神の子とダンジョン・第3話 − 176SPL
ダンジョン奥の公園跡の池。
その近くに、三人で何日もかけて用意したヌタ場に、イノシシがいた。
気持ち良さそうに、泥遊びをしている。
なにせ、アイツらのために作った、泥浴び場所だからね。
ジャック様が精霊魔法を使える日なら、絶好の獲物だったろうな…
驚かせたり、怒らせると面倒だから、
今日は引き返すのかと思ったら ――
父上は身を隠そうともせず、
「ジャック様、腕がなりますな。」などと言い出した。
最初は冗談かと思ったけれど、
「ああ、男なら当然だ。」と、いつもは慎重すぎるくらいのジャック様が応える。
僕、オダネル=ニケア=トール・二世は、思わず口を挟んだ。
「父上。
今朝、黒フードを取り逃がしたことで、冷静さを欠いているのではありませんか。
それに、ジャック様も先程、今日は精霊が薄くて魔法は使いにくいから、実力勝負の狩りになると、おっしゃいましたよね!」
「忘れた。 何のことだ。」父は目を血走らせた顔で、ボソリと言った。
「結局、ハンターってのは、 『ヤル』一択だよね。」……ジャック様まで、漢くさい台詞をキメている。
あまりに無謀だから、僕はもう一度言った。
「確かに、母上の物言いは申し訳ありませんでしたが――」
その先は、言わせてもらえなかった。
「二世、オマエは帰れ。」
「ジュニア君は、見物してな。」
そう二人は同時に言って、ヌタ場へと近づいていく。
気配を消そうともしない。
……アワワ。
いけない、止めなきゃと思ったけれど、完全に手遅れだった。
ジャック様が、何故か戦斧を振りかぶる。
「ちょ、ちょっと! そんな武器、いつ買ったの!」
しかも、あっけなく斧を外しイノシシを打ち漏らしたジャック様に向けて、怒り狂ってヌタ場から飛び出してきてるんですけど。
そのイノシシが。
息づかいが荒く、みるみる内に体中から湯気が立ち上がってくる。
危険。
非常に危険DEATH!
「度胸だけは認めましょうね、っと♬」父がジャック様を制して、イノシシの前に立ち、大剣を振りかぶる。
……いや。
だから父上も普段は片手剣DEATHよね!?
突進してくるイノシシに、
「どあおっせいっ!」と叫び、父が大剣を振り下ろす――
が……
これも、空振り。(嗚呼)
ダメだ。
ダメだダメダメ。
急いで戦弓の準備をしようと、僕は背嚢から弓を取り出したけれど――
手が震えて、弓が引ききれない。
いつもなら、僕でも引ける弓なのに。
父上の大剣の返しの一撃を牙で受けたイノシシの突進が勢いを増した。
父上が大きな傷を負う姿、それがリアルに脳裏をよぎった。
僕が覚悟した、その瞬間。
「だぁ〜〜りゃあ〜〜っ!!」奇声とともに繰り出された、ジャック様の横殴りの一撃がヒット!
イノシシと父上が、まとめて吹き飛んだ。
……え
味方ごと……
一度は横倒しになったイノシシだったが、すぐに立ち上がり、さっきより大きな唸り声を上げて威嚇する。
「ヌルい、ヌル過ぎる!
そんなんで、ワシが倒せるか!」
……父上、
打ち所なんですか、何を言ってるんですか?
休む間もなく、ジャック様が上段から戦斧を打ち下ろす――
だけど、ギリギリのタイミングで、イノシシの疾さが斧の振り下ろしに優った。
えっ!?
後ろから、体当たり気味に父上の大剣が体ごとヒット!
ああ、勢いのついたイノシシが倒れ込みながら、ジャック様を吹き飛ばしたんだけど。
「まさか、
レドゥビア王族にでもなる気でしたかい。」
父上が、言ってはいけないことを口にする。
「英雄はさぁ、色を好むんだよっ!」
……ジャック様も、英雄気取りになっている。
色を好むって、ジャック様、いつもラビさんにバカにされてますよね?
ジャック様の一撃が、まさかのマグレ当たり♪
怒りを力に変えたのですね、わかりますジャック様っ。
嗚呼、お痛わしや。
しかし、その痛みの力からか、
どぅん、と地面を揺らして、イノシシはついに倒れた。
メチャクチャだ。
だけど、アツい。
熱すぎだよ2人とも!!
こんなぶつかり合い、二度とは見れないんじゃないかって、僕も胸が昂ぶってきた。
冷静に見ると、ジャック様、父上、そしてイノシシ。
みんなダメージを受けているけれど、
闘気は衰えていない、眩しい。
ジャック様が、掌を上に向けたかと思うと、クイクイとイノシシを手招きして、
「来いよ。」って、笑っている。
……あっ。
父上、なんで上半身裸になっているんですか?
バカですか?
「グゥワハハ! 小僧とイノシシよ。
ワシのニケア天然流風雪拳、みせてやるわ。」
必殺の奥義かと思ったけれど、正拳突き。
っていうか、ただのグーパンチでしたよね。
父上とダブルダウンしたイノシシの背後へ回ったジャック様が、ここでまさかの、狐の尻尾の筋を編んだ特製の極細糸でチョーク攻撃!
手段を選ばないっていうか、
選ばな過ぎ!
反則。
反則攻撃ですよね?
動きの止まったイノシシを、父上が「ニケア天然流風雪百裂拳」で仕留めた。
……悪魔みたいに、楽しそうな顔でした。
父上は、天国に行けないかもしれません。
……いや、でも……。
普通に剣で心臓狙えましたよね、父上。
* * *
「いやぁ。
ジャック様は精霊魔法なんか使わなくとも、あれくらいの実力はあると、このトール、分かっておりました。
二人で野犬の群れに囲まれた日のこと、思い出しますな。」
父上が、どこか懐かしそうな顔で、イノシシを担ぎ上げながら言う。
「いやいや、
トールこそ、魂の入った拳だった。
あれこそが本当の戦いだと思ったよ。
今日の狩りは、間違いなく伝説になるな。」
頭から流れ出す血を気にすることもなく、ジャック様が笑った。
歯にまで血糊がついていて、僕は正直、怖くなりました。
イノシシは滅多に狩りが成功しない上に、畑を荒らす生き物なので、役所から報奨金が出るし、牙も高く売れる。
たしかに、伝説にはなったのだと思う。
この日、
神の子と噂されているジャック様は ――
『血まみれジャック』という、新しい称号を獲得なされました。
続きます
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【お知らせ】
今回は、私的に全力プロレス🔥
UWFではなく、新日本プロレスリスペクト
(ファンの方々、不愉快だったらゴメンなさい🙇💦)
次話では、レドゥビア小町こと、ラビのSPLイラスト掲載予定。
コメントがさらに物語を貴方好みにするかもしれません🦆✨️
今回のタイトルカットは、フレキシブルフランクことChatGPTの作画
