神の子とダンジョン・第4話 − 177
今日は記事の冒頭にイラスト配置です☆
お楽しみ下さい。
( 優音先生描き下ろし第一段♪ )

夜明け前に井戸を掘り抜いた。
城下の皆が眠っている時間帯のほうが、精霊は活発だからだ。
召喚者である勇者ですら、そういうことを気にしている。
初めてあの二人に会った時のことを、ふと思い出す。
「その前に――」
アルス姫が真剣な表情で、勇者に問いかけた。
「貴方は、生まれた世界に帰りたいのか。
それを、はっきり聞かせて頂戴。」
勇者は精霊に感謝しながら、この土地で生きる人々を大切に思っている。
そして、レドゥビアが気に入っている。
……確か、そんなふうに答えていた。
「ならば、私も精霊王盟約と私の心が決めたとおりに、貴方に従いましょう。」
レドゥビアの“神の子”に向けて、そう告げたアルス姫も、それを受け止めた勇者もカッコ良かった。
まあ、そうだよね。
まさか、その場で抱きしめ合うとは思わなかったけどサ。
オイラの眼の前でやることないだろ、普通。
* * *
朝日が顔を出しはじめた頃だったかな。
「あら、夜明け前から仕事だったの?」
コーエンさんの店の二階の窓から、ラビが声をかけてきた。
「なんか、目が覚めちゃってね。」
精霊魔法で生け簀の井戸を一気掘り ――
なんて答えられるわけもなく、適当に返した。
ラビは続けて、昨日はトールさんがイノシシを卸してくれたことや、城下では『血まみれジャック』の噂でもちきりだったことを話してくれた。
「なんだか、らしくないんじゃない?」と、からかうみたいに言った。
いつものように工房に入ると、トールの娘が、もう先に来ていた。
「見て見て!」可愛い仕草で呼ばれて、何だろうと思ったら――
右手に“おタマ”を握り、
キリッと半身に構えて、左手でクイクイと手招きしたあと、決め顔でひと言。
「来なっ!」
……なるほど。
ラビが言っていた噂の発信源は、ジュニア君だな。
でも、あんまりにも様になっていたから、オイラは何も言わず、トールの娘の頭を、いっぱい撫でてあげた。
確かに、昨日はらしくなかった。
そんなこたぁ、自分でも分かってる。
でも、あの格好で話しかけられたのは、正直、ちょっとドキドキした。
だってさ……。
「んっ、ジャック様ドキドキ?」一生懸命、武具を磨き上げながら、娘ちゃんが無邪気に聞いてきた。
誤魔化すのに、だいぶ苦労した。
ちなみに、フランソワーズ=ニケア=トールという名前なんだが、フラウだと馴れ馴れし過ぎるし、フランソワちゃんって呼ぶより楽だから、オイラは、ずっと“娘ちゃん”って呼んでいる。
しばらくの間、
「ドキドキ?」
「ドキドキ?」
と、やたらうるさかったけど、トールの家まで肩車してあげたら、すっかり忘れたみたいだった。
朝飯をいただきながら、オイラはジュニア君に、あまり目立ちたくないんだって話をした。
すると奥様が、さらっと言う。
「あら?
神の子って呼ばれるより、
血まみれジャック様の方が、
ずっと凛々しいと思いましたよ。」
……なるほど。
ラビに話した張本人は、奥様だったわけだ。
まあ、いい。
確かに、神の子よりは――
その呼び名の方が、イイ気はする。
ジュニア君に、イノシシの卸しや役所からの報奨金、牙や毛皮の上がりをまとめて聞いたら、大カナトコ十匹分はあった。
「当座の生活費に回しますので、 借金の額は変わりません。」と、ジュニア君。
……そうだよね。
五人分を稼ぐのは、簡単じゃない。
ああ、雨、降らないかな。
鯉が一番、楽に稼げる。
続きます
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優音先生、今回もありがとうごさいました🙇💦
