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美容クリニックの現実〜ラクそうだから転職した結果〜【第四話】

クレームを入れられたのは先輩だった。


ある日、お客さんからクレームが入った。

私のプリセプターに対してだった。
「脱毛の打ち方が雑だった」
「前の担当者の方が丁寧だった」
という内容だった。


そして、その前の担当者は私だった。


少しだけ説明しておく。

これは美容クリニックでは珍しい話ではない。
新人は照射漏れが怖い。
だから慎重になる。
ゆっくり機械を動かし、同じ場所を何度も確認する。
一方、ベテランは違う。
スピードも速いし手際もいい。
それは経験によるものだ。

ただ、お客さんからすると話は別である。

丁寧に時間をかけてもらった方が満足度は高い。技術と満足度は、必ずしも一致しない。

だからこのクレーム自体は、誰が悪いという話ではなかった。


問題はその後だった。

プリセプターの態度は、目に見えて変わった。

それまで個室で行われていた指導は、みんなの前で行われるようになった。

しかも指導というより確認作業だった。
「今なんて言った?」
「もう一回言って」
「もう一回」
一度や二度ではない。

五回、十回。

まるで子どもに言い聞かせるようだった。

私は社会人だった。
看護師免許も持っている。
アラサーの、一人の大人だった。
それなのに。
毎日、自分が少しずつ小さくなっていく気がした。


ある日、事務所で仕事をしていた時だった。


「あいつ、何言ってもいいからさー」


笑いながら話す声が聞こえた。
私のことだった。
隠れて言うならまだ分かる。
でもその人は、私がそこにいることを知っていた。
事務所には他のスタッフもいた。
誰も何も言わなかった。

私は初めて知った。
人は怒鳴られなくても傷つく。
笑いながら見下される方が、ずっと痛いことを。


それだけでは終わらなかった。


業務連絡は常にグループチャットで送られてきた。
休日も夜も関係ない。
数時間以内に既読を付けて返信するのが当たり前だった。

家に帰っても落ち着かない。

お風呂に入っていても。
ご飯を食べていても。
携帯が鳴るたびに心臓が跳ねた。
職場にも居場所がない。
家でも休めない。

そして、ある日。

私は自分の異変に気づいた。

その日の記憶が、思い出せなかった。

【第5話へ続く】


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