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株式市場とは何か──お金の流れから見る現代資本主義

株式投資という言葉には、どこか近寄りがたい響きがある。
経済に詳しい人だけが参加する世界であり、値動きを追いかけて利益を取り合う場だと感じている人も少なくないと思う。
だが、なぜニュースで株価が大きく扱われ、企業も政府も市場の動きを気にするのかを考えると、そこには一部の人のマネーゲームでは片づけにくい事情がある。
株式市場は、現代のお金がどう増え、どこへ流れ、何に期待して動いているかを映す場所でもあるからである。
株式投資を勧める話ではなく、投資家がなぜ株式市場に向かうのかを、お金の仕組みから見ていきたい。


1 株式市場の前に、まずお金を見る

多くの人は、お金を最初からそこにあるものとして受け取っている。
財布に入っている現金や、口座に表示された残高を見れば、そう感じるのも自然である。
しかし現代のお金は、金や銀のように、それ自体の量が先に決まっているものではない。
かなりの部分が、社会の信用を土台にして増えていく。

この点を押さえると、株式市場の見え方が変わる。
株式市場は、もともとあるお金が人から人へ移るだけの場所ではない。
信用によって増えていくお金が、どこへ向かうかを示す大きな場所でもある。
株価が重視される背景には、この流れがある。


2 信用経済では、お金は未来を前借りして増えていく

現代経済は、しばしば信用経済と呼ばれる。
それは、お金の多くが、将来返してもらえるという見込みを前提に作られているからである。
過去に稼いだお金だけで社会が回っているわけではなく、未来の返済能力を見込みながら、現在の取引が広がっている。

分かりやすいのは住宅ローンである。
ある人が銀行から三千万円を借りて家を買うとする。
そのとき銀行は、どこかに積んであった三千万円の札束をそのまま渡しているわけではない。
実際には、借り手の口座に三千万円を記帳し、そのお金が住宅会社へ支払われる。
住宅会社はそのお金を受け取り、そこから仕入れ代金を払い、従業員に給与を払い、別の会社へ代金を渡していく。
こうして三千万円は社会の中を動き出す。

ここで重要なのは、最初の時点では、その三千万円は銀行の融資と同時に生まれているということである。
借り手には返済義務が生まれ、銀行には貸した権利が生まれ、その一方で社会の中のお金も増える。
これが信用創造である。
現代のお金は、未来に返してもらえるという信用を前提に、現在へ前倒しで持ち込まれている。
信用経済とは、社会全体がこの仕組みの上に立っている状態を指す。


3 増えたお金は、必ず行き先を探す

信用創造でお金が増えると、そのお金は社会の中を巡る。
企業の売上になり、個人の給与になり、取引先の収入になる。
そして持っている側から見ると、そのお金をどこに置くかという問題が生まれる。
増えたお金には、次の居場所が必要になる。

その行き先はいくつかある。
預金という形で銀行に置いておくこともできる。
国債のような比較的安定した資産を買うこともできる。
不動産へ向かうこともある。
そして株式市場もまた、有力な行き先の一つになる。

ここで、行き先ごとの違いを簡単に見ておきたい。
預金は扱いやすく、元本が大きく揺れにくい。
ただし、増える力は強くない。
国債は比較的安定しやすいが、大きな成長を取り込む場所ではない。
不動産は現物資産としての強みがあるが、売りたい時にすぐ売れるとは限らず、大きなお金を機動的に動かすには向き不向きがある。
株式は価格が大きく動く。
その代わり、売買しやすく、さらに企業の成長も取り込みやすい。
投資家はこうした違いを見ながら、お金の置き場所を決めていく。


4 株式市場は、なぜ大きなお金を集めやすいのか

株式市場が資金を集めやすい理由の一つは、制度が整っていることである。
上場企業には情報開示の義務があり、定期的に決算を公表しなければならない。
会計ルールもあり、取引所には上場基準があり、売買の仕組みも整備されている。
証券会社、清算機関、監督当局など、多くの仕組みがその周囲を支えている。
もちろん不正や失敗が消えるわけではない。
それでも、何のルールも見えない場所に比べれば、はるかに参加しやすい。

もう一つは、流動性が高いことである。
流動性が高いとは、売りたい時に売りやすく、買いたい時に買いやすいという意味である。
大きな市場には参加者が多く、日々大量の売買が行われている。
そのため価格がつきやすく、現金にも戻しやすい。
大きなお金を運用する側から見ると、この条件は非常に重要である。
どれほど魅力的に見える資産でも、必要な時に動かせなければ、安心して置きにくいからである。

ここでいう信頼とは、株価がいつも上がるという意味ではない。
急落もあれば、過熱もある。
それでも、参加者が多く、ルールが見え、出入りしやすい。
この意味で、株式市場は大きなお金の受け皿になりやすい。


5 株式は、お金の置き場であると同時に、成長を取り込む場所でもある

株式市場の強さは、売買しやすさだけではない。
株式には、企業の利益成長を取り込めるという特徴がある。
ここが預金や国債との大きな違いである。

株を持つということは、その企業の持ち分の一部を持つということである。
企業が新しい商品を売り、事業を広げ、利益を増やしていけば、その成果は配当や株価に反映されやすい。
個別企業には当然、失敗もある。
だが市場全体で見れば、経済が拡大し、生産性が上がり、企業全体の利益が積み上がる時、株式市場もそれを取り込みやすい。

ここで順序をはっきりさせておきたい。
株式市場が長期で強い理由の土台は、企業の利益成長を取り込めることにある。
その上に、信用創造で増えたお金が運用先として流れ込みやすいという性質が重なる。
企業の成長という土台があり、そこに資金流入という上乗せが加わる。
この二つが重なるから、株式市場は長期で上がりやすいと考えられている。


6 投資家が株式市場に向かう理由

ここまでをつなげると、投資家が株式市場に向かう理由はかなり見えやすくなる。
現代の資本主義では、信用創造によってお金が増える。
増えたお金は、どこかに置かれなければならない。
そのとき投資家は、制度が見え、売買しやすく、長期では成長を取り込みやすい場所を探す。
株式市場は、その条件を比較的よく満たしている。

この意味で、株式投資は単なる値上がり狙いではない。
信用経済の中で増えたお金が、制度と成長の両方を備えた市場へ向かう流れの一部である。
投資家が株式市場を見る時、見ているのは値動きだけではない。
企業がどれだけ成長できるか。
その利益を市場がどう評価するか。
そして余ったお金がどこへ集まりやすいか。
そうしたものをまとめて見ている。


7 なぜ社会は株価を重視するのか

ここまで来ると、なぜ社会がこれほど株価を重視するのかも見えてくる。
株価は、単に投資家の気分を示す数字ではない。
現代のお金がどこに向かっているかを示し、企業の利益への期待を映し、将来の景気に対する市場の見方を表しやすい数字でもある。
だからニュースでも大きく扱われる。
企業も政府も無視しにくい。

もちろん、株価だけで社会のすべてを語ることはできない。
株価が上がっても、賃金や生活実感がついてこないことはある。
市場の期待が先に走りすぎることもある。
それでも株価が重視され続けるのは、そこに現代資本主義のお金の流れと期待が集中的に表れやすいからである。


結び

株式市場を見るとき、多くの人は値上がりと値下がりだけに目を向ける。
だがその背後には、もっと大きな構造がある。
現代のお金は信用によって増える。
増えたお金は行き先を探す。
その有力な受け皿として、制度と流動性を備えた株式市場があり、さらにそこには企業と経済の成長が織り込まれていく。
投資家が株式市場に向かう理由は、この流れの中にある。

株式投資を理解するとは、銘柄選びの技術を知ることだけではない。
なぜ社会がこれほど株価を気にするのかを理解することであり、現代の資本主義がどのようにお金を増やし、どこに期待を置いているのかを知ることでもある。
その意味で株式市場は、一部の人のマネーゲームというより、信用経済の行き先を映している場所として見た方が、実態に近い。

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