神の子とダンジョン ・ 第29話 − 217
ジャック様も僕と同じように、旧市街の近くに隠されている遺跡を探し出したい気持ちが強いはずだと、僕は思っている。
けれど、その気持ちを表に出さないように、僕はいつもの朝と同じように今日の予定を皆に話す。
「父上は、今日も道場生の指導依頼があります。」
「このまま道場の仕事が決まるといいよね。」って、ジャック様が嬉しそうに父上に話しかける。
(確かにそうなれば、暮らしは安定する。けれど、ダンジョンには父上抜きで行かなければならないですよね……?)
「僕も、試験が近いから今日は放課後は図書科で勉強の予定です。」
(本当は、試験より冒険にばかり気持ちが行きそうなんですけどっ!)
「二世君、結果次第では飛び級もあるんだよねっ?」ウンウン♬
頑張ってとジャック様が言ってくれる。
(どうしてそんなに落ち着いているんですか!
最近は大きな獲物も取れていないのに……僕たち、まだ余裕なんて――)
「オイラは今日もダンジョンハンターの手伝いだったよね?」と、ジャック様。
“ 助っ人 ” と呼ばれる狩りの手伝いは、ソロの狩りより安全だけど、稼ぎは僅かだ。
朝食を済ませると、僕は、ままならない気持ちを抱えたまま学校に向かった。
助っ人の仕事はオイラにとって、楽なのかというと、そうでもない。
ダンジョンと呼ばれる旧市街で一番危険なのは野犬だ。
1〜2匹で行動している奴らもいるが、6匹以上の群れの方が多い。
だから、少人数で狩りをする場合は知り合いに頼んだり、組合に金を払い応援を頼む。
今は鹿猟の時期だが、猟に出たって必ず鹿を仕留められるかは分からない。
鹿を探しながら、小さな岩トカゲや、それよりずっと大きなカナトコを穫る。
助っ人は一緒にそれを手伝いながら野犬が現れないか眼くばりするのが、仕事だ。
6匹。
いきなり、野犬が出てきた。
今日の雇い主は弓の名人と腕の良い槍使いがいたので、撃退することが出来た。
あと少し野犬の数が多ければ、宝具 “ 魔弾 ” を使わなければならなかったし、精霊が薄いと、魔法が使いにくくなるから油断はできない。
まあ、鹿には出会えなかったけれど山葡萄が多く採れた。
少ない稼ぎだが、ないよりはマシだろう。
助っ人仕事後に、他のハンター達がいる辺りの水路を見て回ったが、魚の姿は見当たらなかった。
* * *
日没までには時間があったから、川下の葡萄畑に行って収穫を手伝った。
思ったとおり、山葡萄と葡萄畑の紅葉はタイミングも色合いも少し違う。
旧市街奥の石塔から見えた斜面の色づき方は山葡萄のそれではない気がした。
農園からの帰り道、心が妙にワクワクしてくる。
そして、そんな自分をオイラ自身が不思議に思う。
旧市街の北に誰も知らない遺跡があったとして、それは多分、住宅や庶民の宿舎跡だろう。
宝の山があるとは思えない。
長い年月の間に土に埋もれていたりしたら、獲物になるカナクイドリや岩トカゲは棲み着かない。
「でも、あるなら行ってみてえっ!!」って気持ちが抑えきれない。
想像も出来ない“何か”があるかもしれない。
だってオイラは、こういう冒険がしたかったんだと思う。
気がつくと、日没がせまっていた。
続きます

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