神の子とダンジョン ・ 第17話 − 198
トールは旧市街地に入る前、必ず祈りを捧げる。
オイラは特に深く考えもせず、聞いた。
まあ、聞いちまった。
「トールは精霊王を信じているんだね。」
トールは祈りのために胸の前で結んだ両手を、そのままにして目を閉じたまま答えてくれた。
以前は違ったかもしれないけれど、オイラと二人きりで野犬の群れに囲まれたとき、魔弾から撃たれた弾が、精霊のキラキラした光の粉みたいな線を描いた。
あれを見ただけで、トールには十分だったらしい。
精霊はいる。
医者達は助からないと言ったが、ジャック様は死ななかった。
精霊王様の子だから、ジャック様は生きている。
私は、そう思っています。
そこまで言い終えてから、トールは目を開いた。
「テデクス様の姿を見る前から、信じていました。
だから、いつも祈っていました。」
何て言っていいか困ってしまい、オイラはダンジョンの奥へと歩いた。
そういえば、トールと二人きりで狩りに出たのは久しぶりだ。
「ジャック様。
精霊王様が、試練を与えて下さいました。」
ずっと先のヌタ場に、大きな影が動いていた。
「周囲に他のハンターがいるけれど。」
オイラの言葉に、トールは笑顔で応えた。
「だから、試練なんでさァ。」
集中し出すと、トールは敬語が使えなくなる。
そういうところ、嫌いじゃない。
「最初はオイラから行く。」
戦斧・与三郎を構え、ゆっくりと距離を詰める。
あれだけの大物なら、逃げたりはしない。
遠目の間合いから、戦斧を振り下ろす。
予想どおり、避けられた。
イノシシは体がデカくても、素早しっこい。
バックステップして、下がる。
待ってましたと、トールが前に出る。
無造作に突進してくるイノシシに大剣で突きを入れ、それを避けた瞬間、前足を払うように薙ぎ払った。
(なるほど。)
イノシシがトールの方を向き終わる前に、オイラは戦斧を振り下ろす。
今度はかすった。
左前脚。
イノシシは再び突進。
だが、左にステップすると、ついてこられない。
背中側から水平に斧を打ち込む。
今度は左耳の後ろ、ヤツラの急所だ。
イノシシは立ち上がり、こちらを向くが、少しよろけている。
トールが、わざとゆっくりしたモーションで大剣を振り下ろす。
イノシシが牙で受けた、その瞬間。
オイラは、また左脚に斧。
今日はトールが冷静だ。
危険を冒さず、じっとチャンスを待っている。
周囲に他のハンター達が集まり、輪になっているが、気にもしていない。
粘り強く前脚に攻撃を集め続け、急所の耳の後ろも、何度か捉えた。
そして、イノシシが、ついに動きを止めた。
あとは、冷静に仕留めるだけ――そう思った時、とうとう、“ ソレ ” は起こってしまった。
野太い絶叫をトールが上げる。
地鳴りのように、興奮したハンター達の声援が湧き上がる。
「オマエ達、行くぞーっ!」
意味の分からない叫び声が飛び交う。
ハンター達のボルテージは最高潮だ。
っていうか、いつの間に盛り上がってんの!?
ああ、こうなってしまったら仕方ない。
熱狂に理由なんかないんだ。
ハンターは、いつも叫んだり熱くなりたい男達なのかもしれない。
トールがイノシシを持ち上げようとする。
オイラは無我夢中で、近くの住宅跡の壁によじ登る。
イノシシの頭が石畳に叩きつけられる、そのタイミングに合わせて、壁からジャンプ。
ここだけは、オイラの見せ場だ。
全力で高く飛び、空中で縦に半回転。
イノシシの後ろ足に、抱きつくようにホールドする。
ゴウン。
完璧なタイミングだった。
観客のハンターの一人が叫ぶ。
「ツープラトンの垂直ブレンバスター!!」
いや、違う。
「トール・ザ・スペシャルだ!」
逆立ち状態の姿勢から、華麗に石畳にオイラは降り立ち、静まり返った旧市街の中心で、トールの右手を高く掲げてみせる。
その日、旧市街が、確かに揺れた。
嘘じゃない。
翌日、オイラは、ブルクラッシャーズの「小さい方」と呼ばれるようになっていた。
フラウからは、ジャンプしてからの合体とタイミングの合わせ方を何度となく聞かれたが、
「もう少し、お姉さんになってから。」
と、誤魔化した。
続きます
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タイトルカットは、今回もフレキシブルフランクことChatGPTの作画
優音先生の柾作品紹介
PC問題解決しますように(−人−)
