッドに入ると、翌日のことばかり考えてしまう。
先輩の顔が浮かぶ。
職場の空気を思い出す。
胸が重くなる。
毎晩、同じことを考えていた。
明日の朝が来なければいいのに。
目覚ましが鳴らなければいいのに。
もう一日だけ時間が止まればいいのに。
どれだけ前向きに考えようとしても、その気持ちだけは消えてくれなかった。
それでも私は、翌朝になると制服に着替えて職場へ向かった。
まだ、自分は頑張れると思っていた。
いや、そう思いたかったのかもしれない。
【第7話へ続く】
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